IT技術の進化により、AI(人口知能)が様々な業界で活用されるようになりました。金融業界ではクレジットカードの不正利用検知やAIによる資産運用、製造業では適正在庫の管理、広告業界のターゲットを絞り込んだデジタル広告などで利用されています。
日本では2021年9月にデジタル庁が設置され、政府によりDX(デジタルトランスフォーメーション)が推し進められています。株式市場でもAI関連銘柄に関心が集まっています。
そこで、今回は日本企業を中心にAI業界のシェア上位銘柄について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年8月12日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- AIとは
- AI業界とは
- AI業界の区分と関連企業
3-1.スーパーコンピュータ製造
3-2.AIソフトウェア開発
3-3.AIのハード提供 - 日本におけるAI業界と企業
- 日本企業のAI関連特許件数
- まとめ
1 AIとは
コンピュータの性能が大きく向上し、コンピュータ自身が学ぶ(機械学習)ことができるようになりました。人間のような知能を持ったコンピュータが判断や推測をする技術がAIです。
2 AI業界とは
AIは医療、金融、製造業・流通業などあらゆる分野で導入が進んでいます。AIには、大量のデータを処理するコンピュータが必要です。機械学習をはじめとしたAI技術は、物体認識を活用する自動運転や医療画像診断、画像認識を活用する顔認識など幅広い分野で活用されています。
3 AI業界の区分と関連企業
ここでは、AI業界をハード面とソフト面に分け、関連企業について解説します。
3-1 スーパーコンピュータ製造
AIにはスーパーコンピュータ(スパコン)が欠かせません。2022年5月時点で、計算速度がもっとも速いスパコンは、米国のヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)とAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)が開発したフロンティアで、2位が日本の富岳です。
フロンティアの計算速度は1秒110.2京回(富岳:44.2京回)と富岳の約2.5倍の速さです。
まず、これら3社を解説します。
HPE
HPEは2015年にヒューレット・パッカードの会社分割により誕生し、企業向けのハードウェアの製造や開発を行っています。
2021年度の売上高は277.8億ドル(前年比2.97%増)、一株当たり利益が1.57ドルで、株価は14.51ドル、PERは9.23倍、配当利回りが1.57%です。
2022年に入り、株価は下落基調だったものの、7月に安値12.67ドルを付けたのち、下値を切り上げています。
AMD
AMDは半導体製造会社で、ライバル会社としてはインテルが挙げられます。AMDとインテルのCPUを比べると、AMDはプログラミングや科学技術計算、インテルはゲームやノートパソコン向けを得意としています。
2021年度の売上高は164.34億ドル(前年比68.3%増)、予想EPSが4.37ドル、株価98.45ドルで、予想PERは22.45倍です。配当は実施していません。
パソコン需要が減少している影響を受け、株価は2021年末比で約30%下落しています。
富士通(6702)
富士通はITサービス分野で日本第1位(世界第10位)です。法人向けには、クラウドやセキュリティ、AIなど最先端のサービスやハードを提供しています。
富士通が関わったスパコンには、富岳と紫峰が挙げられます。富岳は、International Supercomputing Conference (ISC 2020)でスパコン世界ランキング1位を獲得しました。紫峰は農業用として開発され、活用されています。
また、AI関連の日本国内特許数(2014~2021年5月迄)は1,086件と、1位の1,116件(NTT)とほぼ肩を並べています。
2021年の売上高は3兆5868億円(前年比0.08%減)、予想EPSが1,293.41円、株価が17,150円で、予想PERは13.26倍です。配当利回りは1.40%です。
3-2 AIソフトウェア開発
AIのソフトウェア開発業界においては、米国企業の競争力が高く、アマゾン、アップル、アルファベット、マイクロソフト、メタなどがこの分野の上位を占めています。
- アマゾン(AMZN)
- アップル(AAPL)
- アルファベット(GOOGL)
- マイクロソフト(MSFT)
- メタ(META)
3-3 AIのハード提供
