2023年のIT業界では、ChatGPTやサイバーセキュリティが注目されそうです。2022年11月に公開された会話型AIのChatGPTは、公開から2カ月でアクティブユーザー数が1億人を突破、現在も世界中でユーザー数を伸ばしています。
一方で、ChatGPTのようなAIによるサイバー犯罪の増加も想定されることから、サイバーセキュリティへの関心が高まっています。一部の専門家は、AIサイバー犯罪が助長される恐れがあるとし、適切な規制の必要性を訴えています。会話型AIの進化に伴い、AIによって生成されたテキストを検知するAIの開発が進むなど、IT業界ではAI関連企業への注目度が高まっています。
そこで、今回は2023年のIT業界の展望と日米注目銘柄を解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2023年3月17日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- ChatGPTとは
- ChatGPT日米関連銘柄
2-1.(米)マイクロソフト(MSFT)
2-2.(日) note(5243)
2-3.(日)ユーザーローカル(3984) - サイバーセキュリティ日米関連銘柄
3-1.(米)ゼットスケーラー(ZS)
3-2.(米)クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)
3-3.(日)トレンドマイクロ(4704) - まとめ
1 ChatGPTとは
ChatGPTは、チャットを模した画面に質問を書き込むと、まるで人間を相手にしているようなリアルな会話文を生成することができるAIツールです。ChatGPTの回答は、リアルに近いというだけではなく、アメリカの医師免許試験やMBA試験に合格できる非常に高いレベルに達したと言われることもあります。
まだ総じて人間よりも精度の高い回答ができるとは言い難いものの、人間を上回るパフォーマンスを発揮するケースもあり、世界の有名エンジニアが未来の社会を危惧するほど、これからのAI時代に大きな役割を果たすものと期待されています。
2 ChatGPT日米関連銘柄
ここでは、日米のChatGPT関連銘柄を見ていきましょう。
*株価は2023年3月17日時点
2-1.(米)マイクロソフト(MSFT)
マイクロソフトは2019年に、ChatGPTを開発したAI研究所のOpenAIに10億ドルを投資しましたが、今後数年かけてさらに100億ドルを投じる予定です。将来的に、同社の検索エンジンであるBingにChatGPTを統合させ、まるで人間が回答を返すようなバージョンを計画しているようです。
同社の検索エンジンはGoogleに後れを取ってますが、Bingが大幅にグレードアップすると検索エンジン市場のシェアが大きく変化することになるかもしれません。ChatGPTの月間ユーザー数は、2022年11月の公開後わずか2カ月で、1億人を突破しました。
同社はOpenAIに投資した資金が回収できるまで、OpenAIの利益の75%を取得するとしており、回収ができた段階で、同社がOpenAIの株式49%を保持することになっています。今後もユーザー数の増加が予想されるため、同社の業績を押し上げる可能性が高いと言えそうです。
株価*は279.43ドル、予想PERは28.8倍です。
2-2.(日) note(5243)
noteは、インターネット上で、クリエーターが自由にコンテンツを発表・販売できるメディアプラットフォーム「note」と、企業の情報向けの「note pro」を中心に事業を展開しています。
ChatGPTにも搭載されているGPT-3と連携した創作支援ツール「note AIアシスタント(β)」を2023年2月に発表し、クリエーターから関心を集めています。2023年3月14日時点で以下の13機能が利用可能です。
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2022年12月末時点の株価は439円でしたが、「note AIアシスタント(β)」の発表を機に上昇。一時927円を付け、3月17日時点で816円です。
2022年11月期の売上高は23.17億円と、前年同期比22.9%増加し、着実に売上を伸ばしています。
2-3.(日)ユーザーローカル(3984)
ユーザーローカルは、企業の業務効率化を支援するビックデータ解析サービスを提供しています。メイン事業は、総合アクセス解析ツール、ソーシャルメディア解析ツール、業務効率化ツールの開発・販売提供です。すでに3,000社以上の企業にビックデータ分析ツールを提供しています。
また、同社は自社のチャットボットにChatGPTを使い、回答を自動生成させる機能を開発し提供を開始。より高精度な回答を自動生成し、工数削減が可能となりました。
第17期(2021年7月~2022年6月)の売上高は前年同期比28.5%増の26.83億円、純利益は同17.2%の7.2億円でした。株価は1,950円、予想PERは38.5倍です。企業に勢いがあるため、株価水準が割高です。この市場は拡大傾向にあるため同社の企業成長も期待できそうです。
3 サイバーセキュリティ日米関連銘柄
マルウエア配布、フィッシング詐欺、サイバー攻撃などが増加傾向にあるなか、ChatGPTの登場により、こうしたサイバー犯罪が高度化する可能性が高まっています。そのため、セキュリティ強化が課題となっています。
ここでは、日米のサイバーセキュリティ関連銘柄を見ていきましょう。
3-1.(米)ゼットスケーラー(ZS)
ゼットスケーラーは、世界最大規模のクラウドセキュリティプラットフォームを提供しています。コロナ禍の影響で、働く場所や働き方の多様化が進み、クラウド利用が高まったことから、同社のクラウドセキュリティサービスが注目されています。
2023年3月に発表された四半期決算(2022年10月~2023年1月)では、売上高が前年同期比51.6%増の3.87億ドルと好調でした。純利益はマイナス5,745万ドルと前年同期のマイナス1億42万ドルから改善しました。
クラウド化が進むなか、同社のクラウドセキュリティプラットフォームの需要が増加傾向にあるため、同社は成長過程にあると言えそうです。
株価*は105.49ドル、予想PERは69.4倍です。成長期待が大きいため株価には割高感があります。
3-2.(米)クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)
クラウドストライク・ホールディングスは、米国のサイバーセキュリティテクノロジーの持株会社です。セキュリティ対策をすべてクラウド上で行い、1分でウイルスを検知し、10分で調査、60分で復旧する体制を確立しています。
同社のソフトは、機械学習・AI探知機能で、進化したウイルスを探知し、ブロックします。クラウドストライクを導入している全世界の端末のログを監視し、万が一攻撃を受けた場合には瞬時にクラウド上に反映させ防御します。従来のアンチウイルスという仕組みでは防御できない攻撃にも対応可能です。導入が簡単なこともあり、契約数を伸ばしています。
2023年(2022年1月から12月)の売上高は前年比54.3%増の22.41億ドル、純利益は同5.2億ドル増のマイナス1.83億ドルでした。サブスクリプション顧客数の増加に伴い収益が改善しました。
株価は2023年1月上旬から中旬にかけて100ドルを下回っていましたが、同年3月17日時点では133.12ドルと、年初来高値水準で推移しています。
3-3.(日)トレンドマイクロ(4704)
トレンドマイクロは、サイバーセキュリティの専業大手で、コンピュータ用のセキュリティソフトウエアの開発・販売を手掛けています。同社のソフトウエアは、世界の50万社を超える企業と、2.5億人以上の個人ユーザーが利用しています。
2022年12月期の売上高は2,237.9億円(前年同期比17.5%増)、純利益は同22.2%減の298.4億円でした。円安による海外人件費の増加などで、販売管理費が前年同期比334億円増加し、利益を圧縮しました。
株価*は6,400円、予想PERは32.1倍です。
まとめ
2023年のIT業界では、2022年11月に発表されたChatGPTが話題となり、株式市場では関連企業が注目されています。一方、サイバー攻撃が増加傾向にあることや、ChatGPTの悪意のある利用者が増加する可能性があるため、サイバーセキュリティ関連企業も注目されています。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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