EV化で注目の全固体電池関連銘柄、時価総額上位10本を徹底分析【2023年10月】

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トヨタ自動車が全固体電池を搭載したEV(電気自動車)を投入とのニュースが2023年6月に伝わってから、全固体電池関連銘柄に注目が集まっています。この記事では全固体電池が注目される理由と、注目の全個体電池関連10銘柄を紹介します。
※本記事は2023年10月17日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 全固体電池とは
  2. トヨタ自動車がEVで全固体電池2027年の実用化を発表
  3. 全体固体電池関連銘柄10選
    3-1.トヨタ(7203)
    3-2.村田製作所(6981)
    3-3.パナソニック(6752)
    3-4.日産自動車(7201)
    3-5.出光興産(5019)
    3-6.三井金属鉱業(5706)
    3-7.GSユアサ コーポレーション(6674)
    3-8.マクセル(6810)
    3-9.オハラ(5218)
    3-10.三桜工業(6584)
  4. まとめ

1.全固体電池とは

「全固体電池」は、従来のEV(電気自動車)やハイブリッド車(HEV)に搭載されているリチウムイオン電池やニッケル水素電池に比べて、電池のエネルギー密度を高めることができる革新的な技術です。

従来のリチウムイオン電池やニッケル水素電池では、液体の電解質を使用して充電を行っていましたが、全固体電池では電解質を固体に変えることで、さらなる性能向上が可能となります。この新しい電池技術は、次世代のEVにおいて重要な役割を果たすと期待されています。また、全固体電池の普及により、自動車産業におけるエネルギー効率と競争力が向上し、市場に新たな投資機会が生まれる可能性があるのです。

「全固体電池」は、従来の電池よりも小さなサイズで大容量の電力を供給できるため、EVの航続距離が延び、充電時間も大幅に短縮される可能性があります。よって、この新しい電池技術の実用化により、EVの使い勝手の向上が期待されているのです。

また、固体の電解質を使用することで、リスクの低い安定性が実現され、火災のリスクも軽減されます。全固体電池は、高いエネルギー密度と安全性を兼ね備えた画期的な技術といえるでしょう。

2.トヨタ自動車がEVで全固体電池2027年の実用化を発表

トヨタ自動車(7203)は、次世代電池「全固体電池」を搭載した電気自動車(EV)を2027年にも実用化する方針を明らかにしました。この全固体電池EVは、わずか10分以下の充電で約1,200kmを走行できる革新的な性能を持ち、現行EVの2.4倍の距離をカバーします。

このニュースが6月13日に報じられると、トヨタ自動車の株価は急騰し、株価は2日間で13.6%、時価総額は4兆円以上も増加しました。これは全固体電池への期待感の高さを物語っています。

参照:ロイター「トヨタ、全固体電池を27年にもEV向け投入 航続距離1200キロ

トヨタ自動車は、EVの実用化だけでなく、水素を燃料にした車も強化し、複合的な戦略で脱炭素の取り組みを進める予定です。このような取り組みにより、トヨタ自動車は競争力を高めた車種を2030年までに世界販売目標の350万台のうち170万台に投入する計画です。

全固体電池の実現により、EVの普及促進と環境への貢献が期待されます。トヨタ自動車の取り組みは、持続可能な未来の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

参照:NHK「トヨタ自動車 早ければ2027年 EVで「全固体電池」実用化へ

3.全体固体電池関連銘柄10選

それでは、全個体電池の代表的な銘柄を紹介します。※株価は全て2023年10月11日時点

3-1.トヨタ(7203)

  • 株価    2,651円
  • 時価総額  43兆2,510億円

トヨタ自動車はこれまで、EV戦略において後れを取っていると指摘されてきました。そのため、財務面や収益性において強固な基盤を持ちながらも、最近まで積極的な評価は得られていませんでした。しかし、将来的には競合他社よりも早く「全固体電池」の開発・実用化に成功すれば、トヨタ自動車の地位は一変する可能性があります。

トヨタは全固体電池で1,000以上の特許を取得しており、2020年夏に初めて全固体電池を搭載した車両でナンバーを取得しています。全個体電池の2027年の実用化に期待です。

3-2.村田製作所(6981)

  • 株価 2,698.5円
  • 時価総額 5兆4,710億円

村田製作所は、携帯型電子機器向けの全固体電池の開発に成功しています。独自の酸化物型セラミック材料と積層セラミックコンデンサーの技術を活用しています。この電池は安全性、耐熱性、不燃性に優れ、安定した電力供給が可能です。

小型の試作品では最大容量10mAhの出力を確認し、ワイヤレスイヤホンなどの電源に適しています。村田製作所は電子部品大手であり、ソニーグループからリチウムイオン電池事業を譲受しました。この全固体電池の開発により、携帯機器向けなどの小型市場に強みを持っています。

参照:村田製作所「IoT機器の利用シーンの拡大、 ウェアラブル機器の進化を支える ムラタの酸化物型全固体電池(後編)

3-3.パナソニック(6752)

  • 株価 1,612.5円
  • 時価総額 3兆9,574億円

パナソニックHDは、車載用のリチウムイオン電池で国内トップの地位を持ち、テスラとの提携で注目を浴びています。また、全固体電池の研究開発においてもトヨタ自動車と提携しており、特許も多く取得しています。

パナソニックHDは2023年9月に全固体電池を初公開しました。充電時間は3分で充電サイクル寿命も長いことが特徴です。特に、ドローンなどの短時間で充電が必要な用途において有望視されています。パナソニックHDは2020年代後半に小型の全固体電池を量産し、ドローン向けに利便性の高い充電を実現する計画です。

