新興国株に投資できる人気の投資信託10本は?購入時のポイントも【2022年6月】

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新興国株式は、これからの成長が期待される国々の株式のことを指します。豊富な資源を持つ国も多く、多くの労働人口を抱える国もあり、成長のポテンシャルは大きいと言えるでしょう。

伸びしろが見込まれる新興国への投資に対して、「いまいち新興国の全体像がつかめない」「具体的にどんな特徴や強みがあるのか」など、疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

当記事では、新興国株式に投資できる主なファンドの紹介と、新興国の特徴や今後について解説します。新興国投資を考えている人はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など課税対象の数値はすべて税込表記です。

目次

  1. 新興国をテーマとしたファンドを販売金額順に10本紹介
  2. ファンドごとの概要
    2-1.eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
    2-2.ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ-ブラジル株 (愛称:ピクテIFブラジル株)
    2-3.香港ハンセン指数ファンド
    2-4.EXE-i新興国株式ファンド
    2-5.ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)
  3. 新興国ファンドの強みや特徴
    3-1.新興国とは?主な国や地域
    3-2.生産年齢人口の増加が顕著な国や地域への投資
    3-3.豊富な資源を持つ新興国が多い
    3-4.新興国ファンドのベンチマークは?
  4. 購入時に抑えておきたいポイント
    4-1.国や地域の組入比率
    4-2.地政学リスクや信用リスクの確認
  5. まとめ

1.新興国をテーマとしたファンドを販売金額順に10本紹介

SBI証券が扱うファンドからピックアップしました。

ファンド名 基準価額 純資産(百万円) トータルリターン/1年 トータルリターン/3年 シャープレシオ/1年 信託報酬
1.eMAXIS Slim 新興国株式インデックス 13,162円 89,658 -6.88% 9.91% -0.6 0.187%以内
2.SBI・新興国株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(新興国株式)) 12,879円 15,390 -4.96% 9.59% -0.42 0.176%程度
3.eMAXIS新興国株式インデックス 19,758円 35,503 -7.30% 9.44% -0.63 0.66%以内
4.ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ-ブラジル株 (愛称:ピクテIFブラジル株) 8,160円 572 15.78% 4.14% 0.48 0.968%
5.たわらノーロード 新興国株式 16,767円 14,111 -7.63% 8.59% -0.65 0.374%以内
6.EXE-i新興国株式ファンド 15,835円 14,287 -4.74% 9.48% -0.41 0.3615%程度
7.香港ハンセン指数ファンド 15,115円 1,537 -14.89% -1.23% -0.87 0.8580%
8.ニッセイ新興国株式インデックスファンド 12,107円 3,209 -7.09% 9.80% -0.61 0.2079%以内
9.ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型) 15,999円 5,030 11.72% 1.01 1.892%程度
10.SMT 新興国株式インデックス・オープン 34,357円 29,522 -6.90% 9.68% -0.6 0.66%

※数値は2022年6月10日時点の情報です。

新興国株式をテーマとしたファンドの多くは、インデックスファンドです。運用コストは比較的低コストに抑えられています。

新興国の中でも、ブラジルや香港など地域を絞り込んだファンドや、ビックデータをテーマとしつつ、新興国の小型株へ投資するアクティブファンドも見られます。

2.ファンドごとの概要

10本のファンドの中から投資スタイルやテーマが異なるファンドを5つピックアップし、概要を紹介します。

2-1.eMAXIS Slim 新興国株式インデックス

eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは、MSCIエマージング・マーケット・インデックスをベンチマークとする、オーソドックスな新興国インデックスファンドです。

決算は年1回。原則として為替ヘッジは行いません。2022年5月31日発行の月次レポートによると、組入上位の国や地域はケイマン諸島15.9%、台湾14.6%、インド12.2%となっています。

組入上位業種は、銀行15.4%、半導体9.4%、素材8.6%と続きます。組入上位5銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種/国 比率
1.セミコンダクターマニュファクチュア 半導体・台湾 6.40%
2.サムソンエレクトロニクス テクノロジーハードウェア・韓国 3.60%
3.テンセント・ホールディングス メディア、娯楽・ケイマン諸島(中国) 3.50%
4.アリババグループ・ホールディングス 小売・ケイマン諸島(中国) 2.50%
5.リライアンス・インダストリーズ エネルギー・インド 1.40%

