DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、高速インターネットやAIなどを活用することにより、ビジネスや企業全体を変革(トランスフォーメーション)していくことを示しています。
これまでもパソコンの普及に伴いデジタル化が進んできましたが、今回のコロナ禍でテレワークの導入が進んだほか、オンラインでの授業や診療が導入されるなど様々な業界でIT活用・デジタル化が加速しました。
こうした状況下でDX関連企業の業績は好調ですが、旧来のアナログに依存している業種では売上が激減しました。コロナ以前の社会に完全に戻ることは考えにくく、今後もIT活用・デジタル化がさらに進むことが想定されます。
今回はDX関連銘柄に投資するメリット・注意点、主な銘柄について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 日本における DXとは
- DXまでの3ステップ
2-1.デジタイゼーション
2-2.デジタライゼーション
2-3.DX - 日本の現状と課題
- DX関連銘柄に投資するメリットと注意点
- 日本のDX関連銘柄5選
5-1.チェンジ(東証コード:3962)
5-2.Kaizen Platform(東証コード:4170)
5-3.Sun Asterisk(東証コード:4053)
5-4.セラク(東証コード:6199)
5-5.スマレジ(東証コード:4431) - まとめ
1 日本におけるDXとは
日本では、ビジネスにおけるDXについて経済産業省が「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
2 DXへの3ステップ
DXに到達するためには、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3つのステップをクリアする必要があります。1ステップずつ見ていきましょう。
2-1 デジタイゼーション
デジタイゼーションとは、業務のプロセスを変えずに一部のデータなどを単純にデジタル化することです。つまり、アナログのデジタル化のことです。例えば、紙の書類を電子化しデータベースにすることや、電子契約を導入することなどです。
2-2 デジタライゼーション
デジタライゼーションとは、デジタル技術でビジネスモデルを変革し、価値を生み出す過程のことです。例えば、音楽鑑賞はレコードからCDになり、現在では携帯電話やパソコンなどにダウンロードしたり、ストリーミングしたりして鑑賞するようになりました。また、定額料金を支払うことで制限なく音楽鑑賞ができるようなサービスも誕生しました。
デジタイゼーションは導入部分(デジタル化)のことですが、デジタライゼーションはデジタル技術を活用し、組織やビジネスモデルを変革することなのです。
2-3 DX
DXは、組織・カルチャーの変革により競争優位性を獲得することです。例えば、眼鏡やアパレル、化粧品などの業界では、店頭販売と並行し、ネット上でバーチャル試着、バーチャルメイクなどのサービスが広がりDXが進んでいます。
3 日本の現状と課題
日本でのDXは他先進国よりも遅れています。経済産業省が2020年12月に発表したレポートによると、国内企業の9割はDXに未着手・途上という状況にあります。
同省は、日本企業が市場で生き残るためにはDX推進が必要不可欠で、DXを推進することで競争力を確立することができるものの、進まない場合には企業の存続が危ぶまれる可能性があるとしています。また、DXが進まない場合、2025年から毎年最大12兆円の損失が発生すると試算し、「2025年の崖」問題として警鐘を鳴らしています。
この背景には、日本の基幹系システムの老朽化や、IT人材の高齢化による退職などがあります。2025年には21年以上稼働しているシステムが全体の6割にも達するとされています。また、多くのシステムがCOBOLという古いプログラミング言語で書かれていますが、この言語を取り扱えるエンジニアの多くが2025年までに定年を迎えてしまいます。そのため2025年以降、旧来のシステム維持が難しくなるのです。
2025年まで、執筆時点から約3年しかありません。日本企業が一丸となってDXを進める必要があります。
4 DX関連銘柄に投資するメリットと注意点
DX市場は拡大傾向にあり、成長性も見込める可能性があります。デジタル機器の高度化、新技術の開発などを背景に、DX関連産業の幅が広がることも考えられます。新たなマーケットを作ることもできるため、企業の成長期待が高く、第2、第3のマイクロソフトのような企業に投資できれば、株価が100倍以上に上昇する可能性すらあります。
株式会社富士キメラ総研の発表(2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望)によると、日本におけるDX市場の規模は、2019年度の7,912億円から2030年度には約3.8倍の約3兆円に拡大すると予想されています。
