AIや機械学習関連のファンドは社会インフラのIT化が進むにつれて、ここ数年大きな関心を集めています。注目のファンドに投資してみたいけど、AIや機械学習のことがよくわからない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、AI・機械学習の概要から、ファンドに投資するメリットや注意点などを解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年11月12日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- AI・機械学習のテクノロジーが社会に与える影響
1-1.AI・機械学習とは
1-2.AI・機械学習の実用事例 - AI・機械学習関連ファンドへ投資する理由
2-1.未来の社会インフラの根幹になる
2-2.注目度の高さ - AI,機械学習関連ファンドへ投資する際の注意点
3-1.アクティブファンドが多い
3-2.テクノロジー株の暴落 - AI・機械学習関連ファンドを選ぶ時に見るべきポイント
4-1.純資産額と資産の増減
4-2.構成銘柄
4-3.手数料
4-4.分配金の頻度 - AI・機械学習関連のファンドトップ5
- まとめ
1.AI・機械学習のテクノロジーが社会に与える影響
AI・機械学習は交通や製造、暮らしなど社会の基盤となる重要なインフラに少しづつ取り入れられています。ここ最近よく耳にするDXやスマートシティには、AI・機械学習のテクノロジーは欠かせないものです。
AI・機械学習とはどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
1-1.AI・機械学習とは
AIと機械学習は一括で言われることが多いのですが、厳密にはAIと機械学習は異なるものです。大きなAIのカテゴリーの中に機械学習が存在し、機械学習のカテゴリーにディープラーニングが存在する、という階層が形成されています。
AIの袋の中に機械学習の袋が入っていて、機械学習の袋の中にディープラーニングが入っているイメージです。
機械学習が取り入れられたツール
機械学習とは、コンピューターにデータを読み込ませて、規則に基づいて分析をさせる仕組みのことです。ビックデータなどの参考例をもとに、パターンなどを読み込ませて、一定の特徴やパターンなどを学習します。パターン化はコンピューターの得意技です。
身近な機械学習の例は、Gmailの予測返信や、メールの内容と挙動が相違している時(「添付します」という文章があるのにファイルを添付していないなど)のアラートなどがあります。
製造業で活躍するAI
日本国内で最もAI化が進んでいる業界の一つは製造業です。現代ではスマートファクトリーという言葉があるように、大手企業の工場では大幅にAI化が進められています。IOTと機械学習の特性を生かした異常検知は、製造過程の中でもAIの強みを生かした革新技術です。
今までは人の感覚を頼りに商品の異常を見つけていましたが、機械学習の進化によって省人化を実現できました。AIの進化によって、人は得意とする複雑な業務に集中して携わることができるようになりつつあります。
他には、余剰生産を産まないための在庫管理にも、AIのテクノロジーが活かされています。
DX化との関係
DXの概念には、AIと機械学習のテクノロジーは欠かせません。DXの概念を実現し、社会インフラにITを浸透させるには、AIや機械学習のテクノロジーは非常に重要な要素です。人間よりもAIのほうが優れている分野は、画像認識、音声認識、言語のテキスト処理などで、ある程度パターン化ができるものに対して効力を発揮します。
DXの根幹をなすものは、ITを前提とした仕組みの構築による生産性の向上や、生活をより快適にするという点がありますが、AIをうまく活用できれば、多くの理想を実現することができると見込まれています。
1-2.AI・機械学習の実用事例
AIや機械学習のテクノロジーを活用したサービスには以下のようなものがあり、スマートシティ化にも貢献しています。
- 音声アシスタント
- ライドシェア
- 医療分野での発熱検知
GoogleやAmazon、Appleなどが開発しスマートフォンやスマートスピーカーに搭載している音声アシスタント機能は、機械学習のテクノロジーにより学習を重ね、使い込むほど精度を増していく特徴があります。スマート家電との連携は、生活を便利にするテクノロジーの代表ともいえるでしょう。
Uberなどのライドシェア(ライドヘイリング)は、車に乗りたい人と、お客さんを探しているドライバーをマッチングするサービスです。乗りたい人が行きたい場所をアプリに入力すると、近くのドライバーがすぐに駆けつけてくれて、行き先を告げることなく、そのまま運んでくれる便利なサービスです。
UberはGrafuと呼ばれる経路検索エンジンにAIを取り入れてUberサービスを実現し、日本では飲食デリバリーにも応用されています。
医療分野では、診療や看護の記録、AIによる問診、心電図の傾向から見る急変の予測など、AIは幅広く活用されています。最近目立つのは、発熱感知のシステムです。大勢の中から発熱した人をピックアップするテクノロジーは、AI分野ならではの挙動です。
2.AI・機械学習関連ファンドへ投資する理由
投資信託には数多くのファンドが存在しますが、その中でもAI・機械学習関連のファンドに投資を検討する理由を解説します。
2-1.未来の社会インフラの根幹になる
AI・機械学習のテクノロジーは、今後のIT化の流れを受けて社会インフラに欠かすことができない基幹テクノロジーとなるでしょう。
DXには、テクノロジー開発のほかに、ハード面の拡充による部品の製造も必要となり、DXに伴うテクノロジーの経済規模は年々拡大していくと見られています。海外では人々の生活にスマートシティを浸透させる実証実験もさかんに行われており、日本国内では、経済産業省によるDX推進が本格化しています。
世界全体の潮流を考えると、未来の社会インフラの主役はITとなり、その中でもAI・機械学習の分野は重要な位置を占めることになるでしょう。
2-2.注目度の高さ
