IPO延期中の企業、どの業界が多い?コロナ禍のIPOへの影響や今後の動向も

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投資家やトレーダーに人気のあるIPO投資。上場後には株価が上昇するケースが多く、利益を上げやすいのですが、すべてのIPO投資が利益につながるわけではありません。

なかには、新規上場を発表しながらも、残念ながらIPOを延期する企業も存在します。そこで今回は、現在IPOを延期している企業についてリサーチし、IPO予定企業にどんな業種が多いのか調べてみました(2020年6月、日本取引所グループの公開情報に基づき筆者独自調査)。

IPO状況を確認することで業界の勢いを掴むことができ、今後の投資にも役立つかと思いますので、ご参考にして頂ければと思います。

目次

  1. IPOは延期になることもある
    1-1.新型コロナウィルス(COVID-19)の影響でIPO延期・中止が過去最高に
  2. 現在IPO延期中の企業にはどの業界が多い?
    2-1.情報・通信業
    2-2.サービス業
    2-3.医薬品・機械・不動産業界
  3. まとめ

1.IPOは延期になることもある

企業がIPO(新規株式公開)を発表してから、それが延期になるというケースはそれほど頻繁に発生するわけではありません。ですが、今年はコロナショックの影響が大きく、IPO延期とした企業が例年に比べて多くなっています。また、各年数件程度のIPO延期や中止が発生している過去もあります。

2020年についてはこの後詳しく解説するとして、それ以前のIPO延期・中止のデータを見てみましょう。

  • 2019年:延期1件/中止1件
  • 2018年:延期1件/中止4件
  • 2017年:延期0件/中止1件
  • 2016年:延期1件/中止1件
  • 2015年:延期1件/中止2件
  • 2014年:延期0件/中止1件
  • 2013年:延期0件/中止0件
  • 2012年:延期1件/中止2件
  • 2011年:延期3件/中止2件

直近10年間では、2013年を除いて毎年数件のIPO延期・中止が発生しています。

そもそも、IPOを目指している企業は、数年を掛けて準備をしているケースがほとんどです。そのため、企業が自分から好んで上場を延期したり中止したりすることはまずありません。

ですが、コンプライアンスの問題や資金調達が目標に届きそうにない場合、業績予想の不備など、さまざまなことが原因となり、やむなくIPOの延期・中止に追い込まれるケースが存在する、というわけです。

1-1.新型コロナウィルス(COVID-19)の影響でIPO延期・中止が過去最高に

この記事を執筆している2020年5月時点においては、COVID-19が世界中の経済に影響を及ぼしています。日本の株式市場も多大なる影響を受けており、2020年のIPO延期・中止数は4月時点で過去最大となってしまっているのが現状です。

2020年にIPOが延期・中止となっている企業は以下の通りです。

コード 銘柄名 市場(中止前) 上場予定日(中止前) 上場予定日(中止後)
4051 GMOフィナンシャルゲート マザーズ 4月30日 –
6230 SANEI 東証二部 4月24日 –
2983 アールプランナー マザーズ 4月22日 –
4496 コマースOneホールディングス マザーズ 4月9日 6月26日
7689 コパ・コーポレーション マザーズ 4月2日 6月24日
4495 アイキューブドシステムズ マザーズ 4月7日 –
4497 ロコガイド マザーズ 4月9日 6月24日
7092 Fast Fitness Japan マザーズ 3月18日 –
4432 ウイングアーク1st 東証一部 3月26日 –

実に3件の延期と15件の中止が決まっている状態です。今後の経済状況によっては、さらにIPOの延期・中止が発表される可能性や、IPOの総数が減少する可能性もあるでしょう。

2.現在IPO延期中の企業が多い業界は?

