チャイナリスクと日本市場の動向・関係性は?日本企業への影響も

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中国のGDPは米国に次ぐ世界第2位の規模です。日本と中国との貿易額においては、2022年の貿易統計(速報)によると日本から中国への輸出が約19兆円、中国からの輸入が約24.8兆円と、日米の貿易額(輸出:約18.2兆円、輸入:約11.7兆円)を上回っています。

日本にとって中国は最大の貿易相手国で、中国への依存度が高まっています。しかし、中国政治の腐敗や不透明性、所得格差、国境問題など、中国は様々な問題を抱えています。これらが問題は市場にとってのリスク要因となることがあります。

そこで今回は、中国のカントリーリスク(チャイナリスク)と日本市場の動向・関係性や注目業種について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年2月14日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. チャイナリスクとは
    1-1.国内政治リスク
    1-2.米国の制裁によるリスク
    1-3.軍事衝突リスク
  2. 日本企業・業種への影響は?
    2-1.半導体業界
    2-2.機械業界
    2-3.小売り・旅行関連
  3. まとめ

1 チャイナリスクとは

チャイナリスクは、企業が中国国内で経済活動を行うリスクの意味として使われる傾向があります。具体的に、どのようなチャイナリスクがあるのか見ていきましょう。

1-1 国内政治リスク

国内政治リスクとは、主に中国政府によるルール変更(法改正)です。中国の場合、ルール変更はしばしば突然変更され、混乱の材料となります。直近では、IT、教育、芸能、不動産など多岐にわたりルールが変更され、国内外企業共に混乱し、市場に影響がでました。

1-2 米国の経済制裁によるリスク

米国の経済制裁によるリスクも挙げられます。米国にとって中国は、米国第一主義の脅威となっています。中国の経済成長率は高く、米国にとって無視することができない存在となっています。

そこで、米国は、中国にアメリカ製品の輸入拡大・市場開放を求め、さらに対中技術移転の抑制を柱とした制裁を課しているのです。特定の中国企業との取引を禁止したほか、軍需転用可能な先端技術の輸出規制も実施しています。

特に、半導体関連においては厳しい対応をしており、中国への半導体製造装置の輸出規制を強化しています。米国は米企業だけではなく、同盟国にも足並みをそろえるように働きかけ、半導体製造装置メーカーを有する日本とオランダがこの取り組みに参加する予定です。

1-3 軍事衝突リスク

南シナ海、尖閣諸島、台湾など様々な地域で、米中間の軍事衝突リスクが高まっています。習近平国家主席が2022年10月の中国共産党大会の場で、台湾への武力侵攻の可能性を示唆し、党最高規則である党規約に「台湾独立を断固反対し、抑え込む」という文言を加えました。米バイデン政権は台湾独立を容認しているため、両国間の緊張が高まっています。

南シナ海では、中国が人工島建設を進め、領土を拡大しようとしています。南シナ海を制し海上交易の要衝を支配することで貿易を有利にする目的があるほか、人工島を作ることで周囲200海里の資源保有を認めさせることが目的だと考えられます。領有権をめぐっては米中を超えた国際問題化しており、リスクの一つと言えます。

2 日本企業・業種への影響は?

中国は、日本にとって最大の貿易相手国であるため、チャイナリスクは幅広い業種に影響が出ます。大きな影響がある業種を見ていきましょう。

2-1 半導体業界

米国の経済制裁により大きな影響を受けるのは半導体業界です。

米商務省産業安全保障局(BIS)は2022年10月に中国への半導体関連の輸出規制を発表しました。輸出規制の対象には、スーパーコンピュータ関連製品や先端技術を採用した半導体などが含まれています。BISは多国間で継続して規制を実施する必要があるとし、同盟国政府にも足並みを揃えるように求めています。

世界の半導体製造装置市場は、首位が米アプライドマテリアルズ、2位がオランダのASML、3位が日本の東京エレクトロンとなっています。東京エレクトロンの中国への売上比率は約25%と高く、米中対立の煽りを受ける可能性が高まっています。

2-2 機械業界

機械業界には、サプライチェーンの混乱リスクがあります。

新型コロナに伴う様々な規制の緩和が世界各地で進むなか、中国政府はゼロコロナ政策を維持したため、中国国内の経済活動が止まってしまいました。そのため、日本では大手自動車メーカーなどで部品調達ができなくなり、国内工場を稼働停止せざるを得ない状況に追い込まれました。

自動車業界以外でも繊維・衣料、情報通信機械、住設機器などの幅広い業界に影響が及びました。今後も、チャイナリスクを背景に供給網が滞れば、同様のリスクが顕在化・発生する可能性があります。

2-3 小売り・旅行関連

小売り業界においては、中国での不買運動のリスクがありそうです。

ユニクロの製品が、新疆ウイグル自治区での強制労働問題が米国の輸入禁止措置に違反したとして、米国で輸入が差し止められました。

新彊ウイグル自治区でウイグル人等少数民族が綿栽培労働に従事させられているとの疑惑が浮上し、中国国内でこの綿の不使用を表明した外国企業を批判する動きが不買運動につながり、ました。ユニクロやH&Mなどでも不買運動が起きました。

ユニクロを経営するファーストリテイリングの中国での売上は、同社売上全体の約21%を占めており、こうした問題の影響を今後も受ける可能性があります。

訪日中国人による日本国内での購買活動なども回復が鈍い状況です。日本政府は外国人観光客の受け入れを再開しました。2019年に3,188万人だった訪日外国人は、2021年には24万人まで激減。2022年には、訪日外国人の一部受け入れにより381万人まで回復しました。

外国人観光客の受け入れを再開したことで、外国人による日本での消費増が期待されています。観光庁によると2019年年間の訪日外国人旅行客消費額は4兆8,135億円でした。国籍・地域別の旅行消費額は中国が1兆7,704億円(36.8%)で、2位の台湾5,517億円の約3倍に相当します。

ただし、2023年2月14日時点では、中国からの入国者に対して水際対策措置が行われており、中国からの訪日観光客数は伸び悩んでいます。政府は同月下旬を目途に水際対策の緩和を検討しているものの(参照:読売新聞「中国からの入国、水際緩和2月下旬にも…全員検査から抽出に」、今後も日米・日中関係によっては訪日中国人による消費が落ち込む可能性があります。

まとめ

中国はGDP世界第2位の大国で、日本の貿易相手国として最大です。そして中国本土には日本の多くの企業が進出しています。チャイナリスクによる日本企業への影響は決して小さくありません。

状況によっては、その影響は幅広い業界に及ぶ可能性があります。日本の政治的決断によっても影響度が変わります。

加えて米国が半導体規制において同盟国である日本に足並みを揃えるよう求めており、日本がこれに同調した場合には、中国依存度の高い半導体関連企業の業績悪化に繋がりかねません。

チャイナリスクは日本の多くの業界、企業への懸念材料と言えます。一方で、数々の懸念材料が払拭され中国経済・外交が正常化するほど、世界経済のボトルネックが解消され、日本企業にも良い影響がありそうです。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。