トータルリターンが高い投資信託5本を比較、シャープレシオを併用した分析方法も

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トータルリターンの分析方法や、見方について疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。トータルリターンはファンドの実質的な収益を表すもので、分配金や運用管理費を加味した数値です。基準価額だけを見ていると見落としてしまいがちな、ファンド本来の成績を分析するのにも役立ちます。

この記事では、トータルリターンが高いファンドを紹介しつつ、計算方法や分析方法など網羅的に解説します。トータルリターンについて知りたい方はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. トータルリターンが高いファンド5本
  2. トータルリターンとは本来のリターンを表した数値
    2-1.分配金、値上がり益、運用コストなどを考慮した数値
    2-2.トータルリターンと利回りの違い
  3. トータルリターンの計算方法
    3-1.モーニングスターによるトータルリターン算出方法
    3-2.計算済みのトータルリターンを確認
  4. トータルリターンとシャープレシオを使ったファンド分析
    4-1.リスクとリターンの関係を表すシャープレシオ
    4-2.投資指標の組み合わせで分析の精度アップ
  5. トータルリターンを見るときの注意点
    5-1.期間に注目する
    5-2.未来を予測する指標ではない
  6. まとめ

1.トータルリターンが高いファンド5本

楽天スーパーサーチをつかって、楽天証券で取り扱いのあるファンドから、5年のトータルリターンが高い順番に抽出しました。数値は2021年12月21日の情報です。

項目 リターン 純資産
(億円)
3年 5年 設定来
企業価値成長小型株ファンド 30.66 31.8 28.76 381.67
グローバルAIファンド 36.43 26.58 28.4 4,063.29
DIAM新興市場日本株ファンド 26.6 25.4 24.86 160.62
netWINGSテクノロジー株式ファンドBコース(為替ヘッジなし) 29.1 24.16 6.52 7,736.43
三菱UFJ NASDAQオープンBコース 29.91 23.4 307.11

トータルリターンの期間は、6ヶ月、1年、3年、5年、10年とありますが、今回は中間の期間5年を選択して高い順から表にまとめてみました。

純資産額とトータルリターンを並べてみると、必ずしも3年や5年の中長期トータルリターンの数値が良いファンドに資金が集まっているというわけではありません。

企業価値成長小型株ファンドは、5年のトータルリターンでは1番ですが、純資産額は集めきれていません。2位のグローバルAIファンドと4位のnetWINGSテクノロジー株式ファンドはAI関連のファンドで、運用成績が飛び抜けて良いわけではありませんが、純資産を集めています。

トータルリターンの良し悪しよりも、コンスタントに分配金を出しつつ、期待感のあるトレンドやテーマを抑えているファンドへ投資するというように投資家の判断がなされているようです。

2.トータルリターンとは?本来のリターンを表した数値

トータルリターンの詳細について、以下に解説します。

2-1.分配金、値上がり益、運用コストなど考慮した数値

トータルリターンは、基準価額の差益・差損から、分配金や手数料を考慮し、基準日から判定当日までのリターンをパーセンテージで表したものです。ファンドの運用成績を確認する際に有効な指標で、分配金をすべて再投資したと仮定し、一定期間の分配金込の騰落率を表す証券会社が多くあります。

毎月分配金を出しているファンドの場合、分配金込の運用成績がわかりにくくなりますが、トータルリターンを見ると本当の運用成績を判定することができます。

2-2.トータルリターンと利回りの違い

利回りとは投資元本に対して、一定期間でどの程度の損益がでているかパーセンテージで表したものです。利回りは年率で表されることが一般的です。主には債券や不動産などの運用成績を測る時に用いられる呼称で、投資信託の運用成績を測る時には用いられません。投資信託の利回りにあたるものは騰落率です。

騰落率は手数料や、分配金を考慮していない数値ですが、トータルリターンは管理費用込みで計算します。したがって、ファンドの運用成績を見る時はトータルリターンで判断するのが正しいのです。