以下では、現在IPOが延期・中止となっている企業をリサーチしてみたところ、2016年~2020年の間にIPOが延期になっている企業が属している業界トップ3は以下のようになりました。

  1. 1位:情報・通信業(10社)
  2. 2位:サービス業(6社)
  3. 3位:医薬品、機械、不動産業(2社)

それぞれの業界について詳しく見ていきましょう。

2-1.情報・通信業

直近5年間で最もIPO延期・中止が多い業界は「情報・通信業」です。実に約10社が予定通りのIPOを実現できない状態となっています。

どの企業にも共通しているのは、クラウドサービスやネットワークセキュリティ、プラットフォームの提供といったインターネット関連のサービスを提供しているということです。

今後も成長が見込まれるIT業界では、日進月歩で新しい技術が生まれ、それに伴って新たなサービスが次々と誕生しています。世界で5Gなど先端技術の導入が目前に迫っているなか、情報・通信業界の勢いはさらに増していくとも考えられます。

では、無事上場を果たしている情報・通信業企業のIPO銘柄の状況はどうでしょうか。以下に直近過去10件の実績における株価の状況をまとめました。

コード 銘柄名 市場 上場日 公開価格 初値 初値騰落率
4493 サイバーセキュリティクラウド マザーズ 20/03/26 4,500円 9,210円 +104.67%
4492 ゼネテック JAS 20/03/19 1,700円 1,620円 -4.71%
4491 コンピューターマネージメント JAS 20/03/11 2,750円 4,360円 +58.55%
4490 ビザスク マザーズ 20/03/10 1,500円 1,310円 -12.67%
4488 AI inside マザーズ 19/12/25 3,600円 12,600円 +250.00%
4487 スペースマーケット マザーズ 19/12/20 590円 1,306円 +121.36%
4485 JTOWER マザーズ 19/12/18 1,600円 2,620円 +63.75%
4486 ユナイトアンドグロウ マザーズ 19/12/18 1,270円 3,205円 +152.36%
4478 freee マザーズ 19/12/17 2,000円 2,500円 +25.00%
4482 ウィルズ マザーズ 19/12/17 960円 4,535円 +372.40%

直近過去10件のIPOでは、初値で価格が上昇したのが8件、下落したのが2件でした。初値騰落率の平均は約113%となっていますので、情報・通信業銘柄へのIPO投資は利益を見込みやすいと考えられます。

2-2.サービス業

情報・通信業の次にIPO延期・中止が多かった業界は「サービス業」でした。

サービス業と一言にいっても実にさまざまなものがあり、直近でIPOが延期・中止となっている企業の業種は以下のようになっています。

  • 認可保育所を中心とした保育所等の運営
  • 再生医療を目的に、さい帯血の分離・保管を行う細胞バンク事業
  • 24時間型フィットネスクラブの日本におけるマスターフランチャイジーとしてフランチャイズシステムを運営
  • 直性保育所・受託保育所の運営、幼稚園や保育所に対する保育士派遣、ベビーシッターサービス・ハウスサービスの提供、保育士養成講座等の運営
  • 国際開発コンサルティング事業
  • 24時間365日・多言語対応コンタクトセンター運営事業、セールスアウトソーシング事業

COVID-19の影響もあり、経済全体が減速しているなか、何らかの課題を解決するためのサービスや、これまでになかった新しいサービスなど、多種多様なサービスが展開されようとしています。

では、上場を果たしたサービス業系企業のIPO銘柄について実績を見てみましょう。

コード 銘柄名 市場 上場日 公開価格 初値 初値騰落率
7095 Macbee Planet マザーズ 20/03/31 1,830円 2,348円 +28.31%
7094 NexTone マザーズ 20/30/30 1,700円 1,660円 -2.35%
7093 アディッシュ マザーズ 20/03/26 1,230円 2,101円 +70.81%
7091 リビングプラットフォーム マザーズ 20/03/17 3,900円 3,550円 -8.97%
7090 リグア マザーズ 20/03/13 1,950円 1,910円 -2.05%
7089 フォースタートアップス マザーズ 20/03/13 1,770円 1,628円 -8.02%
7088 フォーラムエンジニアリング 東証一部 20/03/09 1,310円 1,030円 -21.37%
7087 ウィルテック 東証二部 20/03/06 1,200円 1,200円 ±0.00%
7086 きずなホールディングス マザーズ 20/03/06 2,320円 2,220円 -4.31%
7084 Kids Smile Holdings マザーズ 20/03/04 2,260円 2,732円 +20.88%

