炭素有効利用(CCU)のスタートアップであるディメンショナル・エナジー(Dimensional Energy)は12月12日、シリーズA(資金調達ラウンド)で2,000万ドル(約28億5,000万円)を調達した(*1)。調達した資金を元手に、持続可能な航空燃料(SAF)の生産を拡大し、クローズドループ(#1)構築を推進する。併せて、B Corp(#2)認証の申請を行ったことも発表した。
今回の投資ラウンドは、韓国を拠点とするインパクト投資専門のベンチャーキャピタルであるエンビジョニング・パートナーズ(Envisoning Partners)が主導した。ユナイテッド航空のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が運営する投資ファンドであるサステナブル・フライト・ファンドやマイクロソフトのクライメート・イノベーション・ファンドなども加わった。
ディメンショナル・エナジーは、新たに調達した資金を元手に主に4つの取り組みを推進する。
①炭素回収技術を開発するSvanteと提携し、カナダにあるセメント大手ラファージュの工場から排出される炭素を利用した、世界初の先進的なパワー・ツー・リキッド(PtL、#3)プラントを建設②世界中でPtLの商用プラント建設を継続③化石燃料を使用しないサーフワックスや菜食主義の食品メーカー向けに開発された無農薬の代替脂肪など、ディメンショナル・エナジー初の消費者向け(B2C)および企業間取引(B2B)製品の発売④ディメンショナル・エナジー独自のリアクターおよび触媒技術の進化を含む技術の進歩
今日、世界中の樹木が吸収できる二酸化炭素(CO2)は、人類が毎年大気中に排出する量の僅か20%に過ぎない。そこで、CO2を利用した燃料製造に取り組むのがディメンショナル・エナジーだ。同社はパートナー企業が回収したCO2をSAFに変換する技術を有しており、航空機のカーボンニュートラル実現に貢献することで、クローズドループ構築を推進している。
ディメンショナル・エナジー独自の触媒を充填したリアクター(反応器)で一酸化炭素(CO)を生成した後、COと水素を混ぜて合成ガスを製造する。そして、フィッシャー・トロプシュ(FT)法により、合成ガスから触媒反応を用いて、SAF、再生可能ディーゼル、6,000種類以上の日用品の原料となる合成パラフィンを生成する。炭素と再生可能エネルギーを利用することで、炭化水素燃料のライフサイクル排出量を93%以上削減することができる。
ディメンショナル・エナジーは資金調達に合わせて、B Corp認証の申請を行ったことも発表した。同社のジェイソン・サルフィ最高経営責任者(CEO)は「B Corpステータスは、企業が卓越した財務業績を維持しながら、全ステークホルダーのためにポジティブインパクトを継続的にもたらすための枠組みを提供する」と述べた(*1)。
(#1)クローズドループ…従来のリニア型経済システムの中で活用されることなく廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源と捉えて循環させること。
(#2)B Corp…社会や公益のための事業を行っている企業に発行される国際的な民間認証制度。
(#3)PtL…液体燃料合成技術。SAFの製造に用いられる。
【参照記事】*1 Dimensional Energy「Dimensional Energy Secures $20 Million Series A Funding」
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