業績が好調・不調なセクターは?背景と今後の展望をベテラン投資家が解説【2023年2月】

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2022年は米国の利上げやロシアとウクライナの戦争によるインフレ率の高まりで、日本の株式市場は上値の重い展開になりました。2023年も引き続き厳しい環境が続く可能性がありますが、この記事では20年以上の投資経験を持つ筆者が、今後の投資判断のご参考のため、2023年の日本の株式市場の好調・不調セクターと、今後の展望について解説します。

※2022年1月30日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 業績が好調なセクター
    1-1.自動車
    1-2.金融
    1-3.商社
    1-4.情報通信
  2. 業績が不調なセクター
    2-1.半導体などのエレクトロニクス
    2-2.機械
  3. まとめ

1.業績が好調なセクター

2023年に増益が期待できるのは、自動車、金融、商社、情報通信です。それぞれのセクターの見通しについて解説します。

1-1.自動車

自動車分野では、半導体の供給不足が解消され、大幅な増産が可能になると考えられます。そして、2023年の国内新車市場は、5年ぶりに前年実績を上回りそうです。2022年後半から新車供給が回復しており、納期も一部で短縮の兆しが見られるからです。受注も堅調に推移しており、供給能力の回復に伴い、登録・届出台数も増加するでしょう(参照:日刊自動車新聞「2023年の国内新車市場、5年ぶり前年超えで468万台 日刊自動車新聞予測」。

ただ、物価やエネルギー価格の上昇による消費者心理の悪化や、中国の「ゼロコロナ政策」の緩和による感染症の再拡大の可能性などがリスク要因になりそうです。

1-2.金融

金融セクターの中でも、とくに銀行株に注目しています。2023年4月の日銀総裁交代が近づくにつれ、マイナス金利解除への期待が具体化し、2023年前半の銀行株の上昇をサポートすると考えているからです。

ただ、問題は銀行株の上昇がいつまで続くかです。日銀の最後の政策金利引き上げは2006年7月でした。銀行株は2005年7月に上昇を始めましたが、金融政策変更前の2006年3月に株価のピークを迎えました。

今回も、金融政策の変更が行われる時期にピークをつける可能性があるので注意が必要です。

1-3.商社

2020年のコロナ禍以降、強い逆風が吹いていた商社セクターですが、2021年後半から好調に推移しています。渡航制限の解除や円安、そして原油やLNGなどの資源価格の高騰が、海外事業を中心に高収益につながっているからです。

2023年3月期第2四半期決算では、三菱商事、三井不動産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の5社が通期純利益の予想を上方修正しました。

ただ、商社の業績は資源価格の動向に大きく影響を受けます。また、不安定な世界情勢や欧米での利上げなど、先行き不透明な状況が続いています。再生可能エネルギーへの投資や脱炭素関連ビジネスの構築など、新たな成長産業をいかに加速させていくかが大切です。

1-4.情報通信

2022年は、KDDIの大規模通信障害や楽天の0円プラン廃止などのトピックがありました。ただ、楽天の携帯電話事業への本格参入や携帯電話各社の5Gサービス開始があった2020年や、政府の値下げ要請を受けて各社が低価格のネットプランを相次いで提供した2021年と比べると、2022年は新しいトピックが少なかったと言えます。

情報通信産業の今後の成長源として期待される5G(第5世代携帯電話)サービスは、2020年に開始されましたが、現時点では控えめなスタートとなっています。ただ、KDDIは他社に先駆け、2022年3月に3Gサービスを終了しました。また、ソフトバンクが2024年1月末、ドコモは2026年3月末に3Gサービスを終了する予定で、3Gサービス終了に向けて5G端末への移行が活発化しそうです。

2.業績が不調なセクター

業績が不調と考えられるのは、エレクトロニクス、機械です。

2-1.半導体などのエレクトロニクス

2022年のエレクトロニクス関連企業の多くは、インフレの影響やサプライチェーンの混乱により、業績に悪影響を受けました。また、業績が比較的堅調だった企業も、金利上昇に伴うバリュエーション低下により、特にPERの高い企業の株価パフォーマンスが大きく悪化しました。

2023年の最終需要は、米国金利の上昇により減速が避けられないでしょう。半導体市場では、2023年前半にメモリー半導体メーカーを中心に、業績悪化のニュースが増加する可能性があります。

ただ、中国のゼロコロナ政策の大幅な緩和が新たなプラス要因になりそうです。短期的には急激な増加による混乱が懸念されるものの、人の動きが活発化することで、スマートフォンなどの買い替え需要が喚起される可能性もあります。

また、メモリー半導体の価格は在庫調整により2023年半ばには下げ止まる見込みで、2023年後半に半導体市場は明るさを取り戻す可能性があると考えています。

2-2.機械

2023年3月期は円安により過去最高の業績を計画している企業もありますが、中国のロックダウンに伴う下期のコストアップが重くのしかかっています。そして、2023年は米国や欧州の主要国の景気後退入りにより、製造業の生産活動や設備投資活動が抑制され、機械株は総じて前年比減収減益となる見通しです。

ただ、2022年は9月末時点で過去最高水準の受注残高だった機械銘柄も多くありました。2023年はこの豊富な受注残から、景気低迷によるキャンセルや延期の影響を受けずに、売上を計上できるかが焦点となりそうです。

まとめ

今回は、2023年に好調・不調になりそうなセクターについて解説しました。ただ、セクター全体の見通しも大切ですが、個別企業ごとの差もあるので、必ず企業業績なども確認して投資するようにしてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011