中国人の爆買いはモノから日経平均へ?投資のプロが注目銘柄を5つ紹介

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中国国内の景気低迷を受け、中国市場では株価が下落基調にある一方、日経平均ETFが人気となっています。日経平均ETFを買うということは、日経平均構成銘柄を買うということです。

訪日中国人が伸び悩み、中国人観光客による爆買いが縮小するなか、爆買いは日経ETFに移ったとも言えるでしょう。本稿では投資のプロである筆者が、中国市場の現状や注目銘柄について解説します。

※株価は全て2024年1月末日時点です。
※本記事は2024年3月10日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 中国株式市場
  2. 日本への中国人旅行者数
  3. 注目銘柄
    3-1.ファーストリテイリング(9983)
    3-2.東京エレクトロン(8035)
    3-3.コメ兵ホールディングス(2780)
    3-4.オリエンタルランド(4661)
    3-5.資生堂(4911)
  4. まとめ

1.中国株式市場

中国株式市場は、中国経済の失速を背景に低迷しています。上海市場及び深圳市場に上場している流動性の高いA株300銘柄で構成されているCSI300指数の2023年年間の騰落率はマイナス11.38%、香港ハンセン指数はマイナス13.82%とマイナスだった一方で、日経平均はプラス28.24%でした。2024年に入ってからもこの傾向は続いており、中国株式市場の低迷は低迷しています。

中国市場には、複数の日経225ETFが上場しています。中国市場上場の日経平均ETFが注目されたのは、2024年1月中旬ごろからで、日経平均を上回る勢いで上昇したことがきっかけです。

なかでも、チャイナAMC野村日経225は、2024年1月半ばに出来高を伴い制限値幅いっぱいの10%高となる場面もあり、過熱感から一時的に売買停止になりました。

2.日本への中国人旅行者数

日本への外国人旅行者数が増加傾向にあるなか、中国からの旅行者数は低迷しています。

日本政府観光局によると、中国人旅行者数はピークの2019年には1カ月当たり100万名を超える月もありました。しかし、2024年1月時点の中国人旅行者数は約41.5万名で、韓国人旅行者数(85.7万名)、台湾からの旅行者数(49.2万名)を下回る水準で推移しています。なお、韓国人旅行者数は、コロナ以前のス水準を上回っています。

参照:JNTO「訪日外客数(2024 年 1 月推計値)

観光庁によると、2023年暦年の訪日外国人旅行者消費額(速報)は5兆2,923億円(2019年比9.9%増)と、過去最高を記録しました。しかし、中国人旅行者の消費額は停滞しています。

消費金額を地域別でみると、台湾が7,786億円(構成比14.7%)、次が中国の7,599億円(構成比14.4%)でした。コロナ以前の2019年の訪日外国人消費額4兆8,135億円に占める中国の割合は37.8%に相当する1兆7,704億円でした。これは、台湾の3倍強に相当する金額です。

参照:国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査

3.注目銘柄

中国人の日経平均ETF投資人気や、日本への外国人旅行者の増加をテーマとして注目されそうな銘柄を5つ解説します。今後、株価の上昇が期待される銘柄だけでなく、慎重に投資を検討したい銘柄も解説するので、参考にしてみてください。

3-1.ファーストリテイリング(9983)

ファーストリテイリングは、日経平均株価への寄与度が高い銘柄として知られています。日経平均ETFの上昇は、日経平均構成銘柄の上昇に繋がります。

同社は、ユニクロやGUなど衣料品会社を参加にもつ持ち株会社です。リーズナブルでシンプルかつ機能性が高い製品は、世界的に人気です。

2024年8月期第1四半期決算(2023年9月~2023年11月末)の連結業績は、売上収益が8,108億円(前年同期比13.2%増)、営業利益が1,466億円(同25.3%増)と増収増益でした。海外市場が特に好調で、グレーターチャイナ(中国本国、香港、台湾)の売上収益が前年同期比22.9%増の1,803億円(前年同期1,467億円)と大きく伸びました。

参照:ファーストリテイリング「2024年8月期 第1四半期決算サマリー

ファーストリテイリングの株価は43,270円、予想PERが42.81倍、配当利回りは0.76%です。最低投資金額は400万円を超えるので、ミニ株投資を検討してみてください。

