株式投資の方法(投資スタンス)には、短期投資と長期投資があります。短期投資は、デイトレードに代表されるようにタイミングを見て売買を繰り返すことで利益をあげる投資方法で、長期投資は日々の株価の動きにとらわれずに企業の成長に期待し、保有を継続する投資方法です。
今回は、株式投資における短期投資・長期投資それぞれのメリット・デメリットや具体的な投資方法などについて解説します。
目次
- 株式投資における短期投資のメリット
1-1.損益がすぐに確定する
1-2.時間のかかる財務分析が不要 - 株式投資における短期投資のデメリット
2-1.株主優待や配当金がもらえないことも
2-2.大きな利益を得ることができない
2-3.手数料等のコストが高い
2-4.チャート分析の手法が多く、売買のタイミングは様々 - 株式投資における長期投資のデメリット
3-1.大きな値上がり益が期待できる
3-2.配当金や株主優待がもらえる
3-3.手数料等のコストが低い
3-4.目先の乱高下を無視できる - 株式投資における長期投資のデメリット
4-1.長期間資金を寝かしてしまう
4-2.投資先企業を精査する必要がある
4-3.銘柄選びに財務分析等の知識が必要 - 株式の投資方法
5-1.IPO投資
5-2.短期投資:チャート分析
5-3.短期投資:ロング・ショート
5-4.長期投資 - まとめ
1 株式投資における短期投資のメリット
短期投資をする場合には、始める前に売買のルールを作るようにしましょう。例えば購入した株が買値から5%上下した場合に反対売買(買っていたら売り、売っていたら買い)を行うというように、いくらになったら売却(利益確定、損失確定)するかを予め決め、それに従い売買を行いましょう。
人はどうしても損切をすることにためらいを感じるため、はじめのうちは実行するのは難しいのですが、放置しておくと損失が拡大し、身動きが取れなくなってしまう場合があります。そのためルールに機械的に従い、反対売買をすることが重要です。早いうちに損失を確定することで新たな投資が可能となります。
まず、以下で短期投資のメリットについて説明します。
1-1 損益がすぐに確定する
短期投資のメリットは、すぐに利益が確定することです。株価が上昇し、自身の決めた売買ルールでの売却水準に達したら売り、株価が下落し損切り水準に達したら売りというルーティーンを繰り返すことで、資金を効率良く回転させることができます。
1-2 時間のかかる財務分析が不要
銘柄選びはチャート等のテクニカル分析の手法を利用し選定します。テクニカル分析では過去のデータを基に算出されたポイント(価格)で株の売買を行うため、面倒な企業分析の必要がありません。
テクニカル分析をおこなう上では過去のデータが必要ですが、証券会社各社がホームページ上で提供しているスクリーニング(銘柄条件検索)を使うことで解決できます。
2 株式投資における短期投資のデメリット
短期投資のデメリットには以下のような点があります。
2-1 株主優待や配当金がもらえないことも
短期投資は売買を繰り返すため、株主優待や配当金を受け取ることが決まる日(権利確定日)に株を保有していない場合も考えられます。その場合、株主優待や配当金を受け取ることはできません。
2-2 大きな利益を得ることができない
短期投資は小刻みに売買を繰り返しながら利益を獲得する投資方法で、長期投資のように大きなトレンドを取る手法ではないため、大きな収益は期待できません。
2-3 手数料等のコストが高い
売買を繰り返すために、必然的に手数料が増える傾向にあります。証券会社では1取引のたびに手数料を徴収する体系を取っているものも多いため、手数料負けして投資効率が悪化する場合もあるため注意しましょう。
しかし、デイトレードなど短期売買をする方向けに、一日の約定代金で手数料が決まる体系を用意している証券会社もあります(SBI証券、楽天証券、岡三オンライン、松井証券など)。短期売買をする場合はこれらの証券会社を利用すれば手数料に関するデメリットを解消することができます。
2-4 チャート分析の手法が多く、売買のタイミングは様々
チャート分析には、移動平均法、酒田五法、MACD(マックディー)、ボリンジャーバンド、ガンチャート、RSI、一目均衡表、エリオットウェーブなど様々なものがあります。それぞれ使い方やチャートポイントが異なるため、買いサイン、売りサインも様々です。
最初は移動平均法から入り、慣れてきたら他の分析手法と組み合わせることで、より正確な売買ポイントを見つけることができます。
なおSBI証券のホームページ上には、チャート形から銘柄を検索する「チャート形状銘柄検索」という初心者でも分かりやすい検索機能があります。
3 株式投資における長期投資のメリット
長期投資は、目先の株価の値動きにとらわれずに、企業の長期的な成長に期待し投資する方法です。株価に含み益が出ても、損失が発生しても、すぐには決済せずに投資し続けることで将来的に大きな資産を築き上げることが目的です。
以下、メリットをまとめます。
3-1 大きな値上がり益が期待できる
長期投資では成長が期待できる銘柄に投資をするため、将来大きな値上がり益も期待できます。アップルの時価総額(株価×発行済み株式数)は、1980年12月の上場当時17.8億ドルでしたが、2021年2月時点では2.273兆ドルと当時の約1,276倍にもなっており、株価も大きく上昇しています。
もちろんアップルの例は稀なケースですが、長期的に2倍、3倍に成長する株は数多く存在しています。第2、第3のアップルのような企業をみつけて投資することができれば、将来的に大きな資産を築く可能性が広がります。
3-2 配当金や株主優待がもらえる
