インドの2022年度の経済成長率は6.8%と高成長をとげ、国際通貨基金(IMF)は、2023年度は若干減速するものの、5.9%と予想しています。
参照:IMF「国別データ」
また、インドの人口は中国を上回り、世界最大の人口大国となりました。人口は今後も増加傾向にあるとみられ、2022年時点の平均年齢は27.9歳であり、中国の38.8歳と比較しても若く、今後も継続的な経済発展が期待できそうです。
参照:三井住友信託銀行「インドは次の中国になりうるのか」
株式市場も活況で、世界の投資家がインド市場に注目しています。そこで、今回は、日本人投資家がインド株式に投資する方法や注意点を解説します。
※本記事は2023年9月12日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- インド経済の現状
- 投資スタンス
- インド株投資のメリット
- インド株式指数
4-1.センセックス指数
4-2.Nifty50 - 日本でインド株式に投資する方法
5-1.ADR銘柄
5-2.ETF
5-3.投資信託 - インド関連投信の銘柄は?
6-1.過去3年間の騰落率上位銘柄5選
6-2.純資産額上位銘柄5選
6-3.信託報酬が低い銘柄4選 - まとめ
1.インド経済の現状
インドでは中産階級が拡大しており、ニューデリー経済調査会社によると年間世帯収入が50万から300万ルピーの中間階級の割合は2005年の14%から2021年には31%に倍増し、2047年までには63%になると予想しています。
参照:IBEF「Indian middle class will nearly double to 61% by 2046-47」
2.投資スタンス
インドへの投資は、長期的な経済成長が期待できるため、長期投資が最適です。IMFは、インドのGDPは2027年にドイツや日本を上回り世界第3位の経済大国になると予想しています。
参照:IIMA「期待高まるインド経済の現状と課題」
経済発展に伴い、インドの株式指数であるセンセックス指数は史上最高値を更新し、世界中の投資家がインド市場に注目しています。しかしながら、海外投資家はインド株式への直接投資ができません。そのため、多くの投資家は投資信託やETFに投資しています。
3.インド株投資のメリット
インド株式投資のメリットは、インド経済が拡大基調にあるため、株高、通貨高です。
インド経済は、現モディ政権の海外企業誘致などを中心とした政策により、海外からの直接投資が増加。アマゾン、テスラ、マイクロン・テクノロジー、ゼネラル・エレクトリック、ボーイングなどがインド投資を表明しています。今後のインド経済発展の一躍を担うことになりそうです。
4.インド株式指数
インドの代表的な株式指数には、センセックス指数とNifty50指数があげられます。それぞれの特徴を見てみましょう。
4-1.センセックス指数
センセックス指数はインドのボンベイ証券取引所に上場する30銘柄から構成されています。指数構成銘柄は売買代金、出来高が考慮され、時価総額が大きい上位30銘柄です。計算方式は、浮動株調整時価総額加重平均です。
構成銘柄は、HDFC銀行、マヒンドラ・マヒンドラ、インフォシス、ウィブロなどです。
4-2.Nifty50
Nifty50指数は、インド証券取引所に上場する24セクターを代表する大手企業50社で構成されています。指数は浮動株調整時価総額加重平均で、1995年11月3日の時価総額を1,000として算出されます。
構成銘柄としては、HDFC銀行、タタ・スチール、マヒンドラ・マヒンドラ、ドクタ・レディーズ・ラボラトリーズなど50銘柄です。
5.日本人がインド株式に投資する方法
現在、日本からはインド上場銘柄に直接投資ができません。インド銘柄に投資する方法としては、米国市場に上場しているインド銘柄やETF、投資信託に投資する方法が挙げられます。それぞれ見ていきましょう。
5-1.ADR銘柄
ADRとは米国預託証券を指します。取引所に上場しており、米国株同様に日々売買されています。
インド株のADR銘柄としては、インド最大級の民間銀行HDFC銀行、世界有数のITコンサルティング・ソフトウェアサービス企業のインフォシス、インドのIT業界大手のウィプロ、大手製薬会社のドクタ・レディーズ・ラボラトリーズなどに投資可能です。
ADR銘柄のメリットは、米国会計基準で財務諸表が作成されるため、同じセクターの他銘柄との比較が容易なこと、ADR上場審査のハードルが高いため経営状況が良い企業が多いことが挙げられます。
5-2.ETF
東京証券取引所には、NEXT FUNDS インド株式指数、Nifty 50連動型上場投信(東証コード:1678)が上場しており、投資家は自由に売買できます。100株単位で投資でき、2023年8月2日時点の終値が301.1円なので、最低投資金額は3万円程度です。
5-3.投資信託
投資信託純資産額が小さい銘柄は、繰り上げ償還のリスクがあります。インド投資は長期投資が基本です。投資する際には純資産額が多く、償還が無期限の銘柄を選ぶようにしましょう。
6.インド関連投信の銘柄は?