3-2.東京エレクトロン(8035)

東京エクトロンは、日経平均株価への寄与度が高い銘柄です。同社は半導体製造装置の世界的なメーカーで、塗布現像、ガスケミカルエッチング、拡散炉、パッチ成膜などで世界シェア1位の企業です。半導体製造装置売上高は2.2兆円(2023年3月)と、世界第4位の規模です。

参照:東京エクトロン「東京エレクトロンを知る

半導体市場は、データセンター向け投資に加え、EVや自動運転の普及、生成AIの活用などに伴い2030年には2023年の2倍に相当する1兆米ドル超えが予想されており、同社の売上の市場拡大とともに増加が期待されます。

参照:東京エクトロン「CEOメッセージ

株価は36,580円、予想PERが49.8倍、配当利回りは1%です。割高な水準ですが、同社の株価が日経平均を今後もリードする可能性があります。

3-3.コメ兵ホールディングス(2780)

コメ兵ホールディングスは、ブランド品を中心とする中古品の買い取り・販売を手掛けています。

日本のブランド中古品の質が高く、なかには新品と見間違えてしまうほどの良品も販売されています。円安や物価高で中古品需要が高まり、外国人バイヤーが高級ブランドの中古品を買付けに来ています。

2024年3月期第3四半期決算では、EC関与売上高や訪日外国人の売上高が伸び、第3四半期連結累計期間の売上高は前年同期比34.2%増の841億円となりました。

参照:コメ兵ホールディングス「2024年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

同社の株価は3,760円、予想PERは8.32倍、配当利回りが2.34%です。海外ブランド品の価格が高騰するなか、中古市場の需要は今後も高まるでしょう。

3-4.オリエンタルランド(4661)

オリエンタルランドは東京ディズニーリゾート(TDL)を経営する京成グループ会社です。

開園40周年イベントが好調で、テーマパークの入場者数や一人当たりの売上高が増加したことが要因です。中国人観光客が伸び悩んでいるものの、外国人比率が上昇傾向にあります。外国人の消費がモノからコトへ移行しているなか、訪日外国人観光客の人気スポットの一つとなっています。

2024年3月期第3四半期決算(2023年4月~2023年12月末)では、売上高(累計)が前年同期間比32.8%増の4,662億円、純利益は同66.2%増の998.3億円と好調でした。テーマパーク事業の売上高が1,007億円増(35.1%増)と、売上高の成長に貢献しました。

参照:オリエンタルランド「四半期報告書

同社の株価は5,370円、予想PERは80.39倍、配当利回りが0.2%です。株価は割高ですが、株主は年2回テーマパークの1デーパスポートが株数に応じて配布されます。

3-5.資生堂(4911)

資生堂は、約120の国と地域で化粧品事業を中心に展開しています。2023年12月期(2023年1月~2023年12月)の売上高は、前年比8.8%減の9,730億円、当期利益(親会社の所有者の帰属する)は同36.4%減の2,174億円と低調でした。

海外売上高の減少が進んでいます。売上高の約25%を占める中国事業は前年比4.0%減の2,479億円、売上高の11%を占める米州事業は事業譲渡の影響で前年比20%減の1,102億円でした。

中国の低迷は、Eコマース事業のマイナス成長が要因、米国事業の減速は事業譲渡の影響が大きく、事業譲渡の影響を除いた実質ベースでは前値比15.2%増です。中国では不動産バブル崩壊により経済活動が停滞しており、中国依存度の高い同社には逆風が吹いているようです。

参照:資生堂「2023年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

同社の株価は4,177円、予想PERは75.95倍、配当利回りが1.44%です。

4.まとめ

本稿では、日経平均への寄与度の高い銘柄と、中国依存度が高い銘柄を5銘柄紹介しました。

2024年2月22日、ついに日経平均株価がバブル期の高値を更新しました。中国人投資家による日経平均ETF人気もその要因の一つです。中国株式市場が低迷するなか、中国市場に上場している日経平均ETFはプレミアム価格で取引されているほど人気が高まっています。

訪日中国人観光客の爆買いが縮小するなか、爆買いの対象は日経平均ETFに移ったとも言えるでしょう。日経平均ETFの買いは、個別株の価格に影響するため、日本株投資の参考にしてみてください。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。