株式などの金融商品は、過去に記録した株価の動きを認識しやすいようにグラフで表記した「チャート(Chart)」が作成されています。投資家はチャートで過去の株価の動きを分析し、売買を行なっています。
投資信託に投資を行なう際にも、基準価額のチャートを活用することは有用です。一方で、株価のチャートの見方と異なる点もあり、注意が必要です。
今回のコラムでは、投信チャートの見るポイントについて解説していきます。
※本記事は7月5日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- チャートを使った分析手法がテクニカル分析
1-1.株式で人気のチャートは?
1-2.投資信託のチャートを見るときの注意点 - 投資信託のチャートで見るべきポイント3つ
2-1.分配金込再投資基準価額
2-2.過去の分配金
2-3.純資産総額 - まとめ
1.チャートを使った分析手法がテクニカル分析
チャートは、横軸を時間(分・日・月・年)、縦軸を株価(投資信託の場合は基準価額)にすることが一般的です。過去の終値を点で結んでグラフにする場合もあれば、1日の高値・底値も表示するために所謂「ロウソク足」で縦軸を表示するようなグラフも存在します。
チャートを使用して株式投資の投資判断を行なう分析をすることを「テクニカル分析」と言います。各証券会社のアナリストや銀行や生損保などの国内金融機関、海外ヘッジファンドなど多くがテクニカル分析を基に投資を行なっており、個人投資家にとってもメリットのある手法です。
また、「テクニカル分析」の対になるものが「ファンダメンタル分析」です。過去の株価の値動き(チャート)を見て分析するのではなく、過去の売上・営業利益・純利益・株価収益率などの各企業の状態を示す指標を参考に株価を予測する分析指標となります。個人投資家・機関投資家が使用する分析手法であり、有名な投資家であるウォーレンバフェットが好んでいる手法です。
1-1.株式で人気のチャートは?
チャートは過去の株価の動きを示しており、将来の株価の動きを予測するために使用されます。投資家に人気のある分析方法として、移動平均線が挙げられます。
移動平均線とは、過去のある一定期間における株価の平均値をグラフにしたものです。ある1日のみの株価や基準価額だと価格の傾向が分からないため、価格形成のトレンドを把握するために、5日移動平均や25日移動平均などが使用されます。
短期の移動平均(5日など)と長期の移動平均(25日など)の交差点はトレンドの転換点を示しています。短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に交差することを「ゴールデンクロス」と呼びます。一方で短期移動平均線が長期移動平均線を上から下に交差することを「デットクロス」と呼ばれます。
ゴールデンクロスが形成された場合、相場が上昇トレンドに入ったことを示し、株価が上昇する傾向にあります。反対に「デットクロス」が形成された場合、相場が下降トレンドに入ったことを示しており、株価が下落する傾向にあります。
他にも移動平均線を活用としたテクニカル分析手法として「ボリンジャーバンド」や「グランビルの法則」などが存在しており、過去の投資家によって様々な手法が開発されています。
1-2.投資信託のチャートを見るときの注意点
投資信託の場合は、株価ではなく基準価額のチャートを見ることによって分析することになります。基準価額は投資信託が保有している株式の純粋な株価を反映しているわけではありません。
定期的に分配金拠出額を反映させてあること、投資信託の管理コストである信託報酬が基準価額から控除されていることに注意してください。
2.投資信託のチャートで見るべきポイント3つ
投資信託のチャートで見るべきポイントは3つです。
- 分配金再投資基準価額
- 過去の分配金
- 純資産総額
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1.分配金再投資基準価額
分配金再投資基準価額とは、課税前の収益分配金を決算時に投資信託へ再投資したとみなして算出した基準価額を言います。様々な種類の投資信託が存在するものの、夫々の投資信託の分配方針は異なっていることが多く、投資信託の運用成績を比較しやすくするために分配金再投資基準価額が使用されます。
例えば、年間に1%の純資産総額を分配する投資信託Aと年間10%の純資産総額を分配する投資信託Bが存在し、共に年間+1%のリターンを計上したとします。投資信託AとBの分配金控除後の基準価額は、それぞれ0%(リターン+1% ― 分配金1%)と- 9%(リターン+1% ― 分配金10%)となり、同じパフォーマンスの投資信託でも分配金控除後基準価格を採用した場合はチャートの形状が異なることになります。
一方、分配金再投資基準価額は、収益分配による純資産価格の減少を理由とした基準価額の下落がなかったと仮定したときの基準価額です。分配方針は関係なく、純粋に過去の投資信託のパフォーマンスを知ることが可能となります。
2-2.過去の分配金
分配金とは、運用によって得られた収益を投資信託の決算ごとに、投資家へ分配するお金のことを指します。株式でいう配当金に相当します。
投資信託の運用成績によって、各決算期における分配金拠出額は異なってきます。分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類存在し、前者は運用によって得られた利益(元本を上回った分)によって拠出された分配金を指し課税対象となります。
一方で、後者は利益ではなく元本の一部を使用して拠出される分配金となり「タコ足配当」とも呼ばれます。利益ではないため課税対象とはなりません。
分配金が拠出される毎に、投資信託の基準価額は分配金額だけ下落することを知っておきましょう。分配金額に影響されないパフォーマンス分析を行ないたい場合は、「分配金再投資基準価額」のチャートを見ましょう。
2-3.純資産総額
純資産総額は、投資信託に組み込まれている株式や債券などの資産から、負債を控除した信託財産の合計であり、投資信託の規模を表している指標となります。
純資産総額が大きい投資信託は、投資家からの資金流入が大きく人気のファンドということです。純資産総額のチャートを見ることによって、どのタイミングで人気になり始めたか・人気に陰りが見え始めたかなどを把握できます。
純資産総額が極端に少ないと(1億円未満など)、運用会社がその投資信託の運用を終了してしまう可能性や、投資信託を運用・管理するためのコストの割合が大きくなっている可能性があります。長期間保有ができるかどうか・コスト負けしてしまわないかどうかなどを判断するためにチェックしておきましょう。
純資産総額の目安は10億円以上になります。チャートで確認し、常に条件を満たしている投資信託のみに投資しましょう。
3.まとめ
公募投資信託は、様々な金融商品への投資を行ないながら、投資の専門家(運用会社におけるファンドマネージャー)によって運用されています。専門家による運用であっても、元本が保証されているわけではないことは知っておきましょう。
投資信託は、それぞれ特徴があります。個別株式を選択するように色々な手法を駆使しながら分析し、自分に合った投資信託を探してみましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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