新興国インデックスファンドは、世界をリードする台湾の半導体メーカーや、Appleにディスプレイを提供しているサムスン、中国のアリババやテンセントなど今後の成長が期待できる銘柄で構成されています。成長株も抑えておきたい場合、新興国株は要チェックです。

2-2.ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ-ブラジル株 (愛称:ピクテIFブラジル株)

ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ-ブラジル株は、MSCIブラジル株価指数に連動する運用成果を目指すインデックスファンドです。ファンド解約時に信託財産留保額の徴収がある点に注意が必要です。

主な業種別構成比は、素材が23.7%、銀行17.8%、エネルギー16.9%。全49銘柄中、組入上位5銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種 比率
1.ヴァーレ 素材 18.00%
2.ブラジル石油公社(優先株) エネルギー 7.60%
3.ブラジル石油公社 エネルギー 6.60%
4.イタウ・ウニバンコ・ホールディング(優先株) 銀行 6.30%
5.ブラデスコ銀行(優先株) 銀行 6.30%

鉄鉱石を主力とする資源開発会社のヴァーレが全体の15%を占めています。続いて、公営の石油開発会社、銀行と続きます。

月次レポートによると、ブラジルの財政赤字は他の新興国よりも高い水準にあるため、課題解決が重要なポイントとされています。問題解決に進展が見られないと、市場が好転することは無いと見られています。短期的には、新型コロナウイルスの影響による中国のゼロコロナ政策や、ウクライナ侵攻の影響を受けつつも、中長期的には世界経済の回復とともにブラジル経済も好転すると報告されています。

2-3.香港ハンセン指数ファンド

香港ハンセン指数ファンドは、香港に上場している株式の中から、ハンセン指数が採用されている銘柄を中心に投資しています。ハンセン指数をベンチマークとして、連動する運用成果を目指すインデックスファンドです。

毎年8月14日を決算日として、分配を決定します。最近の分配金実績は以下のとおりです。

決算月 分配金(円)
2017年8月 390
2019年8月 310
2020年8月 260
2021年8月 220
設定来累計 3,100

主な組入業種は、銀行18.4%、小売12.6%、保険9.7%です。組入66銘柄中の上位5銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種 比率
1.HSBCホールディングス 銀行 6.90%
2.AIAグループ 保険 6.90%
3.アリババグループホールディング 小売 5.80%
4.テンセント メディア・娯楽 5.80%
5.美団(メイトゥアン) 小売 5.30%

2022年5月末日発行の月次レポートによると、中国ではゼロコロナ政策のロックダウンによって、4月の工業生産や、小売売上高は大幅に低下しました。6月からの上海ロックダウン解除によって、最悪期は過ぎたとの味方が広がり、市場は好転しています。中国政府による景気刺激策も相まって、先行きの不透明感は後退したと報告されています。

2-4.EXE-i新興国株式ファンド

EXE-i新興国株式ファンドは、ETFへの投資を通じて新興国の株式へ投資するファンドです。参考指標はFTSE・エマージング・インデックスとしています。

2022年4月28日時点の月次レポートによると、主な組入銘柄の国や地域は、中国29.24%、インド17.69%、台湾17.22%です。

組入上位業種は、金融23.06%、情報技術15.65%、一般消費財、サービス12.24%と続きます。組入上位5銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種/国 比率
1.台湾セミコンダクターマニュファクチャリング 半導体/台湾 4.66%
2.テンセント・ホールディングス メディア・娯楽/中国 3.55%
3.アリババグループホールディング 小売/中国 2.27%
4.リライアンス・インダストリーズ エネルギー/インド 1.65%
5.インフォシス IT・通信/インド 1.09%

前述のMSCIエマージング・マーケット・インデックスとおおよそ同じ銘柄構成です。新興国インデックスで、組入比率が高く設定されている台湾セミコンダクターマニュファクチャリングは略称TSMCと呼ばれ、世界の半導体市場のシェア50%を誇る注目の企業です。その他、中国やインドの成長企業の名前も見られます。

新興国インデックスを通じて、世界の未来へ投資を拡大することも可能です。

2-5.ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)

ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)は主に、新興国の小型株式へ投資します。ビックデータを活用した計量モデルをもとに、ファンダメンタルズをリサーチ。これまで見逃されてきた新興国小型株の投資機会を見出す試みに取り組んでいます。

2022年4月28日発行の月次レポートによると、主な組入上位の国や地域は、インド22.8%、台湾20.1%、韓国15.5%です。

主な業種別組入比率は、素材約14%、資本財約12%、銀行や半導体が約10%となっています。293銘柄中、主な組入上位5銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種/国 比率
1.アクバンク 銀行/トルコ 1.10%
2.BSKフィナンシャル・グループ 銀行/韓国 1.00%
3.パワーテック・テクノロジー 半導体/台湾 1.00%
4.ICICI証券 金融/インド 1.00%
5.ルエンテックス・インダストリーズ 耐久消費財・アパレル/台湾 1.00%

まだネームバリューが少ない企業へ細かく分散投資されている点が特徴的です。あえてネームバリューのある企業を除外することで、成長企業へのピンポイントな投資を実現しています。

大型株インデックスファンドと異なり、小型株アクティブファンドは、基準価額の変動要因やリスクがわかりにくいケースがあります。当ファンドは、多くの通貨を扱っており、為替ヘッジを行っていないため、組入通貨の比率も忘れずに確認が必要です。国々の政情の影響を表すカントリーリスクにも注意しましょう。

3.新興国ファンドの強みや特徴

新興国株式にはどのような強みや特徴があるのでしょうか。新興国の定義や、新興国の国々が持つ秘められた力を紹介します。

3-1.新興国とは?主な国や地域

新興国の定義はさまざまですが、IMF(国際通貨基金)は194カ国中、155の国や地域を新興国とし、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)では、23カ国を先進国、26カ国を新興国としています。

代表的な有望新興国グループを以下に紹介します。

BRICs

BRICsとは、2000年代以降にめざましい発展を遂げたブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字をとって名付けられた名称です。ゴールドマン・サックス社が投資家向けのレポートに、BRICsの呼称をつかったことで一般的になりました。

しかし近年は各国の国力に差がつきはじめており、直近の状況にふさわしい呼称ではなくなりつつあります。

MENA

MENA(ミーナ)は、Middle East & North Africaの略称です。中東や北アフリカの国々を指します。主な国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートなどが含まれます。中東や北アフリカ諸国は原油貿易のイメージが強いものですが、アラブ首長国連邦のドバイのように、エネルギー以外の施策を積極的に取り入れ、外国から富裕層を呼び込んでいる国もあります。

MENA(ミーナ)に分類された国々は、原油の生産以外でも成長が期待されています。ただし地政学リスクが高い点には注意が必要です。

ネクスト11

ネクスト11は、ゴールドマン・サックス社が提唱した新興国グループの総称です。経済大国への成長が期待されています。グループ分類されている国は以下のとおりです。

  1. ベトナム
  2. 韓国
  3. インドネシア
  4. フィリピン
  5. バングラデシュ
  6. パキスタン
  7. イラン
  8. エジプト
  9. トルコ
  10. ナイジェリア
  11. メキシコ

ネクスト11は、地域にこだわらず、潜在的な経済規模の大きさや人口の多さに着目して選ばれている印象があります。

3-2.生産年齢人口の増加が顕著な国や地域への投資

新興国の強みの一つとして、生産年齢人口の多さが挙げられます。若者中心の人口比率は新興国の特徴の一つです。労働人口の増加は生産や消費につながり、根本的な経済成長を促します。

労働人口を多く抱え、これからの成長が期待される国々をピックアップしました(参考:経産省 新興国展開の重要性)。

インド

インドは新興国の中でも特に多くの労働人口を抱えており、今後の経済成長が期待されている国です。インドは中国と同様に、多くの海外資本を誘致して、世界の工場になろうとしています。多くの労働人口に支えられた生産力と、インドが得意とするITの力をもって、中国に次ぐ経済大国を目指しています。

南アフリカ

南アフリカは他国からの移民増加も相まって、急速な人口増加を続けています。39歳以下の人口が70%を占める(2020年、国連統計)など、生産年齢人口の多さも強みの一つです。

南アフリカは、ダイヤモンドや金の採掘で発展を遂げた鉱業に強みをもつ国ですが、近年では金融や保険のGDPにおける割合が飛躍的に高まっています。多くの労働人口をどのように生産につなげるかが今後の課題です。

