2023年11月現在、日米で四半期決算発表が続く中、株式市場では株価が乱高下しています。自動車メーカーでは、好決算を発表したトヨタ自動車の株価は上昇し、一方で、テスラの株価は急落しました。
本稿では、投資のプロである筆者が、トヨタとテスラの決算内容や、自動車各社の株価を比較分析・解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2023年11月9日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- トヨタとテスラの売上高推移
- トヨタとテスラの利益率推移
- 株価の反応
- 自動車メーカー大手5社本田技研工業、日産、SUBARU、GM、フォルクスワーゲンの相対比較
4-1.PER、PBR、配当利回り比較
4-2.利益率比較
4-3.注目企業 - まとめ
1.トヨタとテスラの売上高推移
トヨタの2024年3月第2四半期決算での売上高は11.43兆円と、前期比8.4%増加しました。四半期ベースでの売上を順調に伸ばしています。トヨタは営業利益の通期見通しを3兆円から1.5倍の4.5兆円に引き上げました。
参照:トヨタ自動車株式会社「有価証券報告書・四半期報告書」」
一方、テスラの売上高は233.5ドル(前期比6.33%減)でした。2022年9月期の成長率が26.69%だったので勢い喪失しています。
参照:EDGAR「EDGAR Entity Landing Page」」
テスラとトヨタの四半期売上高
年月 | テスラ(百万ドル) | トヨタ(百万円) |
---|---|---|
2023/9/30 | 23,350 | 11,434,786 |
2023/6/30 | 24,927 | 10,546,831 |
2023/3/31 | 23,329 | 9,690,265 |
2022/12/31 | 24,318 | 9,754,685 |
2022/9/30 | 21,454 | 9,218,232 |
テスラとトヨタの四半期売上高成長率(%)
年月 | テスラ(%) | トヨタ(%) | 2023/9/30 | -6.33 | 8.42 | 2023/6/30 | 6.85 | 8.84 | 2023/3/31 | -4.07 | -0.66 | 2022/12/31 | 13.35 | 5.82 | 2022/9/30 | 26.69 | 8.60 |
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2.トヨタとテスラの利益率推移
2社の売上高利益率と純利益率について見ていきましょう。
2022年9月期のトヨタの売上高利益率は15.44%と、テスラの25.09%を大きく下回っていました。しかし、2023年6月期にトヨタの利益率がテスラを上回り、2023年9月期には20.73%と、前年同期比5.29%上昇しました。
一方、テスラの売上高利益率は、低下傾向が鮮明です。2022年9月に25.09%だった利益率は、2023年9月には17.89%に低下しました。
純利益率についても、トヨタの純利益率は2022年9月期に5.00%だった一方で、2023年6月期には10%台に乗せ、2023年9月期は11.54%と、上昇傾向にあります。円安の影響や収益改善の努力の結果、通期見通しを大幅に上方修正しました。
一方、テスラは低下傾向が鮮明です。2022年9月期は15.34%だった純利益率は、2023年9月には7.94%とほぼ半減しました。同社は2023年1月以降、値下げを実施しており、値下げに伴う利益率低下が鮮明化しています。
テスラの売上高と純利益、純利益率
年月 | 売上高(百万ドル) | 純利益(百万ドル) | 純利益率(%) | 2023年9月 | 23,350 | 1,853 | 7.94 | 2023年6月 | 24,927 | 2,703 | 10.84 | 2023年3月 | 23,329 | 2,513 | 10.77 | 2022年12月 | 24,318 | 3,687 | 15.16 | 2022年9月 | 21,454 | 3,292 | 15.34 |
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トヨタの売上高・純利益・純利益率
年月 | 売上高(百万円) | 純利益(百万円) | 純利益率(%) | 2023年9月 | 11,434,786 | 1,320,631 | 11.54 | 2023年6月 | 10,546,831 | 1,326,890 | 12.58 | 2023年3月 | 9,690,265 | 552,200 | 5.69 | 2022年12月 | 9,754,685 | 744,566 | 7.63 | 2022年9月 | 9,218,232 | 461,303 | 5.00 |