AI・機械学習をテーマとしたファンドは先進テクノロジーへの投資という意味合いでも注目されています。AI・機械学習関連ファンドは、自動運転、ロボティクス、フィンテック、VR、セキュリティ、IoTなどで構成されており、中でもIoTや自動運転などは生活の中でも身近に感じられるAIテクノロジーです。
フィンテックの分野においてはAIによる資産運用の実証実験がすでに実現しており、ファンドマネージャーいらずのAI運用ファンドも関心を集めています。
3.AI・機械学習関連ファンドへ投資する際の注意点
先進テクノロジーであるAI・機械学習関連ファンドへの投資は、多くの可能性を感じることができますが、気をつけるべきポイントもあります。
3-1.アクティブファンドが多い
AI・機械学習関連のファンドにはアクティブファンドが多く見られます。
アクティブファンドはつど最適な銘柄構成を組みつつ、ベンチマークとする指標より高い収益を目指すファンドです。したがって、方針によっては、ファンド間の運用成績に差が生じる可能性があります。インデックスファンドの長期投資と比べてリスクが高いため、月次レポートにて運用成績を確認し、こまめに状況を把握しておく必要があります。
アクティブファンドは、インデックスファンドと比べて手数料も高めなので、運用内容と合わせて信託報酬や過去の成績などもしっかり確認しておきましょう。
3-2.テクノロジー株の暴落
GAFAのような巨大IT企業が国家から規制を受けるようなことがあれば、関連する会社にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
GAFAを始めとする巨大IT企業には、多くの会社が関連しており、もしGAFA発の暴落が起こるとかなりの影響を覚悟しなければいけません。実際に、2021年には米国議会でGAFAへの規制案が提出されていますので(参照:JIJI.COM「米上院でもGAFA規制法案 超党派で提出」)、このようなニュースには注目しておくべきです。
4.AI・機械学習関連ファンドを選ぶ時に見るべきポイント
AI・機械学習関連ファンドを選ぶ時に見るべきポイントを4点紹介します。
4-1.純資産額と資産の増減
純資産は主に運用成績や取り巻く環境の変化によって増減します。注目ポイントは、純資産の流出です。
運用成績がよく、多くの資産が流入している時に注目して買い付けるのも良い方法ですが、ファンドが多くの純資産を失っている時に注目し、その原因を追求してみましょう。原因が分かるとファンド運用の本質が見えてきますので、ファンド選びの有力な判断材料となります。
4-2.構成銘柄
ファンドごとに構成銘柄を確認すると、テクノロジー関連の大型株投資にポートフォリオが似ているものから、あまり聞いたことがない企業が構成銘柄の上位を占めているファンドもあります。よりテクノロジーの深い分野に投資したいのか、大型株を中心に幅広く投資したいのか、事前にテーマを考えておくといいでしょう。
4-3.手数料
AI・機械学習関連のファンドは先述の通りアクティブファンドが多いため、平均的に手数料がやや高めです。SBI証券で純資産総額ランキングの上位ファンドを確認してみたところ、信託報酬は1.6%から1.8%のケースが多くみられました。日経225やTOPIX、S&P500などのインデックスファンドに比べると割高です。
ファンドを保有している間かかり続ける信託報酬は無視できない運用コストとなりますので、事前の確認は重要です。
4-4.分配金の頻度
年1回か2回の決算で分配金を出すファンドが多く見られますが、毎月分配金を出しているファンドに投資する時は、分配再投資なしのグラフを確認してみましょう。再投資のグラフと比べて下がり続けている場合は、特別分配金が出ている可能性があります。
特別分配金は元本払戻金ともいい、その名の通り投資元本の一部を投資家に払い戻すものなので、再投資効果が削がれてしまうデメリットがあります。特別分配金の金額が許容できる範囲なのか、事前に確認しておきましょう。
5.AI・機械学習関連のファンドトップ5
SBI証券の取り扱いファンドより、純資産総額順に並べてみました(2021年9月25日時点、信託報酬は全て税込)。
タイプ違いの三井住友DS-グローバルAIファンドが上位を占めており、運用の好調さを伺わせます。信託報酬がやや高い点には注意が必要です。
ファンド名 | 純資産(百万円) | 基準価額 | 騰落率/トータルリターン | 信託報酬 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年 | 3年 | ||||
三井住友DS-グローバルAIファンド | 431,610 | 38,812 | 10.00% | 54.43% | 33.75% | 1.93% |
三井住友DS-グローバルAIファンド(予想分配金提示型) | 262,819 | 14,151 | 9.15% | 50.86% | ー | 1.93% |
三井住友DS-グローバルAIファンド(為替ヘッジあり予想分配金提示型) | 92,892 | 13,961 | 6.02% | 45.09% | ー | 1.93% |
大和-ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド-AI新時代-(為替ヘッジなし) | 72,717 | 18,698 | 17.55% | 43.77% | 21.54% | 0.82% |
三井住友DS-グローバルAIファンド(為替ヘッジあり) | 68,429 | 32,306 | 6.54% | 47.86% | 32.48% | 1.8051%程度 |
まとめ
先進テクノロジーへの投資は、資産運用の上でも成長メリットを享受できる期待があるものです。
AIが今後社会インフラの根幹となってIT化が進められることを考えると、AI・機械学習関連のファンドにもより注目が寄せられるでしょう。しかし、AI・機械学習関連のファンドはテーマの注目度やITのイメージから将来性がありそうに思えますが、リスクがインデックスファンドに比べて高いアクティブファンドが多い点には注意が必要です。
各ファンドによってAI、IoT、DXなど細かいテーマが異なり、構成銘柄にも違いがありますので、買付前に目論見書をしっかりと確認しておきましょう。
sayran
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