資産の運用先として低リスクで長期運用ができる投資信託が関心を集めていますが、一方で銀行や郵便局の窓口にて変額保険を勧められた経験を持つ人もいるのではないでしょうか。いずれも資産を預けて運用を任せるスタイルの運用商品ですが、根本的な商品設計が異なります。
記事内では投信積立と変額保険の違いを紹介し、それぞれの運用商品に向いている人を説明しています。投信積立と変額保険、どちらを選ぶべきか迷っている人はご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- 変額保険と投信積立の違いとは?
1-1.保障の有無
1-2.変額保険には税控除も
1-3.運用資産の変更 - 投信積立のメリットとデメリット
2-1.100円から積立できる
2-2.ファンド数が多く運用実績がある
2-3.途中解約可能
2-4.最低保障金額がない - 変額保険のメリットとデメリット
3-1.税控除
3-2.手数料が高い
3-3.10年以内の解約で元本割れのリスク - 変額保険と投信積立、それぞれに適している人
4-1.投信積立の運用に適している人
4-2.変額保険の運用に適している人 - まとめ
1.変額保険と投信積立の違いとは?
投資信託と変額保険の違いは、保障の有無と運用に回す割合の差です。それぞれの運用商品の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 投資信託 | 変額保険 |
---|---|---|
共通ポイント | 個人では難しい分散投資が可能 | |
プロに運用を任せることができる | ||
規模の大きな運用に参加できる | ||
最低積立金 | 100円から | 商品ごとの最低保険金額による |
保障 | なし | あり |
商品の数 | 5,000以上 | 約10種類 |
資産配分の変更 | できない | 月1回までできる |
税控除 | なし(NISA・つみたてNISAは利用可能) | 生命保険控除 |
その他 | – | 早期解約による元本割れのリスク |
2つの運用商品の主な違いは以下3点です。
- 保障の有無と運用費用の割合
- 税控除
- 資産の変更ができるか
1−1.保障の有無
投資信託は投資家から集めた資金のほとんどを、運用にまわして収益の獲得を目指します。一方変額保険は、保険料の中から特別勘定として預かった資産を運用し、運用成果を保険金や解約返戻金へ反映させる仕組みです。運用が上手くいくと、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金の額が増えますが、運用が失敗すると逆に減ってしまいます。
運用成果が悪くても、死亡保険金の最低保障は約束されていますが、掛け金の元本を下回る可能性がある点は、投資信託と同じです。
1−2.変額保険には税控除も
変額保険は生命保険控除が認められます。生命保険の相続税非課税措置は、500万円×法定相続人の数です。生命保険控除の金額は、生命保険金額が非課税金額を下回っていると、生命保険の金額が控除されます。
したがって、変額保険は運用次第では安い保険料で基本保険金額よりも多い金額を受け取ることができる可能性があります。
1−3.運用資産の変更
運用中はリスク許容度の変更や、市場のトレンドの変化などの事情によって、運用資産の変更を強いられることがあります。
投資信託はスイッチングやファンドの解約などの手続きを踏んで変更する必要がありますが、変額保険は解約なしで月1回、運用資産を変更できます。運用資産の変更は頻繁に行うことではありませんが、いざという時にそのまま変更できるのは便利です。
2.投信積立のメリットとデメリット
投信積立のメリットとデメリットを以下4点、ピックアップしました。
- 100円から積立できる
- ファンド数が多く運用実績がある
- 途中解約可能
- 最低保障金額がない
2−1.100円から積立できる
少額投資は投信積立のメリットの一つです。つみたてNISAの制度が施行されてから、少額投資ができる投信積立も合わせて注目されるようになりました。投信積立の最低金額は証券会社によってことなりますが、ネット証券の中には100円から可能としている会社も多くあります。
無理のない少額投資は分散投資の効果と相まって、長期運用と相性が良いのです。運用に多くの金額をまわせない世代にとっては、少額投資ができる投信積立は心強い存在となるでしょう。
2−2.ファンド数が多く運用実績がある
投資信託は長い運用の歴史をもつファンドが数多く存在しています。長い歴史の中では、トレンドテーマに乗った幾多のファンドがリリースされ、うまく運用ができているファンドのみ残り、思うような成果が出なかったファンドは運用を終了するという歴史を繰り返しています。
長年の運用実績の裏付けがある投資信託は、5年〜10年のトータルリターンが確認できるため、ファンドの選択がしやすい傾向があります。ファンド選びに迷ったらできるだけ長い期間のトータルリターンで判断する、というシンプルな選択方法が通用する点は投資信託の強みです。
2−3.途中解約可能
投資信託は運用成績のみに着目して途中解約ができます。変額保険は主な商品が保険なので、投資信託ほど簡単に解約するわけにはいきません。
