バリュー株・割安株の探し方は?分析方法と分析に役立つツールも

※ このページには広告・PRが含まれています

株式投資のスタイルに、バリュー株(割安株)投資とグロース株(成長株)投資があります。

各国の中央銀行が、新型コロナの感染拡大を受けて資金を市場に供給し続けた結果、米国ではナスダック指数やSP500 、ダウ平均などの指数が史上最高値を更新してきました。なかでも、グロース銘柄が中心のナスダック指数が大きく上昇しました。

2021年3月現在、足元では、新型コロナのワクチン接種が進むなか、コロナ収束後を見据え国債金利が上昇。それが引き金となり、資金がグロース株からバリュー株に流れはじめています。

そこで今回は、バリュー株・割安株の探し方や分析方法について解説します。

目次

  1. バリュー株とは
    1-1.PER(株価収益率)
    1-2.PBR(株価純資産倍率)
    1-3.配当利回り
  2. バリュー株検索に役立つおすすめツール
  3. バリュー株選びのその他の方法
    3-1.Qレシオ
    3-2.EV/EBITDA倍率
    3-3.企業価値評価法
  4. まとめ

1 バリュー株とは

バリュー株とは、企業の価値に比べ、株価が割安な銘柄のことです。バリュー株の指標としては、主にPER(株価収益率)やPBR(価純資産倍率)、配当利回りの3つが使われています。まず、これら3指標を説明した後に、バリュー株を探し出す方法として、Qレシオ、EV/EBITDA倍率、企業価値評価法について説明します。

1-1 PER(株価収益率)

PERはPrice Earnings Ratioの略で、株価を一株当たりの純利益(EPS)で割って求めます。同業他社や株式指数と比較して低ければ割安とされます。予想EPSを用いて求められたPERを予想PERといいます。

たとえば、A社の株価が2,000円、予想EPSが150円、B社の株価が4,000円、予想EPSが350円の場合、PERはA社が2,000円÷150円=13.33倍、B社が4,000円÷350円=11.42倍となります。この場合、B社のPERがA社より低いため割安といえます。

1-2 PBR(株価純資産倍率)

PBRとは、Price Book Ratioの略です。株価を一株当たりの純資産価格で除して求めます。1倍が株価と純資産が等しい状態をあらわし、1倍未満の場合は株価が純資産価値を下回っている状態をあらわしています。つまり、1倍未満は企業の解散価値を下回っている状態のため、割安とされます。

しかし、PBRが1倍を下回る銘柄は多々存在します。これは、一株当たり純資産が帳簿上の数値を元に算出されることから、現実的価格ではない可能性があるためです。PBRが1倍を下回っていても、純資産の中身をチェックするなどして注意を払う必要があります。

1-3 配当利回り

配当利回りは配当金(直近1年間)を株価で割った値です。この数値も同業他社の数値や株式指数と比較することで割高、割安を判断します。配当金は企業の業績によって変化するため、業績が悪化してしまうと配当金が減額されます。

高配当銘柄は、配当金が減額されると株価が下落する傾向があります。そのため、配当利回りが高い企業よりも、企業業績に不安がなく配当を維持できる企業に投資することが重要です。

ちなみに配当利回りが高いことで有名なJT(日本たばこ産業)は、2021年2月に上場来初の減配を発表しました。この報道が嫌気され、株価が9%強下落しました。

2 バリュー株検索に役立つツール

バリュー株を検索するには、証券会社や情報会社が提供している無料の株式検索ツールを使うと便利です。総合投資情報サイトのトレーダーズWEBの銘柄スクリ―ニング機能は誰でも無料で使うことができ、上記で紹介したPERやPBR、配当利回りなどの他にも財務データやチャートから銘柄を絞ることができます。

また、証券各社の銘柄検索機能を使えば、より深い分析をすることができたり、検索条件を保存したりできます。検索機能は口座を開設することで使えるようになるので、複数の証券会社に口座を開設し、試してみるのも良いでしょう。

なお、企業価値分析については、GMOクリック証券の財務分析ツールを使うと簡単に検索することができます。

3 バリュー株選びのその他の方法

代表的な指数や銘柄の探し方について紹介してきましたが、その他にもいくつか方法があるので紹介します。

3-1 Qレシオ

Qレシオ(キューレシオ)とは、1980年代後半に、バブル時代の株価評価のために用いられた指数です。企業の保有している土地、建物、有価証券などの資産を時価評価し、発行済株式数で割った値と株価を比較する方法で、「実質株価純資産倍率」とも呼ばれています。