全固体電池はEVの次世代車載電池として期待されており、トヨタ自動車も実用化を目指しています。

参照:日経XTECH「パナソニックHDが全固体電池、3分で充電可能

3-4.日産自動車(7201)

  • 株価 631.3円
  • 時価総額 2兆6,645億円

日産自動車は、2028年までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場投入する予定です。量産化のための試作ラインを横浜工場に設置し、技術開発に取り組んでいます。全固体電池のコストレベルは、2028年までに1kWhあたり75ドルまで低減可能と評価されています。これにより、EVの普及が加速し、持続可能なモビリティへの転換を促進することに期待です。

参照:日産「全固体電池

3-5.出光興産(5019)

  • 株価 3,172円
  • 時価総額 9,448億円

出光興産は、2024年に硫化物系固体電解質の大量生産に着手する予定です。このプロジェクトには290億円の投資が行われ、千葉事業所には100トンの製造ラインが設けられます。これにより、自動車メーカーや電池メーカーへの供給が可能となります。

Umicore(ベルギー)との共同研究により高性能材料の開発も進められます。この取り組みにより、日本は全固体電池の開発でリーダーシップを発揮しているのです。出光興産は、次世代エネルギー事業にも注力し、化石燃料に依存しない未来への貢献を目指しています。

また、2023年10月12日にトヨタ自動車と出光興産は、次世代の「全固体電池」の量産化に向けて協業することで合意しました。両社は共同で実証を行い、将来の事業化を検討します。全固体電池は、充電時間を短縮し走行距離を伸ばすことが期待されており、トヨタは2027年に実用化を目指しています。

参照:NHK「トヨタと出光が「全固体電池」の量産化へ 協業することで合意

3-6.三井金属鉱業(5706)

  • 株価 3,727円
  • 時価総額 2,137億円

EVで注目の全固体電池に関して、三井金属鉱業(5706)は全固体電解質「A-SOLiD」を開発し、量産試験用設備からのサンプル供給を開始しました。同社の固体電解質は高いリチウムイオン伝導性と安定性を持ち、EV用途向けの需要が増加しています。2023年には生産能力を倍増し、トヨタ自動車などへの採用も期待されています。

参照:三井金属「全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD™」

3-7.GSユアサ コーポレーション(6674)

  • 株価   2,544.5円
  • 時価総額 2,050億円

全固体電池のキーマテリアルである「全固体電解質」の実用化に向けた研究成果を評価され、「電池技術委員会賞」を受賞したGSユアサは、硫化物系全固体電池の安全性向上と水分との反応を抑制する取り組みに注力しています。固体電解質のイオン伝導率向上と耐水性の改善に努め、効率的な開発を進めました。これにより、全固体電池の実用化への飛躍的な進歩が期待されます。

参照:GSユアサ「全固体電池の実用化に向けた研究成果で「電池技術委員会賞」を受賞

3-8.マクセル(6810)

  • 株価 1,632円
  • 時価総額 811億円

マクセルは高品質な全固体電池を開発し、産業機械向けの大容量の全固体電池の量産に踏み切りました。これに続いて、IoT機器やウェアラブル機器向けの小型全固体電池の量産を計画しています。全固体電池は広い作動温度範囲と高い耐候性を持ち、半永久的に使用できる可能性があるのです。マクセルの取り組みは、医療機器や極限環境でのセンシング技術への貢献が期待されています。

マクセルは全固体電池を新たな柱として育成し、発泡成形技術を生かした製品群や自動車のヘッドアップディスプレーなど新事業に取り組んでいます。京都事業所では量産が始まり、工場自動化機器やウェアラブル端末での採用が進んでいます。富士経済の調査によると、全固体電池の世界市場は急成長し、マクセルが手がける硫化物系全固体電池の市場も2040年に2兆3762億円に拡大する見込みです。

参照:ニュースイッチ「「全固体電池」新たな柱に、マクセルが事業構造転換へ総仕上げ

3-9.オハラ(5218)

  • 株価 1,350円
  • 時価総額 343億円

オハラは光学ガラスのパイオニアで、ガラス素材、レンズ材などの製造や販売を手掛けています。特にエレクトロニクス事業で半導体製造装置向けの高均質ガラスや極低膨張ガラスセラミックスを製造し、収益力が高いです。

また、トヨタとの共同特許出願により、全固体電池関連としても注目されています。オハラはリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの技術を持ち、次世代電池の素材として期待されています。オハラは光事業とエレクトロニクス事業の拡大により成長しており、将来の成長が注目されています。

3-10.三桜工業(6584)

  • 株価 926円
  • 時価総額 343億円

三桜工業は自動車用の配管部品が主力で、米ソリッド・パワーへの出資を発表しました。ソリッド・パワーは全固体電池の研究開発や製造を手掛けており、提携するBMWに研究ライセンスを付与する予定です。また、トヨタが2027年に全固体電池搭載のEVを投入すると伝えられており、航続距離が現行のEVの2.4倍になると報じられています。これにより、全固体電池の市場拡大が期待され、関連銘柄の同社が買われる展開となりました。

参照:三桜工業「Solid Power Inc.への出資のお知らせ

4.まとめ

2023年6月にトヨタ自動車が全固体電池を搭載したEV(電気自動車)を投入とのニュースが流れてから、リチウムイオン電池に代わる次世代電池として全固体電池への関心が高まっています。今後も関連銘柄には株式市場の注目が集まる可能性があるため、関連銘柄の動きを確認してみると良いでしょう。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011