投資に興味があっても、いきなりハイリスクな方法に手を出したくないと考える人は少なくありません。投資を長続きさせるためには、大きな損失を避けることも大切です。
この記事では、初心者でも取り組みやすい低リスク投資を紹介します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 低リスク投資の基礎知識
1-1.リスクとリターンの関係
1-2.代表的な低リスク資産は債券 - 主な低リスク投資
2-1.定期預金
2-2.個人向け国債
2-3.社債
2-4.債券投資信託
2-5.外貨建てMMF
2-6.個人年金保険 - 投資のリスクの軽減方法
3-1.長期投資
3-2.分散投資
3-3.積立投資 - まとめ
1.低リスク投資の基礎知識
ここでは、低リスク投資をするにあたって知っておきたいことをお伝えします。
1-1.リスクとリターンの関係
投資には「リスク」と「リターン」がつきものです。リスクとは結果が不確実であること、リターンの振れ幅を意味します。リターンとは投資で得られる収益のことです。
リスクとリターンはコインの表裏のような関係と言われています。通常、リスクが高いほど得られるリターンも大きくなり、リスクが低ければリターンも少なくなります。つまり、低リスク投資では「あまり大きなリターンは期待できない」ことを覚えておいてください。
1-2.代表的な低リスク資産は債券
一般的に株式はハイリターン・ハイリスクの投資対象と言われています。一方、低リスク資産の代表的なものに債券があります。債券とは、国や企業が投資家からお金を借りるために発行する有価証券です。
債券には満期(償還日)と利子が決められています。投資家は利払日に利子を受け取り、償還日には元本が払い戻されます。また、株式同様に債券には売買をする市場があり、売却により利益を得ることも可能です。破綻リスクの少ない発行体を選べば、決まった利子を受け取り、元本全額が戻るリスクの低い投資といえます。
国内債券の種類
国内で発行されている債券には発行体によって以下のような種類があります。
- 国債
- 地方債
- 社債
外国債券とは?
発行体、発行市場、通貨のいずれかが日本以外の外国である債券を外国債券といいます。外国債券は日本の債券より高金利のものが多い反面、為替リスクなどがあり、元本割れのリスクも高くなります。
新発債と既発債
債券には新規に発行される新発債と、すでに発行されて市場で売買される既発債があります。既発債の価格は、発行価格ではなく時価です。
債券のリスク
債券投資には、主に次のようなリスクがあります。
- 信用リスク:発行体の破綻で債務不履行になるリスク
- 価格変動リスク:途中で売却する場合に、売却価格が購入価格を下回るリスク
- 為替変動リスク:外国債券が為替変動の影響で元本割れするリスク
- カントリーリスク:外国債券の発行体の国や地域で、政治や経済の変化により債券の価格変動が起こるリスク
2.主な低リスク投資
ここからは具体的な低リスク投資を紹介します。
2-1.定期預金
お金の出し入れが自由な普通預金に対し、一定期間、預金を引き出せないタイプが定期預金です。定期預金の金利は普通預金より高く設定されています。原則として満期までは引き出せませんが、中途解約をしても元本割れはしません。預金保険制度(ペイオフ)により1金融機関につき定期預金と普通預金の合計1,000万円までは、預金とその利息分が保証されます。
ただし、2021年7月現在、主な都市銀行の1年定期預金の金利は0.002%程度で、お金を増やすことは期待できません。
定期預金の始め方
定期預金を始めるには、預け入れる金額と期間を決めましょう。そのうえで条件のよい預け先を探します。最近では、店舗のないネット銀行の金利が高い傾向にあります。口座開設もインターネットで完結するため、忙しい人でも手間がかかりません。
2-2.個人向け国債
日本国政府が発行する国債のうち、個人を対象としたものを個人向け国債といいます。国債とは、上述した債券の一種です。個人向け国債には、変動金利型(10年)と固定金利型(5年・3年)があり、どのタイプも最低金利0.05%が保証されています。一般的に銀行の預金金利より高い利子が期待できます。
また、発行後1年経つと中途換金が可能で、その場合でも元本割れはしません。最低1万円から1万円単位で購入可能なので、少額から始められます。
個人向け国債投資の始め方
個人向け国債は毎月発行されていて、証券会社や銀行など多くの金融機関で購入できます。ネット証券に口座を持っていればインターネットでの買い付けも可能です。
2-3.社債
企業が資金調達のために発行する債券を社債といいます。国債ほどの信用はない分、社債の金利は高い傾向にあります。社債投資のリスクを減らす方法の1つは、高格付けの債券を選ぶことです。格付けとは、ムーディーズのような格付機関が発行体の信用力や支払い能力を分析して、安全性を記号(AAAなど)で表したものです。
また、社債は償還までの期間が長いものほど利率が高くなります。しかし、長期的な企業業績は予想しにくく、現在は高格付けの銘柄が将来にわたって信用を保てるかはわかりません。よって、償還までの期間が短い(目安として2、3年)ほうがリスクが低くなります。
社債投資の始め方
多くの金融機関で購入できる国債と違い、社債は証券会社のみで買えます。また、銘柄ごとに取り扱う証券会社が限定されるため、希望の社債を取り扱う会社で口座開設をしなくてはなりません。債券投資に関心がある人は、債券の取り扱いの多い証券会社に口座を持っておくとよいでしょう。
社債は銘柄ごとに最低投資額(10万円から100万円程度)が異なります。利率や償還日、格付けとともに最低投資金額も確認が必要です。
