老後資金として2,000万円が必要だとニュースに流れてから、急に投資について考え始めた人も多いと思います。しかし、「何をしたらいいのか良く分からない」という方も少なくないでしょう。
今回は、「何となく分散投資という言葉は聞いたことあるけど、どうやったらいいのか分からない」という方に向けて、分散投資とリスクの考え方についてお話してみたいと思います。
目次
- 投資は余剰資金で行い、損失を想定しておくことも大切
- 運用前に知っておきたい5つの分散投資方法
- キャピタルゲインとインカムゲインをどう組わせるか
- トレーディングで知っておきたいリスクの計算式と投資の進め方
- まとめ
1.投資は余剰資金で行い、損失を想定しておくことも大切
初めて投資をする時に、いきなり専業でというケースは少ないかと思いますので、普通は何か仕事をしながら兼業でということになると思います。日中忙しく働いている中で、副業であるはずの自分の投資資産の状況が気になってしまい、本業に支障をきたすようでは元も子もありませんので、まず投資を始めるにあたっては、余剰資金で始めてみることが大切です。
そして、最悪のケースとして一時的に50%くらい資産がマイナスになることはある、という想定はしておきましょう。投資をするにあたって、常に最悪の事態を想定しておくことは必要なことで、いざ損失が出た時にどう対応するかが非常に重要です。先ほど余剰資金でというお話をしたのは、損失が出ても慌てなくてすむからです。
投資の世界では、基本的にリスクを取る(損失を想定する)ことでリターンが生まれます。取ったリスクの量とリターンの量は概ね比例します。ちなみに、円預金も運用資産としてカウントされますし、日本国が消滅しない限りは保障されますので、円預金のリスクは限りなくゼロに近いですが、リターンもゼロに近くなってしまいます。これは円預金で半年に一回振り込まれる利息額を見てみれば一目瞭然です。
2.運用前に知っておきたい5つの分散投資方法
ではここからは、具体的な運用方法を考えてみることにしましょう。
運用を始める前に、まず考えたいのが「分散投資」です。では分散投資とは、どういう投資手法なのでしょうか。たとえば、FXに馴染みのある方であれば、通貨を分ける=投資先の国を分けるということを考え付くかもしれませんが、他にも多くの分散投資方法があります。以下に5つの分散方法をまとめてみました。
- 投資商品を分ける(例:株、債券、通貨、金、オイル)
- 投資国を分ける(例:円、米ドル、ユーロ)
- 投資時期を分ける(例:積立投資、一括投資)
- 投資期間を分ける(例:短期、中期、長期)
- 投資手法を分ける(例:キャピタルゲイン、インカムゲイン)
この5つのうち、一番重要なのは、⑤の「投資手法を分ける」という方法で、これは多くの人が頭の中で混同してしまっていることが多い項目でもあります。
以下では、この「投資手法を分ける」ことについてキャピタルゲインとインカムゲインの2つを、さらに詳しく解説していきたいと思います。
3.キャピタルゲインとインカムゲインをどう組わせるか
2つの投資手法について簡単に説明すると、まず「キャピタルゲイン」は資産を売買することで得られる損益のことで、不安定(リスクが高い)だが大きな収益が期待でき、短期投資に向いています。
一方、「インカムゲイン」は保有しているだけで発生する収入のことで、株式投資であれば配当、債券投資であれば利息収入に該当し、基本的にマイナスとなる可能性は低いが(リスクは小さい)期待収益も小さく、長期投資に向いていると言えます。
初めて投資をする場合、ご自分のリスク許容度に応じて、まずはこの2つの手法をどのような配分でポートフォリオに組み込むのかを考えないといけません。
例えば、殆どリスク許容度がない方であれば、まずキャピタルゲイン狙いは0%、インカムゲイン狙い100%という発想になるでしょう。そして、株であれば安定して配当を出している実績がある大型株が良いですし、債券であればデフォルトする可能性が低い国の国債が良いでしょう。
しかし、外国の株・債券となると、為替リスクが発生しますので、円建てという縛りが出てきてしまい、日本の大型株か日本国債という選択肢しか残りません。ただ、このインカムゲイン狙いに100%を投資するというのは、本当にリスクが少ないのでしょうか。