投資信託は流動性が高い運用商品なので、短期〜中期の運用にも適しています。今すぐ必要な資金ではないが、念の為換金しやすくしておきたいという場合、投資信託を運用先として選ぶと良いでしょう。
2−4.最低保障金額がない
投資信託は変額保険のような最低保障額がありません。元本保証がない点は変額保険も同じですが、投資信託は極端な話、投資金額が0円になってしまい、戻ってこない可能性もあります。
実際は運用で収益が還元されないと判断されれば、強制償還によって投資金額が返金されますので、元本が0円になる可能性はかなり低いのですが、元本保証がないリスクは押さえておきましょう。
3.変額保険のメリットとデメリット
変額保険のメリットやデメリットを3点ピックアップしました。
- 税控除
- 手数料が高い
- 10年以内の解約で元本割れのリスク
3−1.税控除
資産の相続も視野に入れる場合、変額保険を検討する余地があります。
被保険者の総資産額7,000万円、法定相続人が3人の場合の変額保険の生命保険控除は以下のとおりです。
相続税の基礎控除
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
生命保険の非課税金額
500万円×3人=1,500万円
相続税の課税対象額
7,000万円−1,500万円−4,800万円=700万円
課税対象額2,200万円のところを、生命保険の控除によって700万円まで圧縮可能です。なお、生命保険金額が相続税金額を下回っている場合、生命保険金額が控除対象となります。
3−2.手数料が高い
基本保険金額を最低保証するための費用と、保険の運用にかかる手数料を合わせた金額が手数料となります。変額保険は運用コストと保障にかかるコストが考慮されているため、投資信託よりもややコストが高めです。
払い込んだ保険料から手数料が差し引かれるため、コストに圧迫されて資産が増えにくくなる懸念もあります。保険の備えがすでにある場合、あえて変額保険を選ぶメリットはないでしょう。
3−3.10年以内の解約で元本割れのリスク
変額保険の多くは、10年以内に解約すると別途解約控除金が発生する旨の記載があります。10年以内の解約を行うと、解約返戻金が払い込んだ保険料を下回り、年数によってはほとんど手元に戻ってこないケースが考えられます。
早期解約にかかる解約手数料は保険の運営破綻を防止するために設けられています。変額保険はあくまでも保険商品として捉え、運用をメインに考える場合は、投資信託を選択するほうが良いでしょう。
4.変額保険と投信積立、それぞれに適している人
変額保険と投資信託それぞれの特徴を踏まえつつ、適している人とはどんな人なのか説明します。
4−1.投信積立の運用に適している人
投信積立の運用に適している人は以下の通りです。
- 保険商品をすでに持っていて、運用とは切り分けたい
- 途中で解約する可能性がある
- つみたてNISAを使った運用がしたい
- できるだけ低コストで運用したい
すでに生命保険などの商品を持っている人は、保障を手厚くしたいという理由以外で、あえて変額保険を選ぶメリットはありません。保険と運用を切り分けたいと考える場合は、投資信託など運用商品を選ぶと良いでしょう。
また、投資信託は流動性が高いというメリットがあります。子どもの学費や住宅ローンの頭金など、資金の捻出のために解約する可能性がある場合は、投資信託のほうが適しています。
4−2.変額保険の運用に適している人
変額保険の運用に適している人は以下の通りです。
- 保障と資産形成を両立させたい
- 長期の保障を割安で確保したい
- 長期間使わない資金を用意できる
変額保険は投資信託と異なり、簡単に解約できません。特に10年以内の早期解約では元本割れのリスクが高まるため、最低でも10年以上は掛け金を拠出できる準備が必要です。10年以上の運用という強制力が働くため、保障と長期間の資産形成の両立を考えている人にとっては選択肢の一つとなるでしょう。
年齢にもよりますが、一般的に変額保険の保険料は定額の終身保険よりも低めに設定されています。したがって、低い料金の保険を検討していて、運用リスクを許容できる人も選択するメリットがあります。
まとめ
投資信託は資産運用に特化した運用商品ですが、変額保険は掛け金の一部を運用に回しつつ、保険と資産の運用を同時に行う運用商品です。
変額保険では、死亡保険金の最低保障金額が設定されていますが、投資信託に元本保証はありません。しかし変額保険の資産運用成績は、保険の運用にも影響します。資産運用成績が良ければ保険金や解約返戻金の金額がアップしますが、成績が悪いと手にする金額が減ってしまうデメリットを認識しておく必要があります。
保険と保障の両立を目指しつつ、長期間運用を可能とする掛け金を拠出できる人は、変額保険の運用も検討の余地があります。資産形成と保険の運用を切り分けたい人や、途中でまとまった資金が必要となる可能性がある人は、投資信託を選ぶと良いでしょう。
sayran
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