2021年12月現在、原材料価格高騰によるインフレ懸念が高まっています。この記事では、原材料価格の高騰によるインフレによって株価はどうなるのか、そして、どのような業種に注目が寄せられるのかについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2021年12月27日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- インフレ懸念が高まる
- インフレと株価の関係
- インフレは家計にマイナスの影響を与える
- 資源高騰は「非鉄株」にとってプラス
- 資源価格上昇で株価が上昇しやすい業種と下がりやすい業種
- 食品価格の上昇で注目される企業
- まとめ
1.インフレ懸念が高まる
主要先進国ではワクチンの普及により、コロナ禍を受けて行われていた経済活動の制限措置を緩和し、経済活動再開が進められています。しかし、供給が需要に追いついておらず、世界的にインフレ懸念が高まっています。
インフレとは、モノの値段が上がり続ける状態のことです。そして、モノの値段が上がるということは、お金の価値が下がったともいえます。たとえば、それまで100円で買えていたジュースが2倍の200円になったとします。同じジュースを買うのに2倍のお金が必要になったので、お金の価値は半分になったといえるのです。
2.インフレと株価の関係
原油や資源などの原材料価格が高騰していますが、株価にはどのような影響を与えるのでしょうか。
景気が拡大する局面では、インフレは株価にとってプラス材料になります。株価の決定要因の1つは企業業績です。景気が拡大する局面では、企業が販売価格を上げても消費意欲は衰えず、販売数量も落ちないので、企業の売上高は増加します。そして、収益拡大を反映して株価も上昇しやすくなるのです。
また、インフレになるとお金の価値が下がるので、現金よりもモノの価値が上がります。株式などの金融資産もモノの一種として投資価値が高まり、株価にプラス材料となります。
一方、景気が低迷している局面では注意が必要です。販売価格を引き上げようとしても消費意欲が高まらず、その結果、コスト上昇分などを価格に転嫁できないからです。また、販売価格を引き上げたとしても販売数量の低迷を招く可能性があるので、株価にはマイナスの影響を与える可能性が高くなります。
3.インフレは家計にマイナスの影響を与える
インフレは家計にマイナスの影響を与えます。モノやサービスの値段が上がるので、生活に必要なコストが上がるからです。たとえば、1カ月の生活費が30万円だったとして、10%のインフレが起こると、生活費は33万円に上昇します。給料が同じだけ増えればいいのですが、増えない場合は家計にとって非常に苦しい状況になるのです。
給料が増えて景気が上向くようなインフレは株価にとって追い風になりますが、モノやサービスの値段以上に収入が上がらない場合は家計が苦しくなり、個人消費が落ちるので、株価にとってマイナス材料となります。
4.資源高騰は「非鉄株」にとってプラス
資源である銅やニッケル、アルミなどの非鉄金属の価格が上昇しています。先進国のワクチン接種の進展によるコロナ禍からの景気回復や、中国の経済拡大などによって、需要が増加していることが背景にあります。
また、脱炭素の動きが加速する中、 EV(電気自動車)向けの需要が増加しているのも、非鉄金属価格上昇の要因の1つです。 EVはガソリン車に比べてモーターなどに3倍の銅を使うといわれています。さらに蓄電池にはニッケルや鉛が不可欠です。そして、EVはバッテリーが多くなるので、車体を軽くするためにアルミの使用も増えるのです。
こうした非鉄金属の上昇は、関連銘柄にとって株価上昇要因となるのです。非鉄金属関連銘柄としては、住友金属鉱山(5713)や、三菱マテリアル(5711)などがあります。
5.資源価格上昇で株価が上昇しやすい業種と下がりやすい業種
資源価格の上昇によって、産業廃棄物処理を手がけるリサイクル関連の企業の株価が上昇しやすくなります。日本には、産業廃棄物や小型家電に眠る金の埋蔵量が6,800トンあるといわれています。日本は、世界有数の都市鉱山を持つ国なのです。ですから、産業廃棄物から金などの貴金属を抽出・精製するリサイクル業者の株が上がりやすくなるのです。
ただ、原油が値上がりすると、運輸セクターは燃料費の高騰で、また小売セクターなども原材料価格の上昇で収益が圧迫されやすくなります。
6.食品価格の上昇で注目される企業
食品価格の上昇も目立ってきています。世界的な需要拡大により、牛肉や小麦粉、食用油などの原材料価格が高騰していることに加え、原油価格の上昇によって物流コストも上昇しているからです。
これまでは価格を据え置き、容量を減らすという対応をしていた企業が多かったのですが、それでは対応しきれないほど、物流コストや原材料が高騰しているのです。
牛丼チェーンの「松屋フーズホールディングス(9887)」や「吉野家ホールディングス(9861)」は、主力商品の牛丼を値上げしました。また、ニチレイ(2871)や味の素(2802)、マルハニチロ(1333)などは冷凍食品の値上げを行っています。
こうした食品の値上げによって、値段にお得感のある低価格の食品スーパーや、業務用スーパーなどに関心が高まる可能性があります。業務用食品スーパー「業務スーパー」を展開している神戸物産(3038)や、食品スーパーとホームセンターを融合した「都市型スーパーセンター」を展開しているスーパーバリュー(3094)などが一例です。
まとめ
原材料価格の高騰は、インフレを招きます。給料が上がる状況であればインフレは株価にとってプラス材料になります。しかし、日本国内では給料が上がりづらい状況なので、株価にとってマイナスの材料になる可能性があるのです。
ただ、業種別でみると原材料価格の高騰によって恩恵を受ける業界もあるので、そういった業種を中心に銘柄選定することが大切です。
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山下耕太郎
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