直近過去10件のIPOでは、初値での株価上昇が3件、下落が6件、停滞が1件となりました。利益が出やすいとされているIPOにしては渋い結果となっていることがわかります。また、騰落率平均は約7%となっています。

過去5年間のIPO延期・中止企業では6件にとどまったサービス業ですが、上記の表を見ると、10件すべてが2020年3月に上場していることがわかります。そのため、情報・通信業に引けを取らない勢いがあると考えることもできるでしょう。

同時に、COVID-19の影響を直に受けてしまっていることも、IPOで株価が上昇しづらかった要因といえる可能性があります。

2-3.医薬品・機械・不動産業界

次にIPOの中止が多かったのは、同率で医薬品、機械、不動産の各業界となりました。

医薬品、つまり製薬業界では業界規模こそ伸び続けているものの、薬価の引き下げによって国内市場は縮小傾向にあります。また、主力薬の特許が切れるなど、収益を上げることが難しくなっている状況で、希少疾患薬や後発医薬品(ジェネリック医薬品)の開発にシフトチェンジする企業が多くなっています。

機械業界でも規模は拡大しているものの、金融危機や海外の住宅市場の縮小などの影響を受けやすく、先行きは不透明といわれています。

不動産業界は長期金利の低下や増税前の駆け込み、オリンピック前の需要拡大によって、ここ数年は業界規模を拡大しています。ただ、オリンピック後にはかなり厳しい状況になると予想されており、主要不動産企業の海外展開が加速するのではないか、といわれています。

では、直近のIPO銘柄をチェックしてみましょう。

コード 銘柄名 市場 上場日 公開価格 初値 初値騰落率
6231 木村工機(機械) 東証二部 20/03/13 2,400円 2,050円 -14.58%
2980 SREホールディングス(不動産業) マザーズ 19/12/19 2,650円 2,475円 -6.60%
2981 ランディックス(不動産業) マザーズ 19/12/19 1,630円 3,660円 +124.54%
4880 セルソース(医薬品) マザーズ 19/10/28 2,280円 6,020円 +164.04%
4599 ステムリム(医薬品) マザーズ 19/08/09 1,000円 930円 -7.00%
2978 ツクルバ(不動産業) マザーズ 19/07/31 2,050円 2,050円 ±0.00%
6232 自律制御システム研究所(機械) マザーズ 18/12/21 3,400円 2,830円 -16.76%
2970 グッドライフカンパニー(不動産業) JAS 18/12/17 1,600円 1,951円 +21.88%
3498 霞ヶ関キャピタル(不動産業) マザーズ 18/11/28 3,240円 6,240円 +92.59%
3497 リーガル不動産(不動産業) マザーズ 18/10/23 1,380円 1,972円 +42.90%

直近10件のIPOでは、機械が2件いずれも下落となり、医薬品は上昇1件と下落1件。不動産は上昇4件、下落1件、公開価格と同額が1件という結果になっています。企業により差はあるものの、不動産業界の高騰実績が目立ちました。

まとめ

今回はIPOを延期もしくは中止した企業を抽出し、各業界の状況について分析・解説してみました。

情報・通信業やサービス業では新たなサービスがどんどん生まれており、今後も注目の業界といえます。今後のIPO投資や業界を絞った投資を行う際の参考になれば幸いです。

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山本 将弘

フリーランスWebライター。主に株式投資や投資信託の記事を執筆。それぞれのテーマに対して、できるだけわかりやすく解説することをモットーとしている。将来に備えとリスクヘッジのために、株式・不動産など「投資」に関する知識や情報の収集、実践に奮闘中。