高利益率の銘柄5本、各指標分析と共通点、投資のメリット・デメリット【2022年7月】

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高利益率の企業は、競争力があり成長期待が高いため株式市場で注目されています。

損益計算上の利益には、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の5つがあります。この中で、営業利益が本業の利益で、株式市場では売上高営業利益率が重要視されています。

今回、日米の高い営業利益率の企業5銘柄を財務分析し、共通点や、投資のメリットやデメリットについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年7月22日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 営業利益率が重要
  2. 利益率が高い企業の特徴
    2-1.唯一無二の製品を製造
    2-2.独自のビジネスモデルが確立されている
  3. 投資のメリット・デメリット
    3-1.高収益企業に投資するメリット
    3-2.高収益企業に投資するデメリット
  4. 営業利益率が高い5銘柄
    4-1.中外製薬 (4519)
    4-2.キーエンス (6861)
    4-3.オービック (4684)
    4-4.テキサス・インスツルメンツ (TXN)
    4-5.S&Pグローバル (SPGI)
  5. まとめ

1 営業利益が重要

損益計算書(PL)には、5つの利益が登場します。

まず、売上から原価を差し引いて算出する売上総利益(粗利)、売上総利益から人件費や賃料などの販売管理費を引いた営業利益、営業利益に本業以外で上がった利益と費用を差し引いた金額を足した経常利益、経常利益に一時的な不動産売却益や災害などの損益(特別損益)を加算した税引前当期純利益、そこから法人税を差し引いた当期純利益です。

5つの利益の中で、営業利益が本業の収益とされ、株式投資する際に重要です。なお、営業利益を売上高で割ると営業利益率が求められ、営業利益率が高い企業ほど優秀な企業と言える傾向があります。

2 利益率が高い企業の特徴

ここでは利益率が高い企業の特徴をみてみましょう。

2-1 唯一無二の製品を製造

フェラーリというイタリアの自動車メーカーをご存じの方は多いのではないでしょうか。車両価格が1台3,000万円以上もする高級スポーツカーを製造販売しています。競争の激しい自動車業界ですがフェラーリの営業利益率は25%と、多くの自動車メーカーが10%程度であるのに対し高い水準と言えます。

フェラーリの利益率が高い理由として、デザインや性能が、他社が容易にまねできない唯一無二の存在だからです。そのため販売価格については、ほとんど他社を意識することなく自由に価格を決めることができます。

2-2 独自のビジネスモデルが確立されている

米国のマイクロソフトの営業利益率は41.5%に上ります。マイクロソフトの強みはビジネスにおける圧倒的なOSシェアの高さです。OSに加え、Office製品はビジネス上で必須のツールです。そのため、必然的にマーケットシェアが高くなります。

シェアが高ければ価格設定に大きな優位性を持てるほか、製造業などと比べるとソフトウェア産業の原価率は低いため、非常に高い営業利益率を持っているのです。

3 投資のメリット・デメリット

ここでは、高収益企業のメリットとデメリットについて見ていきましょう。

3-1 高収益企業に投資するメリット

メリットとしては、市場規模が拡大傾向であれば、企業収益が増加するため株価が上昇することが期待できる点です。また、継続的な増配も期待できるため、株主には大きなメリットがあります。

3-2 高収益企業に投資するデメリット

デメリットとしては、代替製品の誕生や、市場規模の減少、他社の市場参入などが考えられます。一般的に高収益企業は専門性の高い企業が多く競合が少ないため、急に大きく状況が変わるリスクがあるのです。

あまりに独占性が高いと、グーグルやアマゾンのように政治問題にまで発展してしまい、株価の上値が抑えられてしまうこともあります。

4 営業利益率が高い5銘柄

上記のことを念頭に日米企業の中から、営業利益率が高い銘柄を5銘柄取り上げました。情報技術や医薬品関連企業の営業利益率が高い傾向にあると言えそうです。

4-1 中外製薬 (4519)

中外製薬はがん・バイオに強みをもつ研究開発型製薬企業で、国内の薬品メーカーとして国内トップクラスです。

2022年6月中間期の決算は増収増益でした。新型コロナウイルス治療薬や、主力の血友病治療薬の販売が好調でした。具体的には2022年1-6月の営業利益が前年同期比78.6%増の2,041億円となっています。この期の営業利益率は48.1%(前年同期:41.1%)です。

特に海外製品売上高が前年同期比77.8%増の1,790億円で、前年を大幅に上回りました。また昨年12月に重症の新型コロナウイルス治療薬として欧州で承認を得たアクテムラが614億円(同68.2%増)と好調です。

7月22日時点の株価は3,749円で、予想PER(株価収益率)が16.6倍、配当利回りが2.03%です。

4-2 キーエンス (6861)

キーエンスは、ファクトリー・オートメーション(FA)の総合メーカーです。創造力に優れ、新たに生み出される商品の約7割が世界・業界初のものです。

自社工場は持たず、自社の企画開発した製品の製造を委託しています。そのため、固定費を低く抑えることができることから、利益率が高くなる傾向があります。

キーエンスの2022年3月期の営業利益率は55.31%(売上高:7,551.7億円、営業利益:4,180.4億円)です。

7月22日時点の株価は56,150円で、予想PERが40.0倍、配当利回りが0.36%です。自己資本比率(総資本に占める自己資本の割合)が93.5%です。

4-3 オービック (4684)

オービックは独立系のシステムインテグレーター企業です。同社の代表的な統合業務ソフトウエアOBIシリーズが好調に売れています。

2022年3月期の営業利益率は60.5%(売上高:894.7億円、営業利益:541.3億円)です。営業利益は28期連続増益、利益は最高値を更新しました。2023年3月期配当金予定は年間220円で、配当性向は41.5%の予定です。

7月22日時点の株価は21,740円で、予想PERが41.0倍です。

4-4 テキサス・インスツルメンツ (TXN)

テキサス・インスツルメンツは半導体を開発・製造する米国の世界的な企業です。収益の内訳はアナログ半導体市場が約70%と大半を占め、アナログ半導体の売上高は世界1位の企業です。

2021年度の営業利益率は48.8%(売上高:1,834.4億ドル、営業利益:896億ドル)。7月22日時点の株価は163.90ドルで、予想PERが19.5倍、配当利回りが2.7%です。なお、2004年以来の配当金上昇率は25%(2004年:0.08875ドル、2021年:3.45ドル)です。連続増配中の企業です。

世界の半導体需要は今後も伸びが予想されているため、同社にも追い風が吹いています。

4-5 S&Pグローバル (SPGI)

S&Pグローバルは金融情報サービス会社で、世界中の株式・債券市場やコモディティ市場を対象に格付けや、分析に関する情報を提供しています。同業にはMSCIやMoody‘sがあげられます。2021年度の営業利益率は50.8%(売上高:82.9億ドル、営業利益:42.2億ドル)です。

7月22日時点の株価は361.94ドルで、予想PERが28.8倍、配当利回りが0.9%です。

まとめ

高利益率の銘柄は、市場占有率が高く、競争力が高い強い企業が多い傾向があります。そのため、市場規模が拡大している場合、収益増が見込まれることから、株価の上昇や増配が期待できます。

デメリットとしては、市場規模が縮小傾向にある場合や代替商品が開発された場合には企業業績が悪化する可能性が高いことが挙げられます。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。