株主は、定期的に配当金や株主優待をもらうことができます。配当金は、企業業績の成長とともに増額される傾向にあるため、株価の上昇とともに配当金の増額が期待できることもメリットです。
3-3 手数料等のコストが低い
長期投資では売買頻度が低いため、手数料等のコストを低く抑えることができます。
3-4 目先の乱高下を無視できる
目先の株価の乱高下を無視することができることもメリットです。長期投資における株価売却のタイミングは、企業業績悪化等のファンダメンタルズの変化が目途となるため、日々の株価に一喜一憂する必要はありません。
とはいっても、目先の株価が下落したり含み損が発生したりすれば、どうしても不安になってしまうものです。しかし、そんな場合でも数年先の企業の成長と株価の上昇に期待し、あらかじめ決めた損切りラインまで株価が到達しない限りは保有を続ける姿勢が必要です。
4 株式投資における長期投資のデメリット
将来的に大きな利益を狙える長期投資ですが、デメリットもあります。
4-1 長期間資金を寝かしてしまう
長期間保有するため、その間資金を寝かせてしまうことになります。何らかの出来事によって現金に余裕が無くなった時でも、むやみに投資資金を引き揚げては長期投資のメリットを享受できません。
そのため、長期投資をする際には余裕資金を活用しましょう。数年引き出せなくても、あるいは無くなっても生活に支障のない金額であれば、予定通り長期的に株を保有し続けられる可能性は高くなります。
4-2 投資先企業を精査する必要がある
長期投資においては、投資先の企業が良好な状態かを確認するため、財務データや事業の見通しをチェックする必要があります。
企業は3ヵ月に一度決算発表を行います。投資先の決算内容はその都度確認するようにしましょう。内容次第では、株を売却するタイミングとなります。加えて世の中の動向や競合企業の状況なども情報収集を行い、投資先の企業が今後業績を伸ばせるかどうかを定期的に確認し直す作業も必要です。
4-3 銘柄選びに財務分析等の知識が必要
投資銘柄を選ぶ際には、財務分析の知識が必要です。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書が読めると便利です。最初は難しく感じると思いますが、ポイントをつかめば読みこなすことができるようになります。
また社会の流れを読んだり、ビジネスモデルや経営の優位性を発見したりするスキルも役に立ちます。日々ニュースや業界の動向、ビジネスや経営について学ぶことで、より精度の高い銘柄選定が可能になります。
5 株式の投資方法
ここでは、短期投資、長期投資のぞれぞれの投資方法について解説します。
5-1 短期投資:IPO(新規公開株)投資
IPO投資とはこれから上場する株式を購入し、上場時(初値)に売却する方法です。初値が公募価格を上回ることが多いため、IPOの抽選に当選すると比較的簡単に利益をあげることができます。
難点はIPOの抽選倍率が高いため当選確率が低いことです。複数の証券口座を保有し、IPOに申し込み続けることで当選確率を上げることができます。また投資額が大きい方であれば、大口顧客に有利な抽選システムを提供する野村證券などの店頭証券を、逆に少額投資をする方なら、ネオモバやマネックス証券など完全平等抽選方式や若年層優遇を採用する証券会社を選ぶと当選確率を上げることができます。
5-2 短期投資:チャート分析
チャート分析にはいろいろな方法があり、分析におけるルールに沿って売買を繰り返します。移動平均線や、ローソク足の形状や組み合わせ等で相場の強弱を計り、売り買いします。各証券会社の取引ツールには、簡単にチャート分析などのテクニカル指標を確認できるシステムが搭載されているため、有効活用しましょう。
5-3 短期投資:ロング・ショート
ロング・ショートは2銘柄の価格差に注目した取引手法です。価格差の平均を基準とし、その水準からのかい離に注目します。同業銘柄や相関係数の高い銘柄を組み合わせることで、精度を上げることができます。買いと空売りを同時に行うため、信用口座を開設する必要があります。
5-4 長期投資
売上が右肩上がりで営業利益率が高く(市場占有率が高い)、株価水準が割安な銘柄に投資するのがセオリーです。こうした銘柄を絞り込むために、証券会社のスクリーニング(銘柄条件検索)機能を使いましょう。例えば、売上成長率、営業利益率、PERの項目で絞り込みます。売上成長率や利益率の数値を低く、PERを高くすることで検索銘柄数を増やすことができます。
スクリーニングでピックアップされた銘柄については、有価証券報告書や決算短信に目を通すことで、その会社の情報を得ることができます。有価証券報告書や決算短信は、各社のホームページ上のIR情報ページで確認することができます。
まとめ
株式投資の方法(スタンス)には短期と長期投資の2つがあります。短期はデイトレードに代表されるようなゲーム感覚のある売買で、長期は年単位でのバイ&ホールドのスタンスが基本です。
初心者の方は、デイトレードよりも長期投資が向いています。投資にはロスカット(損切り)が重要ですが、初心者の方にとっては損失を出してまで株を売却することは難しいでしょう。長期投資が前提ならば、多少株価が下落したところであわてて売却する必要もありませんし、配当金や株主優待をもらうこともできます。
まずは長期投資から検討し、投資を続ける中で徐々に自分自身の取引感覚を養うと良いでしょう。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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