株の買い時・売り時はどう判断する?状況別にポイントを解説

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株の「買い時・売り時の判断」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。チャートが頭に浮かんだ方も多いかと思いますが、チャートを用いる売買の判断は「テクニカル分析」と言われ、主に短期投資に使われます。ただし、この方法のみで勝ち続けることは難しいと言えます。

一方、長期投資では、株価が割安な時に購入し、割高な水準で売却します。長期間にわたって株式を保有することで、資産を数倍、数十倍に増やすことを目的とします。株式投資の醍醐味は長期投資にあるという見方もできます。

そこで、今回は長期投資に着眼点をおき、株の買い時・売り時の判断や状況別にポイントを解説します。

目次

  1. 長期投資家の心得
    1-1.株価が暴落しても慌てない
    1-2.投機家ではなく投資家になる
    1-3.目先の利益に惑わされない
  2. 株の買い時・売り時の判断
    2-1.割安な水準で買う
    2-2.売る基準を決める
    2-3.企業の「ファンダメンタルズ」が悪化したら売る
    2-4.割高になったら売る
  3. まとめ

1.長期投資家の心得

長期投資では、購入した銘柄を数年、数十年にわたり保有するため、倒産リスクが低い企業を投資の対象とします。また、投資したら目先の株価変動に一喜一憂しないことが大切です。そのため根拠と自信を持って投資対象を選ぶ必要があります。

1-1.株価が暴落しても慌てない

長期投資の心得として株式市場を信じる必要があります。株式会社は資本主義の中核を担うものです。株式市場は何度も暴落を経験し現在に至ります。株価が暴落しても慌てる必要はありません。長期投資の対象となる銘柄は、暴落してもいずれ株価が元の水準に戻る可能性が高い銘柄だからです。

1-2.投機家ではなく投資家になる

株式市場には「投機家」と「投資家」が参加しています。「投資家」として参加し、利益を上げるために、企業分析をしながら株の売買時を判断することが大切です。

「投機」は、機をみて売買を頻繁に繰り返すことで利益を上げる取引のことです。時には「信用取引(借金をして取引)」を行うこともあります。株価の動きが激しい銘柄が投機の対象となり、企業のファンダメンタルズ(業績や財務状況など)は無視される傾向にあります。

投機取引はゼロサムゲームのため、勝ち続けることは至難の業です。投機の対象となりやすい銘柄は割高な小型株が目立つため、高値で買ってしまうと取り返しのつかないことになってしまいます。

一方、「投資」とは、長期的な視点で企業の成長性に資金を投じることです。「投資家」は企業分析をし、株価が割安になった時に投資をすることで下値不安を取りのぞき、割高な水準に達したら売却します。長い目線での資産形成を考えると、この投資家の方が資産を増やすために取るリスクは少なく、投機より望ましいと言えます。

1-3.目先の利益に惑わされない

初心者は投資した銘柄に自信がない場合、少しの利益で株式を売却してしまう傾向があります。しかし購入した銘柄は、企業のファンダメンタルズに大きな変化がなければ、売却せず保有しておくことが長期投資の基本です。株の醍醐味は、株価が2倍、3倍に成長することです。目先の利益に惑わされないようにしましょう。

2.買い時・売り時の判断

株価の割高・割安を判断する際には、株の理論価値を独自で算出し、市場の価格と比較することが必要となります。理論株価を算出するのは専門知識が必要なため、その代わりに予想PER(株価収益率:株価を予想利益で割った値)を用いて株価水準を判断することもできます。また、企業のファンダメンタルズの変化も株の買い時・売り時を判断する材料となります。

2-1.割安な水準で買う

投資対象銘柄が日本株の場合は、TOPIXや日経平均株価などの指数のほか、同業他社の予想PERと比較します。投資対象の予想PERの方が低い場合、相対的に割安な水準と言えます。

2020年2月末頃からのコロナショックで世界中の株式市場が暴落しました。このような暴落時は投資の大きなチャンスになり得ます。暴落時には大半の株が下落するため優良株を割安な水準で購入することができます。

先日、米投資企業のバークシャー・ハサウェイが日本の5大商社の発行済株数の各5%を保有したことが話題となりました。日本の商社株は、PER10倍以下でPBR(純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄が多く、以前から割安水準で放置されていました。

コロナショックでは商社株も売られ、新型コロナ以前の水準と比べ概ね30%程度下落しました。同社はもともと割安な水準にあった商社株を、この暴落に「買い時」と判断したのです。

2-2.売る基準を決める

株が上昇している時、“まだまだ上がる”と思ってしまうこともあるでしょう。相場の格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」があります。これは売買のタイミングの難しさを意味しています。特に買い時より売り時の判断の方が難しいと感じる人が多いでしょう。

そのため売る時の基準を決めておくのも一案です。例えば売却のタイミングとして、株価が2倍に上昇した時点で保有株の半分を売却すると簿価(コスト)が0円になり、株価の上げ下げに気を揉む必要がなくなります。

2-3.企業の「ファンダメンタルズ」が悪化したら売る

保有銘柄のファンダメンタルズが悪化した場合は売却するのが、売り時判断には適切なタイミングです。

ファンダメンタルズが悪化した例としては、今回のコロナショックが挙げられます。2020年5月のバークシャー・ハサウェイの年次株主総会では、会長兼CEOのウォーレン・バフェット氏が米国航空会社5社の全保有株を売却したことを明かしました。

航空会社の収益はコロナショックにより大幅に減少し、今後も新型コロナ以前のような状況にもどることが難しいとの判断からでした。同社は、損失を出してまで保有株を売却したのですが、その背景にはファンダメンタルズが悪化し、当初の投資シナリオが崩れてしまった点があったのです。

企業のファンダメンタルズが大きく悪化した場合には、株価が元の水準に戻る可能性が低いため、迷うことなく売却することが一つの鉄則です。

2-4.割高になったら売る

割高になったら売却するというのも売り時の判断には大切です。

バークシャー・ハサウェイは、2003年に購入したペトロチャイナの株式を2007年10月に全て売却しました。2007年初頭に7香港ドルだった株価は、石油価格の上昇を背景に買われ、13香港ドルまで上昇しました。そしてこの株価上昇で9倍程度だったPERが15倍に上昇したのです。

株価の上昇でPERが割安とはいえない水準となったため、同社は株を手放したと考えられます。割安な水準で買った株が割高な水準まで買われたら、その段階で手放しましょう。

まとめ

株式投資はタイミングが大切です。より安い水準で株を購入することで下値のリスクを下げることができるためです。日頃から狙う銘柄を絞り、投資する水準を決めましょう。そして売買の水準を自ら見極め、「来るべき時に備える」という方法が王道です。

焦って売買を行わず、投資家の目線でじっくり適切なタイミングを見計らえるようにしましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。