森林破壊・砂漠化への対策に注力している日本の上場企業は?取り組み事例や株主還元も

※ このページには広告・PRが含まれています

企業が長期的な事業成長をしていくためには、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行っていくことが大切です。持続可能な地球環境を目指すため、森林破壊・砂漠化への対策に乗り出している企業は様々あり、ESG投資を行う際の銘柄選びに役立てることが可能です。

この記事では、森林破壊・砂漠化への対策に注力している日本の上場企業について見ていきます。日本の上場企業が取り組む森林破壊・砂漠化対策の内容を具体的に知りたい方は、参考にしてみてください。


※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年4月1日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 森林破壊・砂漠化対策とは
  2. 森林破壊・砂漠化対策に取り組む日本の上場企業
    2-1.三菱商事
    2-2.三井物産
    2-3.伊藤忠商事
    2-4.日本製鉄
  3. まとめ

1 森林破壊・砂漠化対策とは

森林破壊とは、森林の伐採や焼失が自然の回復力を上回るスピードで進行した結果、世界の森林の量が減少または消失することを指します。森林破壊は気候的な要因でも起こりますが、人為的な要因で起こる場合もあり、例えば、違法伐採や燃料で利用するための過剰伐採、短期間での焼畑農業、都市開発などが挙げられます。

森林破壊は、土地の砂漠化が進んでしまう要因にもなります。砂漠化とは、土地に含まれる水分や養分が失われ、植物が育ちにくくなることです。砂漠化対処条約では、砂漠化を「乾燥地域、半乾燥地域および乾燥半湿潤地域における気候的要因、人為的要因等による土地の劣化」と定義しています。

砂漠化の進行は、資源不足が発生して人々の生活や各企業の事業活動に悪影響をもたらします。また、生物の生息数の減少が起こり、生物多様性の損失が起こる可能性も高くなります。さらには、砂漠化で植物が育ちにくくなると、二酸化炭素の吸収源も減少し、地球温暖化を加速させてしまうことにもなります。そのようなことから、持続可能な社会の実現のためには、森林破壊・砂漠化対策に取り組んでいく必要があります。

また、SDGs(国連持続可能な開発目標)の目標として、2030年までに砂漠化した土地や土壌の回復することが掲げられています。それに伴い、森林破壊・砂漠化対策はすでに世界や国内でも進められています。

世界では、1994年に「砂漠化対処条約」が採択され、深刻な砂漠化問題が発生しているアフリカ諸国に対し、その解決を図るための国際的な取り組みが行われています。国内では、違法伐採問題の普及、森林保全活動の推進等に取り組む形で森林破壊の対策が行われています。さらに、砂漠化対策として、「国際機関への拠出」「二国間援助」「NGO活動の援助」などにも取り組んでいます。

2 森林破壊・砂漠化対策に取り組む日本の上場企業

事業活動の中で森林破壊・砂漠化への対策に取り組むことにより、国際的な環境問題の解決に貢献できる上、事業における長期的なニーズを獲得できます。森林破壊・砂漠化への対策に取り組むことは、企業のイメージ向上や、長期的な経営戦略への活用、新たな事業機会の創出など企業側にとっても様々なメリットがあります。

以下では、日本の上場企業が事業活動の中で行う森林破壊・砂漠化対策の取り組み内容を、株主還元情報と併せてご紹介していきます。

2-1 三菱商事

三菱商事は、三菱グループに属する国内大手の総合商社です。事業部門は、産業DX、天然ガス、総合素材、石油化学、金属資源、自動車、電力、食品、不動産など多岐に渡ります。本社は東京都千代田区にあり、国内に11ヵ所、海外には111ヵ所の事業拠点を設けています。

三菱商事の森林破壊・砂漠化対策の取り組み内容

三菱商事は、森林破壊・砂漠化対策の取り組みとして、熱帯林の減少予防および再生への寄与を行っています。1990年に「熱帯林再生プロジェクト」を開始し、現地固有の植物を密植・混植方式で植林する方法により、自然林に近い形での再生を目指しています。

それと同時に、現地の焼畑跡地に関する共同研究のバックアップも行っており、1992年には、ブラジルのアマゾン地区でも、約100種類、約40万本の樹木を植栽する形で熱帯林再生プロジェクトを開始しています。