仮に、300万円の資金を、大型株一つに全て投資したとしましょう。10年経って株価が半分になった場合、毎年3%の配当を継続して貰えたとしても、資産残高でいえばマイナスです。上記の例でいくと、15年程度経過すれば、株価が半分になったとしても、インカムゲインが補ってくれることになります。すなわち、最悪のケース(株価が50%マイナス)を想定すると、15年程度は継続保有が求められる形となります。
では日本国債ならどうかというと、現時点では10年ではマイナス金利となってしまっており、10年満期まで保有したとしてもインカムゲインは得られません。
ということは、円預金が一番良いのでしょうか。確かに元本は保証されますが、仮に将来インフレとなった場合、キャッシュというのは相対的にどんどん価値が落ちてしまいます。今の300万円が10年後に303万円になったとして、現在300万円の車が将来350万円になっていたとすると、資産価値は減少してしまったということになります。
すなわち、実はリスクが高いと言われているキャピタルゲイン狙いの割合をある程度増やすことが、ポートフォリオの安定化につながるという可能性が出てくるのです。例えば300万円をキャピタルゲイン狙い20%(60万円)、インカムゲイン狙い80%(240万円)を大型株へ分散投資するという投資方法です。
しかし、このキャピタルゲイン狙いの投資は、初心者には難しいものでもあります。ここがマイナスとなってしまうと、ポートフォリオが安定化するどころか、資産全体が大きく落ち込んでしまう危険を孕んでしまうためです。
以下では、キャピタルゲイン狙いの投資のリスクをコントロールする観点から、「トレーディング」についても掘り下げて解説をしていきたいと思います。
4.トレーディングで知っておきたいリスクの計算式と投資の進め方
資産を売買することはトレーディングと呼ばれますが、トレーディングをする際に知っておかなければならない下記の式を考えてみたいと思います。
保有資産×保有時間=リスク
どういう意味でしょうか?まず「保有資産」が大きいということは、リスクが大きくなることだというのはイメージしやすいでしょう。そして上記の式で言うと「保有時間」を短くすれば、リスクは抑えられるということです。
つまり、大きなリスクを取る(運用する資産額を大きくする)のであれば、保有時間を短くすることでリスクは安定化します。逆に、保有時間が長くなればなるほど、将来起こる不確定要素が増えてきますので、長期投資の場合は保有資産を小さくすることでリスクは抑えられます。
ではトレーディング収益のリスクを減らすことは下記のうちどれが有効だと思いますか?
- 大きなポジション×短時間
- 小さなポジション×短時間
- 大きなポジション×長時間
- 小さなポジション×長時間
※ポジション=保有資産のこと
一番リスクが小さいのが「小さなポジション×短時間」で、リスクが大きいのが「大きなポジション×長時間」となります。キャピタル狙いポジションからはなるべく損失を出したくないということで、「小さなポジション×短時間」を選択すると期待収益が小さ過ぎて、全体の損益に対する補完になりません。それを解決する方法が、売買頻度を上げるというものです。最近耳にする機会が増えている、自動売買手法というものがこれに当たります。売買頻度を上げることで、少ないリスクのままである程度のリターンを得られることになります。
まとめ
初心者の方が投資を始めるにあたって、まず考えたほうが良いことは、分散投資をするということ、そして投資手法の分散においては、インカムゲイン狙いの長期投資とその補完として短期の自動売買を組み合わせるということです。それが決まれば、次は資産選びに入ります。資産が決まれば、リスクがおおむね把握でき、長期と短期の配分も決まってきます。
投資を始めて損益の状況を実際に体験することで、自然とリスク許容度も上がり、さらに分散投資方法である投資商品・投資国・投資時期・投資期間・投資手法の5つと投資商品の中身を細かく理解することで、次のステップが見えてきます。
この5つを組み合わせることで相当な数の分散投資ポートフォリオが出来上がります。そこに、ご自身のライフスタイル、将来設計、を考慮して個々人に合ったポートフォリオを構築していくことになります。ぜひこの記事を参考に、投資を始めることを検討なさってみて下さい。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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