投資信託の運用において、コストの意識はとても重要なものです。抑えたコストの分だけ収益に変換されることを考えると、おろそかに出来ないことがよくわかります。
投資信託の主なコストは、買付手数料や信託報酬、信託財産留保額です。買付手数料と信託財産留保額はゼロのファンドが多くなりましたが、信託報酬はほぼ全てのファンドで発生しますので、ファンドを選ぶ時には確認しておきたいポイントです。
この記事では、SBI証券から信託報酬が安いファンドのトップ10を紹介しつつ、信託報酬について解説します。信託報酬の低いファンドをお探しの方や、投資信託の銘柄選びにお悩みの方はご参考ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・特定ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年7月時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用を判断ください。
目次
- 投資信託の信託報酬とは
1-1.運用や管理にかかる費用のこと
1-2.信託財産残高×信託報酬率が毎日引かれる
1-3.ファンドごとに信託報酬の差がある理由 - 信託報酬は安いほうがいい?
- 信託報酬の安い投資信託ランキング
- まとめ
1.投資信託の信託報酬とは
投資信託の運用で発生する信託報酬とは、具体的にどのようなコストなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1-1.運用や管理にかかる費用のこと
信託報酬とは、投資信託を運用、管理してもらうために金融機関に払うコストのことで、投資信託を保有している間はずっと払い続けることになる費用です。別途支払いが発生することはなく、信託財産の総資産額から年率数%という形で、日々基準価額から引かれています。
差し引かれた信託報酬は、投資信託を販売する証券会社や銀行、信託財産を管理する信託銀行、運用の指図を行う運用会社の間で分配されます。信託報酬は、投資信託に関わる関連会社へ払う給与のようなものです。
大事なポイントは、成果が出ても出なくても運用中はずっと払い続けなければいけないという点です。
具体的には、信託報酬は主に以下の関連会社へ、以下のような業務の対価として支払われます。
運用会社
運用会社は運用方針をもとに、何をいつ売買するか決めて受託会社へ指図します。また経済や市況の調査、個別企業の調査や分析を行い、リスク管理も引き受けます。さらに投資家向けの月間レポートの作成、監督官庁への報告も行う立場で、幅広い業務を請け負う会社といえます。
業務内容は、フロント、ミドル、バックの3つに分けられます。
フロント業務
フロント業務は、運用と営業の2分野に分けられます。運用フロントには、ファンドマネージャー、トレーダーと呼ばれる人たちが関わっており、投資家から集めた資金をもとに投資判断を行ったり、ファンドの資金繰りを管理したりします。
営業は販売会社へファンドの取り扱いをお願いするためにセミナーなどを行ったりして、販促活動を行う部署です。
ミドル業務
ミドル業務では、目論見書や販売資料、月間レポートの作成やリスク管理を行います。リスク管理は、ファンドの運用状況を見てモニタリングし、運用方針の逸脱がないかなどを日々確認する業務です。
バック業務
バック業務では、日々の基準価額の算出や、会計管理など事務手続き全般を受け持ちます。総務関連の業務もバック業務の仕事です。
販売会社
販売窓口となる証券会社や銀行のことです。商品内容や運用成果の報告、分配金や解約代金の支払いなど細かい事務手続きも担っています。運用会社の代わりに事務手続きを行っており、販売会社が運用会社を兼ねていることもあります。
信託銀行
財産管理や運用の中で決済された株式の決済業務を行います。日々の基準価額の計算を行うのも信託銀行の仕事です。
ファンドの資産は信託銀行によって受託会社の名義で管理されます。受託会社は運用会社の指図によって、投資家の利益のために管理を行い、自社の利益のために信託財産を管理、処分することはできません。投資家の信託財産はファンドごとに個別管理されており、受託会社の資産と混同しないように分別管理が徹底されています。
1-2.信託財産残高×信託報酬率が毎日引かれる
1万口あたりの基準価額10,500円、信託報酬率1.6%の投資信託を100万円ぶん持っているとします。この場合、10,500円×保有数の100=105万円に対して、税込1.728%を掛けた18,144円が信託報酬の金額になります。
信託報酬は年率で表されているため、実際には日割りされた金額を毎日差し引いています。また、基準価額が大きくなるにつれて信託報酬の額は大きくなります。
1-3.ファンドごとに信託報酬の差がある理由
信託報酬が0.1%台のファンドと3%台のファンドにある違いとは、調査費用や売買の頻度による手数料の差です。
インデックス型のファンドは、頻繁に売買せず運用に手がかからないので、それに伴い信託報酬費用が低く設定されており、0.1%程度のファンドも数多くあります。対して、アクティブファンドや、売買を頻繁に行う複雑なファンドは高めに設定されており、0.5%~3%が水準となっています。
コストとリターンのバランスをよく考え、目的に応じたファンド選びを心がけましょう。
2.信託報酬は安いほうがいい?
信託報酬は、投資信託を保有している間はずっとかかり続ける費用なので、できる限り抑えたほうが良いでしょう。では、信託報酬が高いファンドは悪いファンドとして避けたほうが良いのでしょうか。
同じような内容のインデックスファンドなら、信託報酬が安いほうを選ぶに越したことはありません。一方、ローコストなインデックスファンドが苦戦を強いられる下落トレンドの中で、信託報酬が高いアクティブファンドが大きな成果を出すこともありますので、インデックスファンドの信託報酬の安さと、アクティブファンドの信託報酬の高さを同じ尺度で語るのは早計といえます。
コストに見合った成果が得られるかどうか、という基準で見ることが重要なのです。ファンド選びの際は、信託報酬のほかに、基準価額の推移やトータルリターンなども確認することが大切です。
3.信託報酬の安い投資信託ランキング
SBI証券のすべてのファンドの中から、信託報酬が安いファンドTOP10をピックアップしました。国内外のインデックスファンドが多くを占めており、信託報酬は0.09%~0.1%程度となっています。
※2021年7月29日時点のSBI証券の取り扱いファンド参照。信託報酬は税込表示です。
ファンド名 | 信託報酬 |
---|---|
1 SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500) | 0.0938%程度 |
2 SBI-SBI・V・全米株式インデックス・ファンド (愛称:SBI・V・全米株式) | 0.0938%程度 |
3 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | 0.0968%以内 |
4 SBI-SBI・先進国株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(先進国株式)) | 0.1022%程度 |
5 ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 0.1023%以内 |
6 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 0.1023%以内 |
7 One-たわらノーロード 先進国株式 | 0.10989%以内 |
8 SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式)) | 0.1102%程度 |
9 ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット) | 0.1144%以内 |
10 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型) | 0.1144%以内 |
まとめ
信託報酬はファンドを保有している間はずっとかかり続けるコストで、日割り計算され、毎日基準価額から差し引かれます。実際に支払う感覚がないのでおろそかに考えがちですが、コストを抑えることは収益を得る上では大事なことです。ファンドを選ぶ時は信託報酬にも注目しましょう。
SBI証券のファンドでは、インデックスファンドが安い信託報酬の上位を占めていますが、リターンとコストのバランスを考えて、自分のスタイルにあったファンドで無理のない運用を目指しましょう。
sayran
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