IBMがブロックチェーンで実現する、消費者とコーヒー豆生産者をつなげるアプリとは

※ このページには広告・PRが含まれています

多くの人が日常でコーヒーを楽しむ中、コーヒー豆がどのような生産者によって生産されているのか、詳しく知ることは難しいのが実情です。特に、多くのコーヒー豆は経済的に豊かとは言えない地域の小規模農家によって生産されています。

そんな中、スイスのファーマーコネクト(Farmer Connect SA)はIBM社のブロックチェーン技術を利用した「ThankMyFarmer」というトレーサビリティプラットフォームを提供しており、2021年10月から日本でも利用できるようになりました。

ここでは「ThankMyFarmer(サンク・マイファーマー)」について詳しく解説します。

目次

  1. 「ThankMyFarmer」の機能とは
  2. コーヒー豆農家の厳しい現状
  3. コーヒー消費者向けのアプリ「Thank My Farmer」
  4. 今後はより広域にトレーサビリヒティを展開
  5. Farmer Connect社とは
  6. 伊藤忠商事がFarmer Connect SA社へ出資、業務提携
  7. まとめ

①「ThankMyFarmer」の機能とは

スイスのファーマーコネクト(Farmer Connect SA)が提供する、ブロックチェーンを利用したコーヒー豆のトレーサビリティプラットフォーム 「ThankMyFarmer」。

このプラットフォームを使用すると、消費者はコーヒーやカカオ製品のパッケージにあるQRコードをスキャンすることで、その商品の原産地や品質、さらには生産者の情報まで確認することが可能となります。また、「産地支援プログラム」という名のもとに、消費者が寄付をすることで産地の持続可能な取り組みや地域の支援活動へ貢献することもできます。

日本向けには、「専門家のコーヒーレビュー機能」や「コーヒー豆の知識クイズ・ゲーム大会」などの追加機能も設けられています。「ThankMyFarmer」はIBMの「IBM Food Trust」を基盤に開発され、その技術基盤として「Hyperledger Fabric」が使用されています。

なお、日本で最初にこのプラットフォームを取り入れたのは千葉県船橋市の「PHILOCOFFEA」というコーヒー会社で、現在は9種類のコーヒーが「ThankMyFarmer」に対応しています。

②コーヒー豆農家の厳しい現状

一般的なコーヒー消費者は、コーヒーがどのように生産されているかや、農家の日常について詳しく知る機会が少ないのが現状です。

コーヒー農家の生活はコーヒー豆の価格変動に大きく影響され、価格の低迷時には収入が非常に厳しいものとなります。2018年のデータによると、コーヒー栽培の平均収益率はマイナス2%で、小規模農家の平均年間世帯収入は3,000ドルを下回っているとのことです。例えば、コーヒーショップで500円で販売される1杯のコーヒーに対して、農家が受け取る収入はおおよそ5円程度と言われています。

③コーヒー消費者向けのアプリ「Thank My Farmer」

Thank My Farmerは、手軽にスマートフォンで利用できるアプリです。2020年1月には、IBM、Farmer Connect、大手食品メーカーJ.M. スマッカーを含むコーヒー業界の代表的なメンバーが、このブロックチェーンアプリを公開しました。

出典:IBM

アプリを通じて、ユーザーは自分が飲んでいるコーヒー豆の詳細や、どのように栽培・調達されたのかを確認できます。また、小規模農家の生活改善支援プログラムへの寄付機能も搭載されています。実際、このアプリを通じて資金調達が成され、農家の支援が行われています。すでにアプリを通じてコーヒー農家へすでに資金調達を完了し、実際に生活改善支援をスタートしているプログラムも存在しています。コーヒー豆の栽培を今後も継続するにも、応援者による資金提供は重要なポイントと言えます。

2020年7月、J.M. スマッカー社は、Farmer Connectをベースにした新サービスを開始しました。1850ブランドの100%シングルオリジン・コロンビアコーヒーのパッケージにQRコードを採用。これにより、アメリカのコーヒー愛好者は、自分の飲んでいるコーヒーの起源や、それをサポートするプロジェクトの詳細を知ることができるようになりました。

④今後はより広域にトレーサビリヒティを展開

現在のトレーサビリティは、コロンビア産の100%シングルオリジンに特化しています。しかし、今後は多様なシングルオリジンコーヒーや、さらに多くのブレンドコーヒーにも展開予定です。ブロックチェーンの活用で、多くのコーヒー農家と直接的につながることが期待されています。

IBMは「Thank My Farmer」を、遠くの小規模コーヒー農家と消費者をつなぐ新しい形の経済、ギフトエコノミーの一例と位置づけています。このような取り組みは、様々な業界や地域に波及し、従来の経済観念を革新させる可能性を秘めていると考えられています。

⑤Farmer Connect社とは

スイス・ジュネーブに拠点を持つFarmer Connect社は、テクノロジーを活用して人々の消費行動を変革することを目指しています。2021年3月には伊藤忠商事からの出資と業務提携を受けており、世界のコーヒー業界の大手とも連携しています。ブロックチェーン技術を活用して、コーヒーやカカオのサプライチェーンをより透明にし、持続可能にすることを目標としています。

⑥伊藤忠商事がFarmer Connect SA社へ出資、業務提携

2021年3月、伊藤忠商事は、Farmer Connect SA社への出資と業務提携を公表しました。この提携により、約9.7億円の資金調達が行われました。Farmer Connect SA社が開発した「FARMER CONNECT」は、ブロックチェーンを利用してコーヒー豆の情報をリアルタイムで追跡できるプラットフォームです。これにより、消費者は購入したコーヒー豆の生産過程を把握でき、サプライチェーンの透明性が確保されます。

発展途上国でのコーヒー豆生産に関連する様々な課題に取り組むため、FC社は消費者が直接プロジェクトへ参加できる方法も提供しています。伊藤忠商事は、この取り組みを他の食品にも拡大する考えを持っています。

⑦まとめ

多くのコーヒー豆は発展途上国で生産されますが、その収益の多くは生産者の手元に残っていません。ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの取り組みにより、消費者と生産者の間の距離を縮め、支援の気持ちが芽生えやすくなることを期待しています。すでに米スターバックスなど一部の企業で取り組みが始まっており、これをきっかけに、私たちの日常の選択が生産者の生活を少しでも良くする方向に進めればと思います。

The following two tabs change content below.

立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。