インドネシア

外務省のデータによると、インドネシアの人口2億7千万人の人口は中国、インド、アメリカについで世界4位です(2020年)。若者中心の人口比率で、平均年齢は28歳。今後の長期的な生産力の増加が期待されています。

インドネシアは資源国です。原油や天然ガスなどの天然資源が豊富で、天然資源の輸出はインドネシア経済の基幹となっています。労働人口と消費の期待もあって、日本を中心に外国資本が積極的にインドネシアへ進出。さらなる経済成長を目指しています。

ブラジル

ブラジルの経済規模は世界9位。南米では最大の経済規模を誇っています(参照:外務省「ブラジル基礎データ」2021年6月9日時点)。主な産業は、豊富な鉱物資源です。鉄鉱石や銅、ニッケル、ボーキサイトの鉄鋼資源の輸出にて外需を獲得しています。農業大国の一面もあり、コーヒーや大豆、サトウキビの生産にも強みがあります。

天然資源や農産物の外需獲得と、多くの人口による国内消費のバランスをとることで、今後の経済成長が期待されます。

メキシコ

メキシコは原油や銀が豊富に算出される資源国です。北米自由貿易協定のもとにアメリカやカナダへ、車の輸出をおこなっています。

メキシコの人口は約1億2,600万人。平均年齢は29歳と若い労働力であふれています(2020年国勢調査による)。政情不安定な一面もありますが、豊富な天然資源と労働人口をうまく活用できれば、飛躍的な経済成長を遂げる可能性を秘めています。

3-3.豊富な資源を持つ新興国が多い

将来成長が期待される新興国には、豊富な資源を持っている国が多くあります。前述の労働人口が多い国の中でも、南アフリカ、インドネシア、ブラジル、メキシコは世界有数の資源国です。

資源の輸出による外需と、海外資本の誘致や国内産業による内需の両輪の運用が期待されるところです。将来性を視野にいれた新興国投資は、有力な分散投資先となるでしょう。

3-4.新興国ファンドのベンチマークは?

新興国インデックスファンドでベンチマークとされる一般的な指数は、MSCIエマージング・マーケット・インデックスです。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が定義した新興国の株式を対象としています。指数は時価総額ベースです。組入上位銘柄は、中国、韓国、台湾、インド、ブラジル等。

分散投資を行うときの指標として、多くのETFや投資信託のベンチマークとされています。

4.購入時に抑えておきたいポイント

新興国を投資対象としたファンドを購入する時に、確認すべきポイントを紹介します。

4-1.国や地域の組入比率

新興国の債券や株式は、先進国に比べてリスクが高くなります。新興国の中でも国によってリスクの度合いが異なるため、事前の確認が必要です。よくあるカントリーリスクの具体例は、内乱や体制変更、ハイパーインフレなどが挙げられます。

新興国ごとに内在するリスクの度合いが異なります。国や地域の組入比率を確認し、その国がもつリスクも確認しておきましょう。

4-2.地政学リスクや信用リスクの確認

中東では地政学リスクの高まりも念頭においておく必要があります。通貨選択型のファンドでは、カントリーリスクによる為替差損が基準価額へ影響することもあります。体制変更や経済不安定による債券のデフォルトにも注意が必要です。

新興国投資では、一旦リスクが顕在化するとかなりの速さで外国資本がマーケットから引き上げられる傾向があります。また、マーケットが世界規模で下降トレンドに入ったときも同様に、新興国マーケットから資本が引き上げられることがあるため、引き際の見極めも重要なポイントです。

まとめ

新興国は多くの労働人口を抱え、豊富な天然資源を持つ国が多くあります。大きな経済成長が期待しにくい先進国と対象的に、新興国はこれからの経済成長が期待できる点が特徴的です。特に、インドは数年前から中国と同じ道をたどると言われており、注目を受けています。

一方で、新興国は資本の流出入が激しく、マーケットが下落するときのスピードが速いため、世界のマーケットトレンドを常に把握しておく必要があります。世界的な下降トレンドに入った時は、迅速な対応が必要です。

積極的に成長株を求めて収益を狙いたい人は、新興国ファンドをポートフォリオに組み込むことを検討するのもよいでしょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。