SBI証券が取り扱っているインド関連の投資信託の中から、過去3年間の騰落率上位銘柄と純資産額上位銘柄、信託報酬が低い銘柄を各5銘柄見ていきましょう。以下では、3年の騰落率、純資産額、信託報酬に分けて、ランキング形式でファンドを紹介します。
※データは2023年8月時点
6-1.過去3年間の騰落率上位銘柄5選
騰落率が高い銘柄には、インド・インフラ企業に投資するファンドが上位を占めました。5銘柄中3銘柄がインフラ関連企業に投資するファンドでした。
1位:HSBCインド・インフラ株式オープン
騰落率1位は、HSBCインド・インフラ株式オープンの40.62%でした。インドのインフラ企業に投資するファンドで、2023年6月末時点では41銘柄に投資しています。組入れ銘柄上位は、ラーセン・アンド・トゥブロ、リライアンス・インダストリーズ、インド国営火力発電公社、バーラド・エレクトロニクス、ジンダル・スチール・アンド・パワーなど上位5銘柄で全体の28.4%を占めています。
シャープレシオは5銘柄中もっとも高く1.63です。純資産額は133.9億円です。
インドのインフラ整備は遅れており、モディ政権はインフラ整備に重点を置いているため、インフレ関連銘柄は今後も高い成長が期待できそうです。なお、償還は無期限、信託報酬は2.09%以内です。
2位:イーストスプリング・インド・インフラ株式ファンド
騰落率2位は、イーストスプリング・インド・インフラ株式ファンドの36.89%です。純資産額は302億円です。シャープレシオは1.03です。
2023年6月末時点で48銘柄に投資をしており、上位組入れ銘柄には、ウルトラ・テック・セメント、アクシス銀行、ICICI銀行、リライアンス・インダストリーズ、プリゲード・エンタープライズなどです。上位10銘柄で全体の47.8%を占めています。
ファンドの償還日は、2026年11月20日、信託報酬が1.95%程度です。
3位:イーストスプリング・インド消費関連ファンド
騰落率3位は、イーストスプリング・インド消費関連ファンドの35.32%です。純資産額が971.8億円と、上位3銘柄の中では最大です。上位組入れ銘柄は、マヒンドラ・マヒンドラ、アクシス銀行、バルティ・エアテル、ICICI銀行、ゴロレジ・コンシューマー・プロダクツ、マルチ・スズキ・インディア等、47銘柄に投資しています。
上位10銘柄で全体の47.3%を占めています。なかでも、自動車、農業用器具、自動車部品を製造販売しているマヒンドラ・マヒンドラに全体の7.2%を投資しています。
ファンドの償還日は、2028年2月21日、信託報酬が1.95%程度です。
4位:SBI・UTIインドインフラ関連株式ファンド
騰落率4位は、SBI・UTIインドインフラ関連株式ファンドの35.22%です。純資産額が31.6億円と小規模です。ファンド全体で35銘柄に投資しており、最大の投資先は建設会社・重機メーカーのラーセン&トゥブロの10.1%です。
ファンドの償還日は、無期限、信託報酬が1.95%程度です。
5位:高成長インド・中型株式ファンド(年1回決算型)
騰落率5位は、高成長インド・中型株式ファンド(年1回決算型)の34.64%です。「R&Iファンド対象2023」において優秀ファンド賞(投資信託/インド株式部門)に選ばれました。
組入れ銘柄数は84で、素材、資本財の中型株式を中心に投資しています。一銘柄の組入れ比率は最大でも2.6%で、幅広い銘柄への分散投資が行われています。純資産額は1,212億円と上位5銘柄のうち最大規模です。ファンドの償還日は2027年3月1日、信託報酬が2.05%程度です。
6-2.純資産額上位銘柄5選
純資産額上位5銘柄のうち2銘柄が、決算頻度の異なる高成長インド・中型株式ファンドで、純資産額の合計は2銘柄で約3,100億円と、5銘柄合計の49.2%を占めています。なお純資産残高は、一億円未満は切り捨てています。
