2021年のソーシャルレンディングの貸し倒れ・分配遅延の事例は?内容と対策を検証

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ソーシャルレンディングは、投資家から集めた資金を事業者に融資したときの金利による収入を投資家に分配する投資方法です。貸付先の事業者から資金を回収できない場合には貸倒れがおき、貸し倒れにならずとも、投資家への返済や分配が遅延するリスクがあります。

2021年には、どれほどのソーシャルレンディング会社でソーシャルレンディング案件の貸し倒れや分配遅延が発生したのでしょうか。本記事では、その内容を公開情報から検証していきます。

目次

  1. ソーシャルレンディングの貸し倒れや分配遅延の事例とは
    1-1.公開されている情報と非公開情報がある
    1-2.非公開情報は案件に投資した投資家のみへの公開が多い
  2. 2021年のソーシャルレンディングの貸し倒れや返済遅延の公開事例
    2-1.OwnersBook(オーナーズブック)
    2-2.クラウドクレジット
    2-3.SBIソーシャルレンディング
  3. 貸し倒れや分配遅延の原因を検証
    3-1.OwnersBook(オーナーズブック)の返済遅延の理由
    3-2.クラウドクレジットの貸し倒れの理由
    3-3.SBIソーシャルレンディングの大規模問題の理由
  4. まとめ

1.ソーシャルレンディングの貸し倒れや分配遅延の事例とは

2021年内に発生したソーシャルレンディング会社各社の貸し倒れ、分配遅延の事例には、どういったものがあるのでしょうか。

1-1.公開されている情報と非公開情報がある

最初に確認しておきたいのが、ソーシャルレンディングの貸し倒れや分配遅延の情報については、すべてが公開されるわけではないという点です。

ソーシャルレンディング会社により返済遅延や貸し倒れが発生したときに、どの範囲までその情報を公開するのかは方針が異なっています。そのため、貸し倒れ・分配遅延の件数を単純に比較することが難しいという背景があります。

1-2.非公開情報は案件に投資した投資家のみへの公開が多い

ソーシャルレンディング会社によっては、プレスリリースで分配遅延の発生や融資先からの債務不履行について公開することがあります。一方でプレスリリースなど公の場には情報を公開せず、問題が起きた案件に投資をした投資家にのみ、分配遅延の発生や貸し倒れの情報を公開するソーシャルレンディング会社もあります。

当事者にのみ、問題に関する情報を公開しているのか、それともそのサービスに興味を持つ全ての人間がわかるように公の場に情報を公開するのか、会社ごとの情報公開の方針を知っておくことも、投資先を選ぶ時の基準の一つにもなってきます。

2.2021年のソーシャルレンディングの貸し倒れや返済遅延の公開事例

2021年に発生したソーシャルレンディングの分配遅延や貸し倒れで、情報が公開されている三つの事例を紹介します。

2-1.OwnersBook(オーナーズブック)

東証マザーズ上場企業であるロードスターキャピタル株式会社のグループ企業が運営するOwnersBook(オーナーズブック)では2021年3月に1案件で分配遅延が発生しています。

※参照:ロードスターインベストメンツ株式会社「[重要]大阪市中央区ホテル素地第1号第1回 | 貸付期間延長について

この案件は、大阪市内にあるホテルを取り扱っています。当初は2021年3月に売却が完了し投資家に出資金の返済が行なわれる予定でしたが、物件の売却が想定通りに進まず、運用期間を1年間延長するとしています。

そのため投資家へは2022年1月時点でも分配が行われています。当初の予定通り1年の運用期間延長で投資家に償還が行われるのか注意しておきたいポイントです。

2-2.クラウドクレジット

クラウドクレジットでは、2021年11月に同社のカメルーン案件で、大規模な貸し倒れが発生したことを報告しています。

クラウドクレジットは先進国における海外案件を専門としているソーシャルレンディングであり、日本国内の案件よりも貸し倒れが発生する可能性が高くなる傾向にあります。

実際に同社の案件では、約1割の案件で投資家が損失を発生させています。一方で大きな高利回りを見込める案件もあるので、クラウドクレジットでも1つの案件に資金を集中させず、分散投資によるリスクカバーを推奨してます。

特にカメルーンでは大規模な貸し倒れによる投資家の損失が発生したことで、「カメルーン中小企業支援プロジェクトおよびカメルーン農業支援ファンドの償還についてのご報告」にまとめて情報公開しています。

同社の報告書を見ると、カメルーン国内で貸し付けを行ったものの、改修などを担当する現地の金融機関との契約内容の相違により、資金を満足に回収できなかったとしています。案件の中には、投資家からあつめた資金の1割程度しか投資家に対して返済されず大幅な損失が発生した案件もあります。