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3.株価の反応
好決算のトヨタの株価が上昇する一方、テスラは下落しました。
テスラの決算前日の株価は254.85ドルでしたが、決算内容を受け株価が売られ、10月末には一時200ドルを下回る場面がありました。一方、トヨタの株価は好決算を好感し、株価が上昇に転じました。
予想PERはトヨタの9.5倍に対しテスラは65倍、配当利回りはトヨタが2.25%、テスラは配当を実施していないためゼロ%です。2社の株価を比較すると、トヨタに割安感があり、今後も上昇する可能性が高いと言えそうです。
4.自動車メーカー大手5社本田技研工業、日産、SUBARU、GM、フォルクスワーゲンの相対比較
自動車メーカー大手5社、本田技研工業、日産、SUBARU、GM、フォルクスワーゲンの株価を相対比較し、割安な銘柄を解説します。
4-1.PER、PBR、配当利回り比較
自動車メーカーの本田技研工業、日産、SUBARU、GMとフォルクスワーゲンを取り上げました。
まず、株価水準を比較するためにPERを見ていきましょう。本田技研工業、日産、SUBARUに対し、GMはフォードとフォルクスワーゲンが4倍台と割安感があります。
PBRはいずれの銘柄も1倍を下回っています。なかでもフォルクスワーゲンのPBRは0.35倍と株価に割安感があります。
次に、配当利回りを比較してみると、フォルクスワーゲンが7.43%で他社を大きく上回っています。ただし、自動車販売の約40%を依存している、中国での市場シェア低下に見舞われています。
中国での販売不振が、株価を低迷の要因です。フォルクスワーゲンへの投資を検討する場合は、中国経済の先行きが不安定であることも考慮しましょう。
各社のPER・PBR・配当利回り
企業名 | PER(倍) | PBR(倍) | 配当利回り(%) | 本田技研工業 | 9.13 | 0.65 | 3.18 | 日産 | 8.33 | 0.43 | 2.52 | SUBARU | 8.46 | 0.98 | 2.84 | GM | 4.04 | 0.53 | 1.29 | フォルクスワーゲン | 4.21 | 0.35 | 7.43 |
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4-2.利益率比較
今回取り上げた自動車メーカーは、売上高利益率が17%から20%前後、純利益率が3%台から12%であり、純利益率に大きな差が生じています。
本田技研工業の売上高利益率は21.55%、純利益率が7.85%と他社を上回っています。一方、日産の純利益率は3.61%と他社を大きく下回っています。
各社の利益率
売上高利益率(%) | 純利益率(%) | 本田技研工業 | 21.55 | 7.85 | 日産 | 17.05 | 3.61 | 富士重工 | 18.57 | 6.73 | GM | 18.78 | 6.94 | フォルクスワーゲン | 17.00 | 5.11 |
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4-3.注目企業
投資のプロである筆者としては、PER、PBR、配当利回り、利益率を考慮すると、今回取り上げた企業の中では、本田技研工業に注目しています。
東京証券取引所はPBRが1倍を下回る上場企業に対し、株価水準を引き上げるための具体策の開示を求めています。
今回取り上げた日本企業のPBR水準は、いずれも1倍を下回っており、今後、株価水準が引き上げられる可能性があります。特に、本田技研工業の利益率や配当利回りは、今回比較した他の自動車メーカーよりも高くなっています。
5.まとめ
2023年11月現在、決算発表を受け、株式市場ではトヨタとテスラの明暗が分かれました。
トヨタの株価は、好決算を受け順調に推移する一方、テスラは利益率の低下が株価の足を引っ張っています。テスラの純利益率の低下は著しく、2023年9月期は7.9%と、前年同期の15.3%から大きく低下し、トヨタが逆転しています。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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