2-4.債券投資信託
個別の銘柄でなく、さまざまな債券に分散投資したい場合、債券投資信託も選択肢になります。債券投資信託は、国債や社債といった複数の債券へ投資を行う投資信託です。債券投資信託は債券の投資対象によって「国内債券型」「外国債券型」「社債型」など種類が分かれます。
1銘柄の債券投資では発行体の破綻などで投資額全部を失う可能性もありますが、投資信託は分散投資なので影響は限定的です。また、投資信託は最低投資金額が数千円程度からと安く、積立投資もできるなど、取引の利便性に優れています。ただし、元本保証ではなく、特に格付けの低い債券(ハイイールド債など)に投資するファンドは値下がりのリスクも高いことに注意してください。
債券投資信託の始め方
投資信託は証券会社・銀行など取り扱う金融機関が多く、すでに口座を開設している人はすぐに始められます。口座のない人は希望するファンドを取り扱う金融機関に口座を開設しましょう。
NISAを利用する場合、債券だけを投資対象にしている投資信託はつみたてNISAにはありません。一般NISAなら、多くの選択肢があります。なるべく信託報酬の低いファンドを選ぶと無難です。
2-5.外貨建てMMF
外貨建てMMFとは、米ドルなどの外貨で運用する投資信託の一種で、格付けの高い社債や国債などを投資対象としています。元本保証ではありませんが、外貨ベースでの元本割れリスクが低い金融商品です。金融機関が破綻した場合、外貨預金はペイオフの対象ではありません。しかし、外貨建てMMFは金融機関の資産と分別して管理されるため、保護されます。
トルコリラや南アフリカランド建てMMFは高金利ですが、通貨を発行する国の信用が高いとはいえません。その国の国債がデフォルト(債務不履行)になると元本割れの可能性が高まります。
外貨建てMMFの始め方
外貨建てMMFは証券会社か一部の銀行で取り扱っています。購入する場合、外貨取引の口座開設が必要です。円から購入する場合、外貨への両替が必要で、為替手数料がかかります。為替手数料は証券会社ごとに異なるため、手数料の安い会社で取引をするようにしましょう。
一部の証券会社は、積立での購入を取り扱っています。毎月一定額を異なる為替レートで購入することで、購入単価を平準化し、為替変動の影響を低減する効果が期待できるのです。
一部の外貨建てMMFが償還
2020年のコロナ禍の影響で各国の中央銀行が利下げに踏み切り、債券の金利を収益源とするMMFは安定的な運用が困難になりました。その結果、豪ドル、ニュージーランドドルなどのMMFで償還が相次いでいます。現状、米ドルとトルコリラ、南アフリカランドの通貨建てのMMFが多くの証券会社で取引可能です。
2-6.個人年金保険
一定の年齢まで保険料を年金原資として積み立て、満期後に分割で受け取る保険商品を個人年金保険といいます。以下の条件を満たすと、保険料が生命保険料控除とは別枠の個人年金保険料控除の対象になります。
- 年金の受取人が契約者またはその配偶者であること
- 年金の受取人が被保険者であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金受取開始が60歳以降であり、かつ受取期間が10年以上であること
個人年金保険を中途解約すると、多くの場合、支払った保険料より戻ってくる金額が少なくなります。
個人年金保険に加入する方法
死亡保険や医療保険は加入時に健康状態に関する告知が必要ですが、個人年金保険では不要です。加入にあたっては、保険料、保険料払込期間、年金受取期間、年金年額などを確認しましょう。
3.投資のリスクの軽減方法
以上、低リスクの投資を紹介しました。低リスクの投資に慣れて、より多くの運用益を得たい場合に役立つ、投資のリスクを減らす方法について解説します。
最近では各国の政策金利が下がっており、債券投資で資産を増やすことが難しくなっています。仮に年利3%以上の運用成果を目指す場合、債券だけで達成することは期待できません。そこで、株式などリスクの高い資産を取り入れる場合に、リスクを抑えつつリターンを狙うための3つの投資手法があります。
3-1.長期投資
中長期的に成長が見込める資産に数年単位の長期投資を行うと、短期的な値動きに左右されることなく資産価値の増加を期待できます。また、長期投資では、運用益を投資元本に組み入れることによる複利投資と相性が良く、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向があります。
3-2.分散投資
投資対象を1点に集中せず、複数の種類に分ける投資方法を分散投資といいます。分散投資により、特定の資産の値動きの影響を抑える効果が見込めます。
3-3.積立投資
ある金融商品を毎月1万円ずつのように定時定額で買い付けを行うことを積立投資といいます。積立投資では、価格が高い時には少なく、価格が安い時期には多く購入することで平均購入単価を平準化する効果があります。資産額は数量×単価で求められます。
値動きの激しい金融商品でも、積立投資を行うことで購入単価が一定水準に収れんされるため、損益のブレを小さく抑えることが可能になります。
まとめ
今回は低リスクでできる投資を紹介しました。
低リスク投資はリターンも低いため、資産を守ることはできますが、積極的に資産を増やしたい人にはあまり向きません。リスクに不慣れな初心者や、直近の明確な使途のためにお金を貯めたい人が活用するとメリットがあると言えます。投資の目的や期間に適した運用方法を選択していきましょう。
松田 聡子
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