投資信託の利回りにあたるものは騰落率、実際の運用成績を見るにはトータルリターンということを覚えておきましょう。

3.トータルリターンの計算方法

トータルリターンの計算方法について、以下に解説します。

3-1.モーニングスターによるトータルリターン算出方法

モーニングスター社によるトータルリターンの計算方法は以下の通りです。分配金は再投資する前提となっています。

月次リターン={月次基準価額×(1+普通分配金+特別分配金÷決算日基準価額)÷月初基準価額}-1

計算式は月次リターンの算出方法となっていますが、実際に証券会社のサイトで開示される情報は、6ヶ月や年単位で表されることがほとんどです。

トータルリターンの計算式は、分配金を受け取る、再投資する2つの前提がありますが、多くの場合、分配金を再投資する前提で計算されています。

上記の計算式の場合、販売手数料、信託財産留保額などは計算に入っていませんが、信託報酬や売買委託手数料など、純資産から控除される金額については控除されています。

3-2.計算済みのトータルリターンを確認

トータルリターンの数値はそのつど自力で計算をする必要はなく、証券会社のサイトで最新のトータルリターンが都度、公開されています。トータルリターンの計算式は予備知識程度に抑えておくとよいでしょう。計算の根拠を理解していれば、ファンド選びの際の有力な参考となります。

4.トータルリターンとシャープレシオを使ったファンド分析

トータルリターンとシャープレシオを使って運用成績をみると、ファンドを多面的に分析することができます。

4-1.リスクとリターンの関係を表すシャープレシオ

シャープレシオとは、リスクをとって運用した結果、リスクゼロと仮定した安全資産から得られるリターンをどの程度上回ったのか、比較できるようにした指標です。

シャープレシオはファンドの運用成績を確認、比較する時に役立つ投資指標で、リターンだけを見るものではなく、リスクとリターンの兼ね合いを分析します。数字が大きいほど、以下の要素を読み取ることができます。

  1. リスクの割にリターンが大きい
  2. 効率よくリターンを上げている
  3. 運用成績が優れている

トータルリターンと合わせてみると、リスクを取りながらリターンを上げているか?取ったリスクの割にどの程度のリターンをあげているのか?という視点で、ファンドを分析することができます。

4-2.投資指標の組み合わせで分析の精度アップ

トータルリターンとシャープレシオの他に、標準偏差という指標があります。標準偏差は数値が大きいほどリスクが大きく、小さければリスクも小さいと読み取ることができる指標です。3つの指標でファンドを分析することで、リスクとリターンの関係性が鮮明になり、自分の許容できるリスクを考慮しつつ、ファンドを選ぶことができます。

基準価額や直近の騰落率でファンドを選ぶ方法も良いのですが、リスクを測る投資指標を読み解くことで、自分にあったファンドを選び、投資できるようになります。

5.トータルリターンを見るときの注意点

トータルリターンを見る時に注意すべきポイントを解説します。

5-1.期間に注目する

トータルリターンは、6ヶ月、1年、3年、5年、10年という幅広い期間で表示されています。どの期間で比較すると良いのか迷ってしまいますが、6ヶ月や1年の期間で見ると、相場が大きく動いた時の影響が大きく出てしまうため、基本的に3年以上の期間で見ることが望ましいでしょう。

様々な相場状況を乗り越えて、長い期間で高いトータルリターンを出しているファンドのほうが、うまく運用できているとみることができます。

5-2.未来を予測する指標ではない

トータルリターンを始めとした投資指標は、過去の成績を表すもので、現在や未来を予測するものではありません。過去の成績がいいと未来も良い状態のまま継続しそうな気がしますが、実際には未来のことは誰にもわかりません。投資家は過去の数値から未来を予測することしかできないのです。

まとめ

楽天証券が扱うファンドから、トータルリターンが高い順に抽出してみたところ、5年間のトータルリターンが良いファンドよりも、3年以下の期間で良いトータルリターンをだしているファンドのほうが資金を集めていました。投資家は直近の成果が良いファンドに期待感を持っていることが見て取れました。

トータルリターンは、分配金や信託報酬、売買手数料を勘案した数値で、実際の損益がよりわかりやすくなっています。トータルリターンを参考にするときは、できるだけ長い期間で見ることがポイントです。

ファンドを分析する時は、トータルリターンの他に、シャープレシオ、標準偏差と合わせて多面的な見方をすることで、より具体的な運用成績を見ることができます。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。