アノマリーとは?主な事例と株価変動の実績、年間表も

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投資におけるアノマリーとは、具体的な根拠があるわけではないものの、よく当たるといわれるマーケットにおける経験則のことです。この記事では、代表的なアノマリーについての事例と、株価の値動きについて解説します。

目次

  1. 小型株効果
  2. 1月効果
  3. 4月に日本株は買われやすい
  4. セル・イン・メイ(5月)
  5. 8月の円高
  6. 年末ラリー(12月)
  7. まとめ

1.小型株効果

小型株効果とは、時価総額が小さい小型株の方が、大きい大型株よりも相対的に収益率が高くなりやすい傾向のことです。

現代ポートフォリオ理論では、市場が効率的であれば大型株、小型株にかかわらず、株価はそのリスクによって決まるとしています。ですから、小型株が大型株よりも相対的にリターンが高くなるというのは、現代ポートフォリオ理論では説明できないのです。

ただ、小型株効果の理由として、主に以下の2つが考えられます。

1.小型株には成長株が多い

小型株にはベンチャー企業などの新興企業が多いので、株価が大きく値上がりする可能性があります。一方の大型株は成熟企業が多いので、大きな利益の伸びは期待しづらく、株価も小型株に比べて緩やかな値動きになる傾向があるのです。

2.小型株には「専業化」している企業が多い

小型株には、特定の分野に強い特徴のある企業が多い傾向にあります。市場が成熟化する中で企業間の競争は激しくなっており、事業に特徴がある企業が業績を伸ばしやすい時代になっているといえます。

2.1月効果

「1月効果」とは、株式市場で1月の収益率がほかの月よりも高くなりやすい現象のことです。そして、1月の株価が強いと、「その年の株価は上昇する」というアノマリーもあります。

年末になると税金対策としての売りがでやすくなる一方、年明けには新規の資金流入がしやすいことが、1月効果の要因といわれているのです。とくに、大型株よりも小型株の方が上昇しやすい傾向にあります。

3.4月に日本株は買われやすい

4月の日本株は強いことで知られています。これは、新年度で機関投資家からの買いが入ることや、年金資金の新年度の配分が4~5月にあるためといわれています。さらに、外国人投資家も4月に日本株を買う傾向があるのです。

外国人投資家は、株の売却益については日本で課税されませんが、配当に関しては源泉徴収されます。日本企業の多くは3月決算なので、配当課税を回避するために3月末までに日本株をいったん売却し、4月に買い戻すというインセンティブが働くのです。

2002年から2020年までの19年間の4月の売買動向を見ると、外国人投資家は18回も日本株を買い越していました。外国人保有株比率が高く、配当利回りの高い銘柄ほど、このアノマリーは当てはまりやすくなると考えられます。

4.セル・イン・メイ(5月)

「セル・イン・メイ」は、もっとも有名なアノマリーの1つです。そして、「バット・バイ・バック・イン・セントレジャーズ・デー」という言葉が続きます。セントレジャーズ・デーとは、イギリスの競馬レースで、9月の第2土曜日に開催されます。

つまり、5月に株を売って、9月の半ばに株式を再び買い戻せという意味なのです。セル・イン・メイの明確な根拠はありませんが、5月はヘッジファンドなどの決算が集中するので売りがでやすくなることや、夏場は夏期休暇を取る市場参加者が多いことからマーケットが軟調になりやすいことが原因といわれています。

セル・イン・メイは米国のアノマリーですが、日本の株式市場は米国株式市場と連動することが多いので、日本の株式市場でもセル・イン・メイが意識されやすくなっています。もちろん、あくまでも経験則なので、毎年セル・イン・メイが正しいわけではありません。

ただ、市場参加者がセル・イン・メイを強く意識するようになったのが、2008年のリーマンショック後の株価です。2008年秋に急落したNYダウは、2009年3月に底入れして2010年4月まで上昇。しかし、2010年5月に崩れて8月まで調整局面となりました。そして、9月末から再び上昇相場となったのです。

5.8月の円高

為替市場では、「8月は円高」というアノマリーがあります。8月には、米国債の償還が集中します。ですから、米国債を持っている日本の機関投資家は、戻ってきたドルを円に変える動きをするのです。

また、米国の投資家の多くが、夏期休暇前にリスクの低い資産である米国債に資金を移す動きをするので米長期金利が低下。日米の金利差縮小によって円高・ドル安が進みやすくなるのです。

2016年~2020年の5年間における8月の月間騰落率を見ると、2017、2018、2019年の3回で円高・ドル安が進み、2020年はほぼ横ばい、円安・ドル高になったのは2016年だけになります。また、8月は投資家や企業が夏休みに入るので、為替の取引量が細ります。薄商いの中で悪材料がでれば、円相場が急騰する「フラッシュ・クラッシュ」が起きやすくなるので、注意が必要です。

6.年末ラリー(12月)

株式市場には、「年末ラリー」というアノマリーもあります。これは、年末にかけて株価が上昇していくという経験則です。米国では「サンタクロースラリー」とも呼ばれています。年末になると、クリスマス休暇を取る市場参加者が多く、売り圧力が弱まるので株高になるという現象です。

ただ、年末にかけては税金対策のために売りをだす投資家もいるので、個別株を保有している場合は注意が必要です。

まとめ

月ごとのアノマリーをまとめると、以下のようになります。

1月 1月効果
4月 日本株に買いが入りやすい
5月 セル・イン・メイ
8月 夏の円高
12月 年末ラリー

あくまでも過去の経験則なので、必ず毎年当たるわけではありません。ただ、アノマリーを意識している投資家も多いので、株を取引するときはアノマリーを確認するようにしてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011