1位:高成長インド・中型株式ファンド
純資産額が最も積み上がっていた銘柄は、高成長・インド・中型株式ファンドの1,906.35億円でした。なお、騰落率は34.64%です。
SBIが取り扱っているインド関連ファンドの中で5位の成績でした。信託報酬は2.05%程度です。
2位:イーストスプリング・インド株式オープン
純資産額2位は、イーストスプリング・インド株式オープンの1,247億円です。銀行、金融サービス業、エネルギー関連銘柄を中心に45銘柄に投資しています。
最大の投資先は、エネルギー会社のリライアンス・インダストリーズで投資金額の9.1%を投資しています。償還期限は無期限、信託報酬は1.95%程度です。
3位:高成長インド・中型株式ファンド(年1回決算型)
純資産額3位は、1位同様、高成長インド・中型株式ファンド年1回決算型の1,193億円です。
4位:野村インド債券ファンド(毎月分配型)
純資産額4位は、野村インド債券ファンド毎月分配型の979億円です。インドルピー建て社債を中心に運用しています。組入れ銘柄数は152銘柄で、平均デュレーションは3.4年、平均格付けBBBです。
償還日は2026年11月13日、信託報酬が1.74%程度です。
5位:イーストスプリング・インド消費関連ファンド
純資産額5位は、イーストスプリング・インド消費関連ファンドの963億円です。なお、このファンドの騰落率は35.32%と騰落率3位で、信託報酬は1.95%程度です。
6-3.信託報酬が低い銘柄4選
インドファンドは、信託報酬が高い銘柄が目立ちます。ここでは信託報酬が1%以下の銘柄を見ていきましょう。
1位:iFreeNEXT インド株インデックス
信託報酬の最も低い銘柄は、iFreeNEXT インド株インデックスの0.781%です。
このファンドはNifty50インデックス連動銘柄で、償還は無期限です。ファンドの設定が2023年3月、純資産額は243億円です。
2位:NZAM・レバレッジ・インド株式2倍ブル
信託報酬が2番目に低い銘柄は、NZAM・レバレッジ・インド株式2倍ブルの0.88%です。このファンドは、Nifty50指数先物(ドル建て)の動きの2倍程度になるように運用されています。
償還は無期限で、ファンドの設定が2023年3月、純資産額は17.9億円です。
3位:iTrustインド株式
信託報酬が3番目に低い銘柄は、iTrustインド株式の0.98%程度です。
金融、一般消費財・サービス、ヘルスケアなどの業種が中心の25銘柄に投資しています。償還は無期限、純資産額は81億円です。
4位:イーストスプリング・インド・コア株式ファンド
信託報酬が4番目に低い銘柄は、イーストスプリング・インド・コア株式ファンドの0.99%程度です。
インドの消費関連やインフラ関連銘柄を中心に投資しており、償還は無期限、純資産額は71億円です。
7.まとめ
世界が注目しているインドに日本から投資する方法には、米国市場上場のADR銘柄に投資する方法のほか、ETFに投資する方法、投資信託に投資する方法があります。
個別銘柄に投資する方法は、ADR銘柄に限られてしまいます。
成長期待が高いインドですが、政治・経済・社会情勢の不安が高まる可能性が株式や債券市場に投資する際のリスクになりえます。ETFや投資信託に投資する方法であれば、リスクが分散されるので、投資初心者の方にも始めやすいでしょう。
インドの高い経済成長の恩恵を受けやすいNifty50連動のETFやファンドから始めてみてください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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