菅新政権発足、「スガノミクス」で株価はどうなる?今後の経済政策と株価への影響を予想

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菅義偉新政権が発足しました。経済政策はアベノミクスを継承し、金融政策も引き続き現状の異次元緩和策が維持されます。これは市場にとっての好材料です。また、菅総理は「地方銀行の統廃合」や「携帯料金の引き下げ」、「不妊治療の保険適用」、「デジタル庁創設」などを表明しました。

市場はすでに菅新政権の経済政策である「スガノミクス」銘柄を選別しています。新政権誕生を受け、今後の株式市場の動向について予想してみました。

目次

  1. スガノミクスの目玉と株価
    1-1.地方銀行の再編—「地銀」にプラス
    1-2.携帯電話料金の引き下げ—「携帯会社」にマイナス、「消費・小売り」にプラス
    1-3.活力ある地方を創る—「レジャー関連、インバウンド関連」にプラス
    1-4.デジタル庁創設—「IT関連」にプラス
  2. 菅政権の弱点
  3. まとめ

1.スガノミクスの目玉と株価

菅新政権における経済的な目玉政策と株価への影響を考察します。

1-1.地方銀行の再編—「地銀」にプラス

銀行再編が進めば、金融業界の活性化が期待されるため株価には好材料となります。また、再編に伴うシステム構築などに関連した企業にも収益機会がありそうです。

菅総理は、官房長官時代に「地方の銀行は数が多すぎる」と明言しました。地方銀行と第二地方銀行は2020年8月末時点で、都道府県数(47)の倍以上の102行もあります。

地方では人口減や高齢化に伴う地方経済の低迷や超低金利に加え、新型コロナウイルス感染拡大を受け、地方銀行の経営環境が悪化しています。こうしたなか、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が2020年11月に施行されるため、地方銀行の統合や合併が一気に進む可能性が高まっています。

1-2.携帯電話料金の引き下げ—「携帯会社」にマイナス、「消費・小売り」にプラス

携帯料金の引き下げが行われた場合、消費・小売り関連の銘柄にはプラスに働くと思われます。一方で、携帯大手3社にとっては収益減に直結するため、株価にはネガティブ材料です。

日本の携帯料金は世界と比べて最高水準にあります。総務省が公表した世界6都市の2019年度の携帯料金(20ギガバイト)は東京が月8,175円で最高でした。これは、最も安いロンドン(2,700円/月)の3倍強にあたります。

菅総理は、日本の携帯料金には4割の引き下げ余地があると発言しています。所得が伸び悩むなか、携帯料金の高さが家計を圧迫し消費を押し下げています。携帯料金が引き下げられれば、家計に余裕ができ、消費活性化につながります。

日本の1世帯あたり通信費は1989年(6,198円/月)から2019年(13,404円/月)の30年間で2.2倍となりました(参照:総務省統計局「家計調査」。年間では74,376円から160,848円にもなります。もし菅総理の発言通りに4割引き下げられたとすると、年間で64,332円も家計に余裕ができることになります。

菅総理は携帯料金の値下げが現実しない場合、電波利用料を引き上げる可能性に言及しており、携帯電話会社は選択を迫られています。継続的な減収が予想されるため株価にとってはマイナスとなりそうです。

1-3.活力ある地方を創る—「レジャー関連、インバウンド関連」にプラス

菅総理は、地方再生に取り組んできた経緯があるため、今政権でも活力ある地方創生に意欲的な姿勢を示しています。地方の観光業復活の呼び水としての「GO TOキャンペーン」の活用のほか、「ふるさと納税」や「外国人観光客の誘致」、「農産品の輸出の拡大」といった頑張る地方をサポートする方針が引き続き打ち出されています。

株価に対するインパクトとしては、旅行・観光・レジャー関連にはポジティブです。また、新型コロナウイルス感染症の鎮静化が前提ですが、インバウンド関連も期待できます。

1-4.デジタル庁創設—「IT関連」にプラス

菅内閣の目玉政策ともいえるデジタル庁新設も動き始めました。自治体向けのデジタル化サービスに強い企業や、教育・医療の遠隔化などのIT関連銘柄や5G関連銘柄も期待できそうです。

デジタル庁新設により、光ファイバー網を全国に張り巡らし、マイナンバーカードがあれば24時間365日、役所に行かなくても良いインフラを作ることを目指す方向にあります。既に光ファイバー網構築のための予算500億円を確保しています。

2.菅政権の弱点

菅総理の任期は、2021年9月までで1年弱と短期です。2021年にはオリンピック開催も控えているなか、上記のような多岐にわたる政策を1年弱で実現することは「神業」です。

コロナ禍で経済を安定させることが求められるなか、長期安定政権が望ましいとする声もあります。株価にとっても長期安定政権が好ましいため、早期に解散総選挙が行われるかどうかも注目です。短期間で退陣となった場合は、株価にはマイナス材料となります。

また、菅総理の掲げる「既得権益、前例主義の打破、規制改革」には、反対勢力の抵抗も予想されるため、政策の実行力とそのスピードが問われます。

まとめ

アベノミクスはマクロ政策でしたが、スガノミクスはミクロ政策です。そのため、菅総理の打ち出した経済政策は、携帯料金引き下げなど国民に身近で分かりやすいものが多いと言えます。また、地方経済が活性化し「自信」を取り戻すことで、日本経済全体を底上げしようとしています。

ミクロ政策が中心のため、株式市場へのインパクトは全体的には限定的という予想ですが、スガノミクス関連銘柄にはプラス効果が大きくでる可能性があると言えるでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。