パナソニック「ポケットドルツ」のヒット要因は?女性に支持された理由を解説

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パナソニックの「ポケットドルツ」は、コンパクトなサイズとおしゃれなデザインが特徴の電動歯ブラシです。外出先での食後に使っている方もいるのではないでしょうか。

ポケットドルツは2010年に発売され、電動歯ブラシの市場規模を2倍近くに押し上げるほどの大ヒットを記録しました。今回はポケットドルツがここまでの成功を収めた理由を解説しますので、ヒット商品を生み出すためのヒントとして参考にしてください。
※2023年12月19日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. ポケットドルツは電動歯ブラシ市場に大きなインパクトを与えた
    1-1.停滞市場だった電動歯ブラシ市場
    1-2.ポケットドルツのヒットで市場が2倍近くに成長
  2. ポケットドルツがヒットした要因
    2-1.ターゲットを女性に絞った
    2-2.コンパクトなサイズで洗練されたデザイン
    2-3.電動歯ブラシならではの機能性
  3. 消費者ニーズを優先することの重要性
    3-1.プロダクトアウトからマーケットインへ
    3-2.消費者の声を知るにはリサーチが必要
  4. まとめ

1.ポケットドルツは電動歯ブラシ市場に大きなインパクトを与えた

ポケットドルツは2010年に発売され大ヒットし、電動歯ブラシ市場に活性化をもたらしました。

1-1.停滞市場だった電動歯ブラシ市場

それまで電動歯ブラシは良くも悪くも安定した市場であり、2006年~2009年まで、年間の売り上げ台数は220万本前後で推移していました。また使うユーザーも中高年の男性ユーザーが多く、ユーザー層も固定されていたのも特徴でした。

よって電動歯ブラシ市場では、それまで女性用に製品を作るという発想があまりなく、盲点となっていました。

参照:ダイヤモンドオンライン「「ポケットドルツ」の成功を決定づけたインサイトとは何か

1-2.ポケットドルツのヒットで市場が2倍近くに成長

停滞気味であった電動歯ブラシ市場に大きなインパクトを与え、大ヒットを飛ばしたのがパナソニックのポケットドルツです。化粧品のようなデザイン、複数色のバリエーションなど、それまでの電動歯ブラシとは一線を画する製品特徴で、多くの女性たちに支持されました。

ポケットドルツの大ヒットにより、2009年まで220万本であった電動歯ブラシ市場は、2010年に400万本と2倍近くに成長しました。大ヒットにより女性だけでなく、次第に男性の支持も集めるようになりました。外出先で手軽に歯をしっかり磨きたい男性のニーズも捉えることができたのです。

参照:ダイヤモンドオンライン「「ポケットドルツ」の成功を決定づけたインサイトとは何か

2.ポケットドルツがヒットした要因

ここからは、ポケットドルツが大ヒットを記録した具体的な理由について見ていきましょう。

2-1.ターゲットを女性に絞った

ポケットドルツは、ランチの後に歯みがきをしている20代・30代の女性に着目したのがすべてのスタート地点です。彼女たちが電動歯ブラシを使ってくれれば、停滞している市場も活気づくとパナソニック社は判断しました。

20代・30代の女性は電動歯ブラシに対して「大きい」「重い」「音がうるさい」「おしゃれでない」といった感想を持っていました。そこで、これらの課題を解決する製品を出すことで、女性たちを顧客にしようと考えたのです。

獲得すべきユーザーを明確に定めたことで、用意すべき製品や訴求ポイントも明確になりました。

2-2.コンパクトなサイズで洗練されたデザイン

ポケットドルツは「化粧品のような電動歯ブラシ」として開発されました。長さ16cm、太さ2chとコンパクトなサイズで軽いため、女性も化粧ポーチに入れて毎日簡単に持ち運べます。本体もコンパクトであり、女性の小さな口でも磨きやすくなっています。

デザインは従来の電動歯ブラシとは大きく異なり、マスカラのような洗練されたもので、化粧室など人前でも使いやすいように工夫されています。色も女性に人気のものをそろえ、現在はルージュピンク、ペールピンク、黒、白の4色で展開しています。