しかしながら、Qレシオは上場株式の評価は容易である一方、土地や建物などの評価があいまいとなる傾向があるため、バブル期以降は使われなくなりました。

現在、ソフトバンクGが投資先の時価総額合計額から負債を差し引いた金額を発行済み株数で除した値をNAV(Net Asset Value)として、公表しています。NAVの価値が市場株価より高いため、同社はこの数値を利用することで同社株の割安さをアピールしています。

3-2 EV/EBITDA倍率

EV/EBITDA(Enterprise Value / Earnings Before Interest, Tax, Depreciation ,and Amortization)はM&Aの評価時によく使われます。企業価値(EV)を、その企業が生み出すキャッシュ(利息や税金を支払う前の利益に、減価償却費などを足し合わせた金額)で割った倍率のことです。

EVは株価の“時価総額+負債-現預金”、EBITDAは“営業利益+減価償却費”です。この数字が小さいほど割安です。なお、M&Aを行う上での目安は8倍~10倍とされています。

3-3 企業価値評価法

企業価値評価法もM&Aで使用される企業価値の算出方法です。企業の本来の価値を求め、株価よりも割安か割高を判断する手法として使うことができます。今回は、企業の理論価格算出方法について分かりやすく書かれている「ほんとうの株のしくみ」(山口揚平著)の中で取り上げている手法について説明します。

事業価値を求める

事業価値とは、損益計算書上の営業利益を基準に算出します。営業利益は過去2期と予想値の平均を求めます。事業価値は、営業利益の10倍とします。この10倍は税引き後(TAX40%)の期待利回りを6%に設定した場合、10倍となるためです。

事業利益=1×0.6(TAX40%を控除)÷0.06=10倍

財産価値を求める

財産とは、会社が持っている現金や土地などの資産で、貸借対照表(BS)から求めることができます。流動資産から流動負債の1.2倍(余裕を持たせるため)を差し引きます。この金額に、固定資産の“投資その他の資産”を加算します。

財産価値=流動資産-(流動負債×1.2)+固定資産の“投資その他の資産”

1株当たりの企業価値(理論価格)を求める

事業価値と財産価値の合計金額から固定負債合計額を引き、発行済み株数で割り1株の価値を求めます。

最後に求められた理論価格と市場価格を比較する

理論価格と株価を比較し、株価が割高か割安かを判断します。

例を挙げて求めてみましょう。栗本鐵工所(5602)の2020年3月会計年度の数字を例に、理論価格を求めてみます。算出にはヤフーファイナンスのデータと有価証券報告書を用いました。有価証券報告書は、金融庁の“EDINET”上にある“書類検索”を使うと簡単に探し出すことができます。

①事業利益=3,780百万円(過去2期と今期予想の平均営業利益)×10倍=37,800百万円

営業利益のデータは、ヤフーファイナンス(業績予想の項目)で過去2期と予想値が確認できます。

②財産価値=84,669百万円(流動資産)-(63,325百万円(流動負債)×1.2)+15,279百万円(投資その他の資産)=23,958百万円

③事業利益と財産価値の合計から固定負債合計額を差し引き、最後に発行済み株数で割り理論株価を求めます。
37,800百万円+23,958百万円-12,013百万円=49,745百万円
発行済み株数 13,098,490株
49,745百万円÷13,098,490株=3,797円 

3,797円が理論株価となります。

④求められた理論株価と市場価格を比較します。
栗本鐵工所の3月9日終値は1,756円でした。企業価値評価法では、栗本鐵工所の理論価格が3,797円と求められたため、株価が割安な水準ということになります。

まとめ

バリュー株・割安株は、PERやPBR、配当利回りなどを同業他社や株式指数と比較することで相対的に見つけることができます。慣れてきたら、QレシオやEV/EBITFA、企業の本来の価値に注目した手法(企業価値評価法)も試してみましょう。

PERやPBR、配当利回りが割安な時に投資するという方法も良いのですが、より正確に投資をするには理論株価を活用する企業価値評価法が適しています。理論株価と株価のかい離の解消には時間がかかるため(必ず修正されるものではありません)、中長期投資向けの手法と言えます。

PayPay証券では、2022年6月1日(水)〜2022年7月31日(日)まで、新規口座開設者の中から、キャンペーン申込期間中にキャンペーンコード「cpn2206」を入力すると抽選で1等10名に50,000円、2等1,000名に3,000円の投資資金がプレゼントされます。

The following two tabs change content below.

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。