DX関連銘柄に投資する際の注意点としては、競争が激しいため企業の成長が鈍化し株価が急落する可能性があることが挙げられます。小型銘柄が多く、株価水準が割高な銘柄が多いためです。
そのため、複数の銘柄に投資することを心掛け、DX関連に集中的に投資することのないように注意しましょう。
5 日本のDX関連銘柄5選
日本市場のDX関連銘柄を5銘柄紹介します(2021年11月5日時点の情報です)。
5-1 チェンジ(東証コード:3962)
「生産性をCHANGEする」というビジョンを掲げ、企業や地方自治体へDX支援を提供している会社です。特に地方自治体向け事業の売り上げが高い企業です。
主な事業は、パブリック事業、NEW-ITトランスフォーメーション事業、投資事業の3つです。特に、パブリック事業は売り上げ全体の80%近くを占めています。パブリック事業では、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営しており、地方自治体向けにテクノロジーサービスを提供しています。
2021年7月には就活生の70%以上が利用するポート社と資本業務提携し、これまでは都市部中心だった就活関連事業に地方自治体と取り組むことで、地方でも東京と同様の就活サービスを提供することを目指します。
また、DX推進人材の育成をするITトランスフォーメーション事業は、売上の約20%を占めています。
株価は2,097円、予想PERが36.06倍、配当金は0円です。上場市場は東証1部で、時価総額は1,524億円です。
5-2 Kaizen Platform(東証コード:4170)
Kaizen Platformは、企業のDX推進を支援するプラットフォームとサービスを提供しています。ユーザーエクスペリエンス(UX)の改善に向けたコンサルタント事業のほか、企業のDX支援、動画作成事業を展開しています。
2021年12月期第2四半期累計売上高は、前年同期比40.8%増の10.49億円と好調でした。純利益はマイナス4,700万円と前年同期のマイナス5,800万円から改善しました。
大企業を中心に顧客を拡大し、2019年第1四半期の449社から約2年で2倍の956社となりました。
株価は890円、予想PERが87.7倍、配当金は0円です。上場市場はマザーズで時価総額は141.7億円です。
5-3 Sun Asterisk(東証コード:4053)
Sun Asteriskは、DX支援、人材派遣・紹介を業としています。自社でデジタル人員を雇用していることが特徴的です。
2021年12月期第2四半期の業績は、売上高が前年同期比34.7%増の36.32億円、純利益は43.5%増の7.18億円と順調でした。上場市場はマザーズで、株価は2,413円、予想PERが91倍、配当金は0円、時価総額が909億円です。
DX人材は不足しており、今後は企業のDX推進とともに需要増が予想されることから、同社にも追い風が吹いています。
5-4 セラク(東証コード:6199)
セラクは、インターネット関連のビジネス支援サービスを展開しています。創業は1987年12月で、DX関連企業としては歴史のある会社です。現在は、ITを用いた農業生産サポートや、ITインフラ基盤の構築・運用やクラウドテクノロジー、社会の未来を変革するスマートテクノロジー技術の研究・開発など業務請負から派遣、ハードウェアの開発などを行っています。
2021年8月期通期決算は、売上高が前年同期比10.8%増の150.2億円、純利益が89.7%増の9.57億円と好調でした。
株価は2,146円、予想PERが23.9倍、予想配当金は86円です。上場市場は東京1部で時価総額は298億円です。
5-5 スマレジ(東証コード:4431)
スマレジは、小売店向けクラウド型POSシステムを提供しています。売上管理、データ集計・分析が可能なため、飲食店や小売店でのキャッシュレス化を背景に、契約数が増加傾向にあります。
特に地方では、クラウド型POSシステム導入が遅れているため、市場は拡大傾向にあります。2022年4月期第1四半期の決算は、売上高が前年同期比28.7%増の9.2億円、純利益は58.4増の1.49億円でした。
株価は3,790円、予想PERが177倍、配当金は0円です。マザーズ上場で、時価総額は742億円です。
まとめ
日本では2025年の崖をまえに、国内企業の9割はDXが進んでいない状況にあります。
IT活用・デジタル化の波は今後も続くと予想され、加えて国策として行政のデジタル化や地方都市も含めたITインフラ整備が計画されていることから、日本企業のDXが進むと考えられます。DX銘柄への関心、注目度はさらに高くなるでしょう。
DX関連株は、成長期待が高いものの株価変動が大きな銘柄が多いため、投資する際には分散投資を心掛けるようにしましょう。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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