AIのハードウェア提供においても、米国企業の市場占有率が高く、上位にはインテル、マイクロン・テクノロジー、エヌビディア、エクイニクスなど半導体関連が挙げられます。
- インテル(INTL)
- マイクロン・テクノロジー(MU)
- エヌビディア(NVDA)
4 日本におけるAI業界
ここでは、日本においてAIを主たる事業としている企業5銘柄をみていきましょう。
Appier Group(4180)
Appier Groupは、マーケティングとセールスの領域において、企業の持つデータを分析し売上拡大を可能にするAIプラットフォームを提供している会社です。
2021年度の売上高は、米国市場での売り上げが伸び、127億円(前期比41%増)でした。設立が2018年4月と間もないため、販売管理費や研究開発費がかさみ、純利益は約11億円の赤字です。
株価はIPO(2021年3月30日)価格1,600円を大きく下回り、上場以来の安値圏で推移しています。
FRONTEO(2158)
FRONTEOは独自に開発したAIエンジンを用いて、国際訴訟における電子データの情報解析を支援している企業です。
2021年度の売上高は109.3億円(前年比5.4%増)、純利益は13億円(同264%増)でした。予想EPSが19.60円、予想PERは48.47倍(株価950円)、配当利回りが0.32%です。株価は低迷し、昨年末比61%下落しています。
PKSHA Technology(3993)
PKSHA Technologyは、主に自然言語処理、機械学習/深層学習技術に関わるアルゴリズムライセンス事業を手がけています。
2021年度の売上高は、87.2億円(前年比18%増)、純利益は1.47億円(同91.6%減)でした。販売管理費が利益圧迫要因です。
予想EPSが13.71円、予想PERは87.67倍(株価2,297円)です。株価は2,000円を下回っていましたが、反転し昨年末の2,500円台を試す動きをしているようです。
エニグモ(3665)
エニグモは、ファッションに特化した電子商取引サイトの運営をしています。2021年度の売上高は76.1億円(前年比7.6%増)、純利益は20.5億円(同2.0%減)でした。
予想EPSは46.62円、予想PERが11.6倍(株価541円)、配当利回りが1.85%です。2022年の株価は低迷し、500円を挟んだ動きとなっています。
ダブルスタンダード(3925)
ダブルスタンダードは、ビックデータを活用し、営業支援や業務削減につながるサービスを提供しています。
2022年3月期の売上高は70.7億円(前年同期比60.4%増)、純利益が10.8億円(同44.9%増)と好調でした。
予想EPSは79.74円、予想PERが19.48倍(株価2,080円)、配当利回りが2.40%です。株価は、2022年5月に安値1,646円を付けたのち、下値を徐々に切り上げています。
5 日本企業のAI関連特許件数
日本企業のAI関連特許件数(国内)は、1位がNTT、2位が富士通、3位が日立です。NTTと富士通の特許件数は他社を大きく上回っており、AI技術開発に力を注いでいることが分かります。
日本企業のAI関連特許件数(国内、2014~2021年5月迄)
会社名 | AI関連発明(件) | 深層学習に言及したAI関連(件) |
---|---|---|
NTT | 788 | 333 |
富士通 | 764 | 322 |
日立 | 521 | 200 |
キヤノン | 478 | 304 |
ファナック | 391 | 235 |
トヨタ自動車 | 372 | 97 |
参照:特許庁「AI 関連発明の出願状況調査 報告書 2021年8月」
まとめ
AI関連企業は、ハードからソフトまで幅広く、大手企業ばかりではなく中小企業も参入しています。
米国では、米国を代表するアマゾン、マイクロソフト、グーグル、アップル、メタなどIT企業のほか、AMD、インテルといった半導体大手企業がシェア上位を占めています。日本ではNTTや富士通をはじめ、Appier Group、FRONTEO、PKSHA Technology、エニグモ、ダブルスタンダードなどのAI新興企業が売上を伸ばしています。
新興企業には投資がかさみ赤字となっている企業も多く、リスクが高いものの、今後の成長で大きく株価が上がる可能性もあります。投資の際は慎重に検討を重ねてご判断ください。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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