このほか、森林認証制度を活用したり、持続可能な林業の支援を行ったりする形で、森林破壊・砂漠化対策への取り組みを行っています。

三菱商事は、今後も熱帯林再生プロジェクトの企画、運営管理、資金調達に関与し、世界各地の熱帯林再生事業に取り組む方針です。

三菱商事の株主還元情報

三菱商事は、年に2回配当を行う形で株主への還元を行っており、2016年度~2021年度までの1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2016年度 30円 50円 80円
2017年度 47円 63円 110円
2018年度 62円 63円 125円
2019年度 64円 68円 132円
2020年度 67円 67円 134円
2021年度 71円 79円 150円

三菱商事は、企業業績に関わらず減配しない累進配当政策を取っているのが特徴です。そのため、2016年度~2021年度の年間合計配当額は、毎年上昇傾向にあり、2022年度の1株当たりの中間配当額は77円、期末配当額は103円の見通しで、年間合計配当額も前年より30円上昇する見込みです。

2-2 三井物産

三井物産は、三井不動産、三井住友銀行とともに三井グループの中核企業を担う国内の大手総合商社です。金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業などの事業部門を設け、「トレーディング」および「事業経営・事業開発」の両面で成長できるビジネスに取り組んでいるのが特徴です。

三井物産の森林破壊・砂漠化対策の取り組み内容

三井物産は、天然ゴム、パーム油、木材、紙製品等を調達する際の森林破壊ゼロを目指しながら事業を行っています。国内74ヵ所に「三井物産の森」と呼ばれる約4万4000haの社有林を保有し、持続可能な森林経営の実現を目指しています。

三井物産の森林経営は、社有林のもたらす多様な価値を社会に提供して得られた収益が森林の長期循環育成のために還元される形で行われています。このビジネスモデルにより、持続可能な森林経営が実現され、森林破壊や砂漠化の予防へと繋がっています。

また、三井物産の社有林である「三井物産の森」は、FSC(森林管理協議会)とSGEC(緑の循環認証会議)の森林認証を取得しています。FSCとは、責任ある森林管理が行われているか否かを国際的な基準で認証する制度です。

一方、SGECとは、持続可能な森林経営をするための国際的な基準を満たしているか否かを判定する認証制度です。三井物産の森は、2006年にSGEC、2009年にFSCの森林認証を取得しています。

三井物産の株主還元情報

三井物産の株主還元は、年2回の配当金を株主へ支払う形で行われています。2016年3月期~2022年3月期の1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2016年3月期 32円 32円 64円
2017年3月期 25円 30円 55円
2018年3月期 30円 40円 70円
2019年3月期 40円 40円 80円
2020年3月期 40円 40円 80円
2021年3月期 40円 45円 85円
2022年3月期 45円 60円 105円

2016年3月期~2017年3月期にかけては、1株当たりの中間配当額、期末配当額、年間合計配当額がすべて減少しましたが、2017年3月期~2018年3月期にかけて、中間配当額、期末配当額、年間合計配当額はすべて増加しています。

2019年3月期~2021年3月期の中間期までの1株当たりの配当金額は、40円に据え置かれていましたが、2021年3月期の期末期から45円に増加し、2022年3月期の期末期は60円になるなど大幅に増加しています。

2023年3月期の1株当たりの中間配当額は65円で、2022年3月期の期末期よりも5円増加しています。さらに、2023年3月期の期末期は1株当たり70円の配当を行う予定で、年間合計配当額も前年より30円多くなる見込みです。

2-3 伊藤忠商事

伊藤忠商事は、1858年に創業した国内大手の老舗総合商社です。国内7店、海外86店の拠点を置き、世界62ヵ国で繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、情報、金融などの各分野に関する輸出入および三国間取引、事業投資などのビジネスを幅広く展開しています。

伊藤忠商事の森林破壊・砂漠化対策の取り組み内容

伊藤忠商事は、森林資源関連事業を行う上で、木材、天然ゴム、パーム油等の森林資源の取扱による森林破壊の防止を重点項目と考え、森林認証製品の活用やトレーサビリティシステムの整備等に取り組んでいます。

また、FSCとPEFCの森林認証を取得している森林資源からパルプ製造を行うフィンランド企業の販売代理店活動を行う形で、持続可能な森林資源利用の推進を図っています。

