【イベントレポート】資産運用で社会貢献。インパクト投資とESG投資、寄付の関係とは

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ネクストシフトファンドセミナー「個人ができるインパクト投資 Vol.4 ~資産運用で社会貢献~」
「個人ができるインパクト投資 Vol.4 ~資産運用で社会貢献~」

社会的インパクト投資に特化したソーシャルレンディングサービスのネクストシフトファンドを運営するネクストシフト株式会社が、1月30日(木)にイベント「個人ができるインパクト投資 Vol.4 ~資産運用で社会貢献~」を開催しました。

ネクストシフトファンドとは、主に発展途上国のマイクロファイナンス融資案件といった社会的インパクト投資を行うソーシャルレンディングサービスです。鳥取銀行が株主で、厳正な融資審査基準に則って融資先を決定していることや、投資額は2万円〜、利回りは4.5%~7.2%(年率・税引前)と、少額で投資が始められることが大きな特徴です。

本イベントの中から今回は、第二部SIIF(社会変革推進財団)専務理事 青柳光昌氏によるインパクト投資が求められる背景と課題についての講演と、第三部のネクストシフト株式会社代表取締役社長CEO 伊藤慎佐仁氏と青柳氏によるパネルディスカッションについてレポートします。

民間資金でイノベーションを起こすことに期待が高まる

SIIF専務理事 青柳光昌氏によると、インパクト投資とは「リスク」「リターン」という従来の2軸に「インパクト」という新しい軸を投資判断の項目に追加したものとなります。この「インパクト」とは、「事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果」を指し、短期間・長期間を問いません。

インパクト投資はインパクト創出のために金銭的リターンを妥協するものではなく、たとえば2018年のGIINの調査によれば、インパクト投資の投資家や運用機関のうち3分の2は市場金利収益率を目標としています。また、ほとんどの取組み機関がインパクトと金銭的リターン共に期待値もしくはそれ以上を達成したと回答しています。

次に、青柳氏はインパクト投資とESG投資の関係について、意図・対象・評価という3つの切り口からの比較を紹介しました。

インパクト投資

意図:インパクトの創出という明確な意図
対象:具体的な社会課題の解決をコア事業とする企業
評価:社会面・環境面への短中長期の効果を測定・検証

ESG投資

意図:長期的なリスクの削減と収益化
対象:全企業
評価:社会面・環境面に配慮した事業かどうかを考慮

ESG投資は、2006年に国連がPRI(責任投資原則)を提唱し、世界の機関投資家がESG投資に注目し始めました。一方、インパクト投資は2013年のG8サミットを機にインパクト投資のアドボカシー組織GSGが発足したことから広がり始めています。さらに2015年に国連総会で正式にSDGsが採択された後、ESG投資とともにインパクト投資への注目が徐々に高まりつつあります。

インパクト投資が広まっている背景にあるものは、社会課題解決のために民間資金でイノベーションを起こすことへの期待だと青柳氏は語ります。少子高齢化、地域衰退、格差拡大といった社会課題に対して、行政の投資余力は限定的で、かつイノベーションが必要です。一方で世界では55兆円規模のインパクト投資は日本国内で3,440億円規模であり、ベンチャー企業等に対する民間投資の方が行政による投資よりもサステナブルでありポテンシャルが高いのです。

一般消費者にインパクト投資の関心について聞いたデータでは、投資経験のある20代・30代は「インパクト投資という言葉を聞いたことがあり、意味もよく知っている」「インパクト投資という言葉を聞いたことがあり、意味も少し知っている」と答えた層が25%程度と、他の年代と比較して高い割合となっています。ミレニアル世代はインパクト投資に関心が高いことが伺えます。

最後に個人投資家に期待するアクションとして、「まずはこういったセミナーに参加するなどの情報収集から始めていただき、周りにもインパクト投資に関する情報を発信してほしい。また、インパクト投資を商品としている会社も増えてきているため、小口で始めてみてもらえれば」と締めくくりました。SIIF自身も情報発信するメディアとしてブログや専門機関とのレポートを載せています。

