旅行・ホテル業界では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で旅行需要が急減したため、業績悪化が鮮明となりました。しかし、コロナワクチン接種が進んだこともあり、各国での水際対策が緩和され、世界的に人々の往来が再開されました。
そこで今回は、今後業績の伸びが期待できそうな日米の旅行・ホテル業界の展望と注目銘柄について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 旅行・ホテル業界:2023年の展望
1-1.米国の動向
1-2.日本の動向 - 日米旅行・ホテル業界の注目銘柄
2-1.米国の注目銘柄
2-2.日本の注目銘柄 - まとめ
1 旅行・ホテル業界:2023年の展望
旅行・ホテル業界の2023年展望を、日米それぞれについて、みていきましょう。
1-1 米国の動向
米国では、2022年には移動制限が解除され、感染状況次第でマスク着用不要との方針を打ち出しました。2022年6月からは陰性証明書の提示義務も不要となり、ワクチン接種証明書のみで入国できるようになったため、海外からの入国者数が増加しました。
米国政府は旅行・観光戦略とし、2027年までに年間9千万人の外国人旅行者の受け入れを目指しています。なお、外国人旅行者による消費額を2,790億ドルと想定し、米国経済の活性化につなげたいようです。
1-2 日本の動向
日本では、2022年10月に新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されました。入国者数の上限撤廃や、外国人の個人旅行も解禁されました。日本への入国時には、原則として、3回以上のワクチン接種を終えていれば、入国前のPCR検査と陰性証明書取得が免除されています(2023年2月時点)。
訪日外客数は増加傾向にあり、水際対策緩和前の2022年9月は20.6万人でしたが、10月に49.8万人、12月には137万人まで増加しました。特に、韓国からの訪日数が増加している一方で、中国からの訪日数は中国政府が日本への団体旅行やツアー旅行を禁止しているため、低迷しています。
訪日外国人の増加に伴い、外国人旅行客による消費額が増加傾向にあり、観光庁によると2022年10-12月の消費額は5,952億円(2019年同期比50.9%減)でした。一方、一人当たりの旅行支出は21.2万円で、2019年同期比24.6%増と、一人当たりの消費金額が増加しています。
今後、中国政府により日本への団体旅行やツアーが解禁されれば、さらにインバウンド消費拡大が期待できそうです。
2 日米旅行・ホテル業界の注目銘柄
新型コロナウイルス感染症に対する規制が世界的に緩和され、人々の国境間の往来が活発さを取り戻してきた現状を受け、今後の成長が期待できる主な銘柄について紹介していきます。
2-1 米国の注目銘柄
米国企業の注目3社を紹介します。
マリオット・インターナショナル<MAR>
マリオット・インターナショナルは、世界各地でホテル事業を展開する米国大手ホテルチェーンです。
2022年度の売上高は207.73億ドルで、旅行需要の高まりから、昨年比で約50%増加しました。純利益は23.58ドルで、前年比約115%増加と好調でした。宿泊需要の高まりを受け、部屋当たり単価が上昇し、部屋当たり収益(RevPAR)が約111ドルと、昨年の約75ドルから上昇、稼働率も約60%(前年比14.5%増)に上昇しました。
世界各国では水際対策が緩和され、人々がコロナ以前のように世界中を往来できるようになったため、収益の拡大が予想されます。
株価は175.79ドル(2月16日)、予想PERは23倍です。予想PERは競合企業のハイアット・ホテルズの46倍と比較すると割安感があります。
ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス<UAL>
ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスは、子会社を通じ、旅客および貨物を輸送する航空会社を経営しています。
世界各国での水際対策が緩和されたため、乗客数が増加しています。2022年の乗客数が1.44億人と、2021年の1.04億人から大幅に増え、売上高は2021年比約82%増の44.9億ドルでした。
2022年のPRM(乗客を何名乗せて何マイル飛んだか)が2,067億マイル(前年1,289億マイル)、ASMs(何席の飛行機が何マイル飛んだか)が2,478億マイル(前年1,786億マイル)で、搭乗率は2021年の72%から83%に改善しました。
株価は48.99ドル(2月16日)で、予想PERは5.86倍と割安感はあります。
エアビーアンドビー<ABNB>