2-3.電動歯ブラシならではの機能性

小さめのサイズで扱いやすいポケットドルツですが、電動歯ブラシとしての機能も備えています。1分あたり約16,000回分の音波振動により、歯茎をケアしながら歯垢を落とすことが可能です。手で磨くよりしっかり汚れを落とし、歯の表面をツルツルにします。

ブラシの形状もコンパクトなヘッドで、さらにダブるエッジ形状というパナソニック社独自の形状を採用しました。歯周ポケットにブラシの毛先が届きやすく、デリケートな口腔内もしっかり磨けます。

2-4.新しい市場を創造した

ポケットドルツが創造したのは、女性向けの電動歯ブラシというそれまで存在しなかった市場でした。競合からシェアを奪う方法ではなく、新たな市場を創造することで、価格競争に巻き込まれずに顧客を獲得できました。パナソニック社の製品同士でのカニバリ(共食い)も比較的少なかったものと想像されます。

3.ポケットドルツ成功に繋がったパナソニック社の取り組み

ここまでポケットドルツのヒット要因について見てきましたが、パナソニック社が行った取り組みもヒットに貢献しています。

3-1.消費者ニーズを優先した商品開発

ポケットドルツは、消費者ニーズを優先した製品づくりを行われたこともヒットの大きな要因です。既存製品の延長線では、女性の支持を大きく集めることはできなかったでしょう。

マーケティング用語で「プロダクトアウト」とは、企業の理論・都合で商品開発を行うことです。それに対して「マーケットイン」とは、市場や顧客の声・意見に基づいて商品開発を行うことを意味します。

こう説明すると、マーケットインで進めるのが当然と考える方が多いと思いますが、日本ではプロダクトアウトの考えがこれまで根強く見られました。製造業などの日本企業の多くは、技術主導の「ものづくり」で成長してきたためです。

日本企業でよく言われてきた「良いものを作れば売れる」は典型的なプロダクトアウトの考え方です。しかしモノが溢れ、消費者ニーズも多様化した現在、プロダクトアウトの発想だけでは成長は難しくなっています。

パナソニック社はポケットドルツをマーケットインの考えで開発し、実際の消費者にも大きく支持される結果につながりました。消費者の声や意見を取り入れ、商品企画に活かしていくマーケットインの考えは今後ますます重要になるでしょう。

3-2.意見を出し合えるチーム作り

ポケットドルツの開発は、ランチ後に歯みがきをしている女性が多かったことが始まりですが、これは入社2年目の女性社員の意見でした。チームのリーダーが部下の意見を拾って大ヒットに繋がった事例でもあるのです。

このような成功を収めるには、多様な人材が意見や疑問を気軽に出せる環境が必要です。ポケットドルツを手掛けた当時のチームリーダーは他部署から来た人材でしたが、最初の1か月をメンバー1人ひとりと面談することに費やしました。「知識を貸してほしい」「助けてほしい」というスタンスで協力を依頼した結果、大きな成功を収めることに繋がりました。

4.まとめ

パナソニックのポケットドルツが大ヒットを記録した要因について解説しました。女性向けの電動歯ブラシという新たな市場を開拓し、市場全体を拡大する存在となりました。

ポケットドルツは女性の声や要望を商品開発に取り入れ、サイズやデザインなどを消費者のニーズに合うよう設定したのが大きな勝因です。マーケットインの発想で商品開発に取り組むことの重要性が分かる事例といえます。

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安藤 真一郎

マーケティング会社に勤務した後、ライター・コラムニストに転身。 さまざまなジャンルの執筆を行う途中でマネーリテラシーの重要性に気づき、現在はマネー・金融分野を中心に執筆活動を行う。投資、資産形成、年金、税制度、ローン、節約、キャッシュレス決済など多数の執筆実績あり。投資に関しては中長期での利益獲得を目指し、米国株式や先進国株式を中心とする投資スタイル。ファイナンシャルプランナー資格保有。