SIIF(社会変革推進財団)専務理事 青柳光昌氏

SIIF(社会変革推進財団)専務理事 青柳光昌氏

ネクストシフトファンドの口座開設者で最も多い世代はミレニアル世代

第三部では、青柳氏とネクストシフト株式会社代表取締役 伊藤慎佐仁氏よるパネルディスカッションが開催されました。ここでは、印象深かった質疑応答を記載します。

Q. インパクト投資は期間を問わないのか?

青柳氏:効果を出すにはある程度の期間が必要ですし、その期間は案件・事業ごとに異なります。重要なことは、変化をいつ・どう起こしたいのかということなので、バックキャスティング(未来の目標から逆算して、今後すべきことを考える思考法)で期間を決定します。

「社会課題の改善」という目標について、「改善とは何か」を言語化・数値化し、目標に対してリターンが出るのか、実際に効果が出るのかを見ていく必要があります。

伊藤氏:現在、マイクロファイナンスでは資金によってどれくらい生活が向上したのかといったところを詳細までは測れません。その部分を補完するものとして、ネクストシフトファンドでは、定性的に、現地の人がどうお金を使っているのかを映像などで調査しています。それは長期ではなく数年単位でも見ることができます。

Q.インパクト投資についてミレニアル世代の関心が高い理由とは?

伊藤氏:たとえば、エシカル・フェアトレード(途上国の原料や製品を適正な価格で購入すること)について、10代から学校教育でも教えられるなど関心が高まっています。伊藤氏:ネクストシフトファンドでは、投資額や投資人数が多い層は30~40代の投資経験ありの層ですが、口座数で見ると多いのは、それよりも下の世代。この世代が資金を持つようになればインパクト投資がさらに普及していくと思います。

Q. 機関投資家がインパクト投資を手がけざるを得ない状態になっていくのでしょうか?

伊藤氏:自分の資産を運用する機関にインパクト投資をしてもらいたいと思う人は増えています。社会変革推進財団の2019年の調査では、投資家の意向として、資産を預ける資産運用機関に対し、「インパクト投資をしてほしい」という人の割合が約15%、「どちらかというとしてほしい」という人の割合が約60%、合わせて約75%という結果になりました。投資家のニーズに応えるという意味で、資産運用機関には個人投資家向けのインパクト投資商品を増やしていってほしいですね。

Q.インパクト投資が増えることで、収益化が難しいNPOなどへの寄付が減るのでは?

伊藤氏:寄付の市場は増えると思っています。社会貢献性のある分野に寄付や投資に使われるお金が増えていくと思います。そのためどちらか、ではなくパイが大きくなってどちらも増えると思っています。

実はネクストシフトファンドは「寄付月間」という寄付の啓発キャンペーンに参画したのですが、投資家の方に投資していただいた我々のファンドを大きくして、そこから一部NPOに寄付をしています。

Q.先に収益性の高い分野で投資をして、儲けが出た後に寄付をすればいいのでは?

青柳氏:そういう考えも当然あっていいと思います。寄付というお金の使い方は共感性が強くてとてもいいのですが、寄付のデメリットとして、寄付は投資ではないので、経営課題が出てきたときに寄付を受けた側に事業をやめさせないことや、規模を縮小化させない強制力がないということがあります。投資であれば法的に縛れるので、投資対象に対して約束が守れるのか判断ができます。事業計画を作って、事業を続けていける収益性のある分野であれば投資でもいいのではと思います。

伊藤氏:我々の事業として1粒で2度おいしいということをしたいと思っています。一つ目は、ネクストシフトファンドの場合、投資した先がインパクト投資であるということがあります。もう一つは、ファンドの収益の一部が寄付されるという、寄付付きのファンドを今後やりたいと思っています。

「個人ができるインパクト投資 Vol.4 ~資産運用で社会貢献~」

ネクストシフトファンドセミナー

Q.最後に一言をお願いします。

青柳氏:インパクト投資は世界中で広がっており、国内でも広がりを見せています。欧米の状況を見ていても、機関投資家だけでなく個人投資家の方がアクションをし始めていますし、日本でも同様のことが起こることが予想されます。お金を循環させることで社会問題の解決につなげたいと財団としても考えていますし、これが一つのお金の使い方になっていくと思っています。ぜひ注目していただきたいですね。

まとめ

今回のセミナーでは、インパクト投資とESG投資の関係、インパクト投資と寄付の関係といった、インパクト投資を取り巻く背景や現状、今後の展望を知ることができました。今後、ミレニアル世代の経済的余裕が大きくなるに伴い、それだけインパクト投資市場も大きく成長していくポテンシャルがある、ということに期待が高まります。

ネクストシフト株式会社では、このようなインパクト投資に関する勉強会を設けています。ぜひ足を運んでみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム

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