エアビーアンドビーはウェブサイトやモバイルアプリケーション経由で、世界各地の宿泊施設や体験プログラムを予約できるサービスを提供しています。
2022年度決算は、売上高が2021年比40%上昇の83億9900万ドル、純利益が2021年度のマイナス3億5200万ドルからプラス18億9300万ドルとなりました。旅行需要の回復を背景に、通期では初の最終黒字でした。
世界各地で水際対策が緩和されたことや、コロナ禍の反動で旅行需要が高まっていることから、海外旅行や都市部への旅行者数の増加が収益を押し上げました。同社の知名度が上がり、世界中で自宅や別荘を貸し出すホストが増加傾向にあるため、収益は増加する可能性が高そうです。
株価は139.42ドル(2月16日)、予想PERは39.6倍と割高感があります。
2-2 日本
続いて日本企業をみていきます。
共立メンテナンス<9616>
共立メンテナンスは、リゾートホテルや学生寮、社員寮を管理運営しています。
第3四半期決算(2022年10~12月末)は、訪日需要の高まりに加え、全国旅行支援などの観光需要喚起策もあり国内旅行者も増加したため、ホテル事業がコロナ以前の水準近くまで回復しました。
第3四半期の売上高は前年同期比約23%増の約1,290億円、純利益は前年同期のマイナスから約41億円のプラスに転じました。特に、ホテル事業が好調で、売上高は前年同期61.4%増の746億円でした。同社のリゾートホテルは天然温泉施設や食事などが人気で、主要観光地に多く展開しているため、インバウド需要が期待できそうです。
2023年1月の訪日外客数は149万人で、外国人観光客向け添乗員なしのパッケージツアー受け入れが再開した2022年9月時点の20.6万人に比べ7倍強に増加しました。今後も、水際対策の更なる緩和や国内でのマスク着用ルールの変更などから、訪日外客数は増加すると考えられます。
株価は5,240円(2月16日)、予想PERが55.4倍と株価は割高な水準です。
西武ホールディングス<9024>
西武ホールディングスは、鉄道事業とホテル・レジャー事業や不動産事業などを手掛けています。
2022年2月に発表された2023年第3四半期決算では、ホテル・レジャー事業の営業収益が国内外のホテルやゴルフ場利用者の増加により、前年同期比468%増の1,428億円に増加しました。
国内ホテルのRevPAR(客室稼働率×客室平均単価)は、客室稼働率が前年同期の30%から約53%に高まったことが主因で約58%増加しました。月間邦人客は2022年12月に31.4万人とコロナ以前の水準を回復していますが、外国人客数の回復は遅れています。水際対策が緩和された2022年10月以降徐々に回復しているものの、2022年12月分は約7万人と、2019年12月比で約37%低い水準にとどまっています。
株価は1,399円(2月16日)、予想PERが5.5倍、PBRが1.09倍と割安感があると言えそうです。訪日外国人が増加傾向にあるなか、同社ホテルへのインバウンド集客が課題です。
九州旅客鉄道<9142>
九州旅客鉄道は、九州地方で鉄道運輸サービスを展開。その他、不動産・ホテル、建設、流通などを手掛けています。2022年3月期第3四半期決算の売上高は前年同期比17.3%増の2,612億円、営業利益が708.5%増の225億円、純利益は133.7%増の215億円でした。一株当たり四半期純利益が137.05円と、前年同期58.65円を大きく上回りました。
2022年9月の西九州新幹線開業や新D&S列車「ふたつ星4047」の運航開始が貢献し、運輸サービス部門の売上高が1,009億円と前年同期比29.4%増加しました。
株価は2,925円(2月16日)、予想PERが17.8倍、PBRは1.18倍、予想配当利回りが3.18%と株価には割安感がありそうです。
九州エリアは、台湾、韓国、中国などからの旅行者に人気が高いため、インバウンド需要の増加が期待できそうです。また、日本人の国内旅行者数も、全国旅行支援など政策の後押しもあり、順調に伸びていることから、旅行需要は今後も高まることが予想されます。
まとめ
今回は、旅行・ホテル業界の2023年の展望と日米の注目銘柄について解説しました。
世界各国で水際対策が緩和されたことで人の往来が再開されました。日本においても外国人観光客の姿を街で見かけることも多くなり、日本各地の観光地においてインバウンド消費が期待できそうです。
米国においても、米国内旅行や、海外旅行が増加傾向にあり、旅行・ホテル業界の業績が好転しています。日本においては、円安効果もありインバウンド消費の拡大も期待できそうです。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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