2013年からは、中国で製造された合板のトレーサビリティの証明システムの整備に取り組んでおり、2020年には国内の認証機関から、主要なサプライチェーンについて適正にトレーサビリティが確保されていると評価されました。

また、東南アジアのボルネオ島で行われている熱帯林再生活動の一部を支援しています。伊藤忠商事が支援した部分については、2014年に植林作業が完了し、2016年1月に現地作業がすべて完了済です。

伊藤忠商事の株主還元情報

伊藤忠商事は、株主に対して毎年2回配当金を支払う形で還元を行っています。2016年度~2021年度までの1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2016年度 27.5円 27.5円 55円
2017年度 32円 38円 70円
2018年度 37円 46円 83円
2019年度 42.5円 42.5円 85円
2020年度 44円 44円 88円
2021年度 47円 63円 110円

伊藤忠商事の1株当たりの配当金額は、2016年度~2020年度まで緩やかな上昇傾向にあり、2021年度の期末に1株当たりの配当金額が63円まで大幅に上昇した影響で、年間合計配当金額も1株当たり100円を超えました。

また、2021年度~2023年度までの中期経営計画において、1株当たりの配当金額は前期比30円増額の140円を下限に増配する旨の配当方針を打ち出しています。そのため、2022年度の年間配当金額は、140円を下限とする金額になる見込みです。

2-4 日本製鉄

日本製鉄は、国内大手の鉄鋼メーカー企業です。国内および国外15ヵ国以上の製造拠点を設け、「製鉄事業」「エンジニアリング事業」「ケミカル&マテリアル事業」「システムソリューション事業」の主要4事業を推進しながら、グローバルに活動しています。

日本製鉄の森林破壊・砂漠化対策の取り組み内容

日本製鉄は、森林整備を行いながら和歌山県の自然環境の保全を目指すための森林環境保全事業「企業の森」にボランティアで参加しており、植栽を行っています。2005年から10年間、和歌山県田辺市中辺路町の民有林を借り、5,000本の植樹をした実績があります。

千葉県にある東日本製鉄所君津地区においては、環境教育を目的として、新入社員による植樹を行うことで、持続的な森林の保全に貢献しています。その他、再生可能エネルギー、再生可能バイオマスを利用する形で、森林破壊・砂漠化対策への取り組みも行っています。

日本製鉄の株主還元情報

日本製鉄は、配当と株主優待制度によって株主への還元を行っています。2017年度~2021年度までの1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2017年度 30円 40円 70円
2018年度 40円 40円 80円
2019年度 10円 0円 10円
2020年度 0円 10円 10円
2021年度 70円 90円 160円

2018年度の1株当たりの年間合計配当額は2017年度よりも10円増加しました。2019年度と2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大が業績にも影響し、1株当たりの配当金額も大幅に減少しました。しかし、2021年度は業績回復とともに1株当たりの配当金額も大幅に上昇し、年間合計配当額は2018年度の倍額となっています。

2022年度の1株当たりの配当金額は中間が90円、期末も90円の予定で、年間合計配当額は過去最高を更新する見込みです。ただし、業績によっては変動する可能性があることに留意する必要があります。

また、毎年3月末、9月末時点で5,000株以上保有している株主は、以下の優待を受けることが可能です。

優待内容 優待を受けられる時期
Jリーグの鹿島アントラーズのJ1リーグ戦ホームゲームの観戦招待 年2回(4月~8月頃、8月~12月頃)
紀尾井ホール室内管弦楽団の定期演奏会への招待 年2回(4月~9月頃、10月~3月頃)

まとめ

日本の各上場企業は、森林破壊や砂漠化の対策として、植林・植栽による森林再生、持続的な森林経営のビジネスモデル構築、トレーサビリティの証明システムの整備、森林認証制度の活用等の様々な取り組みを行っています。

この記事で紹介した森林破壊・砂漠化対策に取り組む日本の上場企業の中には、累進配当政策を取っているところもあり、配当額が増配傾向の場合もあるので、興味のある方は、ご自分でもお調べの上、検討してみてください。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チームは、株式投資に関する知識が豊富なメンバーが株式投資の基礎知識から投資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」