日本の防衛費増額、防衛省が重視する7分野と影響を受ける主な業種・企業は?

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政府与党は、防衛力の抜本的強化や維持のためにはしっかりとした財源が不可欠であるという考えから、2022年12月、今後5年間において43兆円の「防衛力整備計画」を実施することを発表しました。

そして、これに関して「防衛力抜本的強化の元年予算」が公表され、防衛費を増額する方針が決定されたことから、株式市場への影響にも関心が集まっています。

そこで今回は、日本の防衛費増額により影響を受ける業種と主な企業について、詳しく解説していきます。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2023年2月1日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 防衛費増額
    1-1.防衛力の抜本的強化
    1-2.防衛省が重視する7つの分野
  2. 影響がある業種と主な企業
    2-1.重工業
    2-2.防衛関連製品を取り扱う商社
  3. まとめ

1.防衛費増額

まずは防衛費増額の背景をおさらいしていきます。

1-1.防衛力の抜本的強化

政府与党は22年12月、今後5年間において43兆円の「防衛力整備計画」を実施し、令和9年度には、抜本的に強化された防衛力とそれを補完する取り組みを合わせて、「GDP(国内総生産)」の2パーセントにあたる予算を確保する方針を決定しました。

43兆円という数字は現在の計画のおよそ1.6倍に相当し、防衛省は新たな計画の初年度にあたる2023年度予算案を「防衛力抜本的強化の元年予算」という名称で公表しました。

この予算案によると、2023年度の防衛費は過去最大となる6兆8219億円と示されており、2022年度の当初予算と比較しておよそ1兆4000億円多い、約1.3倍という大幅な増額となりました。なお、防衛費の増額は11年連続となっています。

そして、中でも重点的に増額が実施された分野については、装備品の維持整備費に2022年度の1.8倍にあたる2兆355億円、また、弾薬の取得に3.3倍となる8,283億円、自衛隊施設の整備費に3.3倍となる5,049億円が計上されているかたちとなっています。

このほか、装備品の研究開発には3.1倍となる8,968億円が、また自衛隊員の生活や勤務環境の改善費には2.5倍となる2,693億円という予算が盛り込まれています。

近年、ロシアによるウクライナ侵略や、日本の周辺国または地域においても、核やミサイル能力の強化のほか、急激な軍備増強といった動きが一層活発化しています。

そんな中、このような現状に対応するためには、日本の防衛力を強化することが国民の生命および財産を守るにあたって不可欠だと考えられており、政府では関連する取り組みを積極的に推し進めています。

1-2.防衛省が重視する7つの分野

防衛省は防衛力を抜本的に強化するため、特に下記に挙げる7つの分野を重視するとしています。

  1. スタンド・オフ防衛能力:「スタンド・オフ・ミサイル」の早期整備
  2. 統合防空ミサイル防衛能力:「イージス・システム搭載艦」の整備に2,208億円を計上
  3. 無人アセット防衛能力:ミサイルを積めるドローンや自爆型のドローンの取得に99億円を計上
  4. 領域横断作戦能力:「宇宙・サイバー・電磁波」の新たな領域での能力を強化
  5. 指揮統制・情報関連機能:AIでの意思決定を支援する研究に43億円を計上
  6. 機動展開能力・国民保護:陸上自衛隊の物資の保管施設を沖縄県に新たに設置するため、2億円を計上
  7. 持続性・強じん性:装備品の維持整備費に今年度の1.8倍にあたる2兆355億円、弾薬の取得に3.3倍となる8,283億円を計上

このように、政府は上記7つの分野に特に力を入れるとしており、比較的多くの予算が投入されています。

2.影響がある業種と主な企業

今回の「防衛力抜本的強化の元年予算」の公表を受けて、防衛省に対して納入実績のある関連企業の事業には追い風になると見られており、防衛関連株にもいい影響が出始めています。

ここでは、具体的にどのような業種や企業に影響があるのか、詳しく解説していきます。

2-1.重工業

政府の防衛費増額方針を背景として、重工業関連に視線が集まっています。

元々、新型コロナウイルスが蔓延したことによって航空機需要が低迷していましたが、最近では被害が比較的落ち着いてきており、経済の再開が期待されていることに加え、今回の防衛費増額方針が発表されたことから、重工業関連には特にいい影響が及んでいます。

実際、東証プライム上場で時価総額1,000億円以上の東証業種が「機械」の企業を対象として22年の株価上昇率を調査したところ、首位と第3位には重工業大手である「三菱重工業」と「IHI」が並ぶ結果となりました。

三菱重工業は戦闘機や潜水艦をはじめとする防衛装備品の生産を手がけており、防衛費増額によって受注がさらに増加することが期待されています。

また、IHIに関してもロケット関連をはじめとする防衛装備品に強いため、今後需要がさらに増加すると考えられています。

このほか、主に輸送機を取り扱っている「川崎重工業」や防衛省に管制システムなどを納入する「日本アビオニクス」、日本を代表するライフル銃メーカーとして知られる「豊和工業」、防衛機器の製造を行なっている「石川製作所」、また火薬などを取り扱う「細谷火工」など、さまざまな防衛関連銘柄にもいい影響が出始めています。

このように、政府が防衛費増額の財源案を公表したことによって個人投資家たちが重工業関連銘柄を物色している状況となっており、今後の展開に大きな関心が集まっています。

2-2.防衛関連製品を取り扱う商社

重工業関連以外に防衛費の増額によって影響を受ける業種として、商社が挙げられます。

特に、防衛省に対して納入実績のある企業に追い風が吹いており、具体的には大手総合商社として知られる「丸紅」や「三菱商事」、「伊藤忠商事」などにいい影響が及ぶと見られています。

丸紅は「丸紅エアロスペース」としてさまざまな防衛機器を取り扱っており、航空機用の装備品や車両用の生物剤検知・識別装置など、その種類は多岐にわたります。

また、三菱商事では防衛省向けの航空機や航空機エンジン、電子機器などの取引を展開しているほか、「伊藤忠商事」は「伊藤忠アビエーション」として、防衛省または自衛隊の要求に対応する防衛装備品の提供や、後方支援などを提供しています。

さらに、「住友商事」や「三井物産」、「双日」などの大手総合商社にも視線が集まっています。

住友商事は「住商エアロシステム」として、機体プラットフォームやアビオニクス機器、エンジンやメカニカル機器といった防衛関連の製品を広く取り扱っているほか、三井物産は「三井物産エアロスペース」として、日本の安全保障、国際貢献、災害派遣などの任務に貢献する防衛装備品の提供を行なっています。

また、双日は「双日エアロスペース」として、各種航空機や地上車両、艦船、無人機だけでなく、シミュレーターやエンジン、地上支援器材、個人装備といった多岐にわたる防衛関連製品を取り扱っています。

このように、今回の防衛費増額を受けて、投資家たちは防衛関連の製品を取り扱っている商社に特に注目しており、株価にプラスの影響が及ぶのではと期待されています。

まとめ

政府与党は近年の国際情勢を背景として、防衛力の抜本的強化を目的に、防衛費の増額を行う方針を発表しました。

この発表は株式市場にも大きな影響を与えると見られており、三菱重工業やIHIをはじめとする重工業関連の銘柄や、丸紅や三菱商事、伊藤忠商事をはじめとする商社関連の銘柄にいい影響が及ぶと考えられています。

さらに今後は、世界においてコロナウイルス関連の規制緩和もさらに進むと見られており、株式市場がより活気を取り戻すのではと期待されているため、引き続きその動向に注目していきたいと思います。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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