米国半導体工業会(SIA)は2月14日、2021年の世界の半導体売上高が前年比26.2%増の5,559億ドル(約64兆2800億円)と、過去最高に達したことを発表した(*1)。グローバルに半導体が不足するなか、メーカー各社が生産能力を引きあげた。
半導体の出荷数も過去最高となる1兆1,500個となった。ジョン・ニューファー最高経営責任者(CEO)は「高水準の需要に対応するため、半導体メーカーがかつてないほど高い水準まで生産を増やしたことにより、半導体販売と出荷数が過去最高に達した」と述べた。また、エッセンシャル・テクノロジー(人びとの生活に必要不可欠な技術)ではより多くの半導体チップが搭載されることから、今後数年間も半導体需要は大きく高まると見込んでいる(*1)。
地域別では、最大市場となる中国が前年比27.1%増の1,925億ドルだった。ここ数年にわたり米中関係は緊張が続くなか、中国は半導体の内製化に注力している。そのほか、米州は同27.4%の伸びを示したほか、欧州は同27.3%増だった。
世界的な半導体不足は家電から自動車メーカーにいたる広範な業界に影響を及ぼしており、需要に対応できない企業も散見されていた。この状況に鑑み、各国政府が半導体チップの供給確保に急ぐとともに、半導体生産に向けた投資を後押ししている。
たとえば、米国バイデン政権は半導体製造の国内回帰を図る「CHIPS for America Act(チップス法)」に520億ドル(約6兆円)を投じる計画である(*2)。同法案は最先端の研究開発やサプライチェーン強化に対して補助金を支給するなど、半導体の製造・研究開発を支援するものであるが、現在バイデン政権と議会は早期の成立を目指している状況だ。
そのようななか、米インテル(ティッカーシンボル:INTC)が1月21日、200億ドル(約2兆3000億円)を投じ、米中西部オハイオ州に先端半導体の新工場を建設すると発表(*3)。半導体製造の国内回帰を目指すバイデン政権と歩調を合わせる形であり、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)はCHIPS法の早期成立も促した。
他方で、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)が域内の半導体生産の強化を図る「European Chips Act(欧州半導体法)」を公表した(*4)。官民で430億ユーロ(5兆6,000億円)を投じ、2030年までに世界の半導体市場シェアで現在の2倍となる20%を握る目標を掲げた。
世界各国が半導体の安定確保を模索するなか、半導体メーカー各社がいかなる戦略を講じるか今後も注目したい。
【参照記事】*1 米国半導体工業会「Global Semiconductor Sales, Units Shipped Reach All-Time Highs in 2021 as Industry Ramps Up Production Amid Shortage」
【参照記事】*2 ロイター「U.S. House leaders unveil chips, China competition bill」
【参照記事】*3 インテル「Intel Announces Next US Site with Landmark Investment in Ohio」
【参照記事】*4 欧州委員会「Digital sovereignty: Commission proposes Chips Act」

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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