2-3.SBIソーシャルレンディング

2021年2月には、SBIソーシャルレンディングにおける融資先企業のモニタリング不備が「重大な懸案事項」として同社から報告されました。(※参照:SBIソーシャルレンディング株式会社「当社が取り扱う一部ファンドに関するお知らせ」)

規模は大規模にわたり、第三者委員会による「調査報告書(令和3年4月28日)」では、特定の会社に対し約384億円を融資した事例もあり、その大半で事業の未遂行などの問題があったとしています。

SBIソーシャルレンディングはすでにソーシャルレンディング事業の停止を発表し、2022年1月時点では、融資した資金回収業務を中心に行なっています。一方、SBIソーシャルレンディングは自社のモニタリング不備における責任が大きく、投資家に対しては未償還金の返済を実施しています。そのため、2021年3月期決算では150億円規模の損失を計上しました。

3.貸し倒れや分配遅延の原因を検証

各事例の内容を見て、なぜ分配遅延や貸し倒れは発生したのかを検証しましょう。

3-1.OwnersBook(オーナーズブック)の返済遅延の理由

OwnersBookの分配遅延が発生した理由は、以下のように記載されています。

新型コロナウイルス感染拡大に伴うインバウンド客の一時的な落ち込みと不動産取引量の一時的な停滞等により、担保不動産の売却が最終期限内に整わないこと

※引用:「[重要]大阪市中央区ホテル素地第1号第1回 | 貸付期間延長について

コロナ禍の収束がなかなか見えない中、海外からの観光客も見込めず観光施設は各地で苦戦を強いられています。そのためホテルの売却先が見つからず、やむを得ず運用期間を延長しています。

この案件ではホテル用地のおおまかな住所が公開されています。運用対象であり、担保でもある土地の金銭的な価値は把握しやすいものとなっています。

案件の募集がコロナ禍前であり、本件のような返済遅延の発生は想定しにくいところです。突発的なトラブルが起きることも想定し、資金を集中させないようにするなどの対策が重要と言えるでしょう。

3-2.クラウドクレジットの貸し倒れの理由

クラウドクレジットのカメルーン案件の大規模な貸し倒れの理由は、報告レポートにあるようにカメルーン国内で金融サービスを運営する提携業者のオペレーション遂行能力や、クラウドクレジットとの意思疎通問題、日本に対しての送金が停止したことなどが挙げられています。すでにクラウドクレジットではこの会社との契約を停止しています。

このカメルーン案件の募集は2016年から行われていたものであり、2017年にはすでに問題が発覚していました。クラウドクレジットがソーシャルレンディング事業開始から比較的初期に募集した案件であったこともあり、提携会社のモニタリングや現地調査が不十分であったことなどが原因として考えられます。

海外案件に投資する時は分散投資を行うこと、また融資と償還実績がある案件に投資するなどのリスク対策が考えられます。

3-3.SBIソーシャルレンディングの大規模問題の理由

SBIソーシャルレンディングの問題は非常に大規模であり、融資先へのモニタリング不備を起因としています。投資家がSBIソーシャルレンディングからの公開情報で、これほどの大規模の問題を見抜くことは、大変に困難であったと推測されます。

なお、SBIソーシャルレンディングは、投資家の損失が発生しないように未償還金額の償還を実行しており、投資家の損失は小さなものとなっています。大手金融グループSBIホールディングスを親会社に持つSBIソーシャルレンディングであったからこそできた対応だと言えるでしょう。

投資家のリスク対策上では、資本力のある上場企業が運営するソーシャルレンディングサイトへ投資したからこそ、一定の保証を受けることができた、という見方もできます。

他のソーシャルレンディング会社から同様の対応が実施されたことはありません。あくまでも、豊富な資金力を持ち、かつ投資家からの信用毀損を起こさないための特例だとも捉えられます。

ソーシャルレンディングへの投資を検討する際は、融資先企業の見極めだけでなく、サービスを提供する事業者の規模や過去の対応内容についても重要なポイントとなってきます。投資する案件を分散する際は、1つのプラットフォームだけでなく、複数のサービスを利用することも検討されてみると良いでしょう。

まとめ

2021年は、複数のソーシャルレンディングサイトで分配遅延や貸し倒れが発生しました。

特にSBIソーシャルレンディングの問題は、国内第1位の募集規模の同社が事業を停止するほどの事態でした。投資家の損失はほぼ発生しなかったものの、ソーシャルレンディング業界に与える影響も大きかったとみられます。

OwnersBookの分配遅延は原因が明確であり、運用対象の物件も情報も公開されているため投資家に対しての影響は比較的軽微であると言えます。

クラウドクレジットでは、当初方ある程度貸し倒れが発生することを前提として、分散投資をソーシャルレンディング投資家に呼びかけています。

ソーシャルレンディング案件に投資をする時は、担保物件の確認やその担保の金銭価値の確認、を行い、またソーシャルレンディングサイトや融資先の会社の分散投資をして、リスク回避対策を行っていきましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム

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