投資信託の平均的なリターンは、2021年12月現在、定期預金の金利を上回っていますが、元本保証はありません。いっぽう円預金は、銀行が破綻しても元本1,000万円までとその利息は資産が保証されます。
低金利な円預金で資産を守るか、抑え気味にリスクをとりつつ、長期運用で緩やかに資産を積み上げていく投資信託を選ぶかは悩みどころです。この記事では、様々な角度から投資信託と定期預金の違いを検証します。資産形成のための運用スタイルを検討している方は、ご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 投資信託と定期預金の違い
1-1.円預金のペイオフ制度
1-2.投資信託は運用による元本割れの可能性あり - 定期預金の平均的な金利
- 投資信託の平均的なリターン
3-1.インデックス型
3-2.テーマ別 - 投資信託の仕組みとリスク
4-1.3つの会社が運用に携わる
4-2.投資信託がもつリスク - 定期預金と投資の棲み分け
5-1.許容できるリスクを決める
5-2.セット型円定期は内容確認を - まとめ
1.投資信託と定期預金の違い
まずは投資信託と定期預金の違いを考察してみましょう。主な違いを2つピックアップしました。
1-1.円預金のペイオフ制度
円預金にはペイオフという制度があります。元本1,000万円と金利分は仮に銀行が破綻しても保証される制度で、資産が失われることはありません。金融機関が破綻した時は、金融機関に加入が義務付けられている預金保険機構より、元本が支払われます。
ペイオフは1,000万円の上限が設けられていますので、1,000万円を超える現金を預金する時は、複数の金融機関に分散して、預金を1,000万円以内に抑えておくと万が一の時の備えとなります。
円預金は、運用のような元本の変動がなく、万が一の時でも1,000万円までの範囲で元本保証される点が強みです。
1-2.投資信託は運用による元本割れの可能性あり
投資信託は、関連会社が破綻しても信託銀行が資産を分別管理しているため信託財産は保証されますが、運用によって変動する元本に保証はありません。
投資信託はファンドで分散投資をしているため、株式の個別銘柄のように大暴落によって上場廃止になるような可能性は低く抑えられていますが、相場の変動により元本割れする可能性はあります。許容できるリスクの分だけプラスになることもあれば、同時にマイナスになる可能性もあるのです。
投資信託の強みは、分散投資によりリスクを抑えつつ、長期運用で少しづつ利益の積み上げを狙うことが出来る点です。守る資産と攻める資産を切り分けて、取れるリスクに見合ったファンドで収益を積み上げる運用スタイルが効果的です。
2.定期預金の平均的な金利
定期預金の平均的な金利を表にまとめました。マイナス金利の影響もあって、メガバンクの三菱UFJ銀行と、三井住友銀行は0.002%となっており、実店舗を持たないネット銀行でも0.01%から0.2%の金利となっています。
例えばオリックス銀行に100万円を3年預けて0.2%の金利を得た場合、2,000円の利息となります。三菱UFJ銀行や三井住友銀行に3年間、100万円を預けた場合は、20円の金利です。
ネット銀行のほうが比較的金利は高めですが、利息を目当てに定期預金を行う場合、ある程度の金額でなければ効果的ではありません。
※数値は2021年10月9日時点のものとなります。
項目 | 6ヶ月 | 1年 | 3年 |
---|---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 0.002% | 0.002% | 0.002% |
三井住友銀行 | 0.002% | 0.002% | 0.002% |
オリックス銀行 | 0.10% | 0.12% | 0.20% |
新生銀行 | 0.01% | 0.01% | 0.01% |
3.投資信託の平均的なリターン
投資信託の平均的なリターンを、ファンドのテーマごとに見ていきましょう。
3-1.インデックス型
日経225やTOPIX、米国のS&P500、先進国株式インデックスファンドのトータルリターンを表にまとめました。直近1年は相場の動きが大きかったためリターンが大きくなっていますが、3年の期間を確認することで、ここ最近の株式相場の傾向を見ることができます。
長期視点でみると株式市場は上昇トレンドが継続しており、特に米国市場の時価総額は拡大し続けています。しかしプラス収益の分だけマイナスになる可能性も孕んでいますので、3年運用しても必ずしもこのような結果になるとは言い切れない点に注意が必要です。
※数値は2021年12月4日時点のものとなります。
項目 | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
---|---|---|---|
ニッセイ日経225インデックスファンド | 0.92% | 27.39% | 11.44% |
ニッセイTOPIXインデックスファンド | 6.38% | 29.20% | 9.07% |
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | 14.51% | 52.73% | 21.52% |
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 13.25% | 53.10% | 19.77% |
3-2.テーマ別
バランス型ファンド、国内債券と東証REIT指数のETFをピックアップして表にまとめてみました。バランス型ファンドは、国内外の株式や債権、REITを上手く組み合わせて収益のバランスをとっています。
ここ1年の株式相場の変動の影響でトータルリターンが大きくなっていますが、全体的に見ても、マーケットの好調がうまく反映されているようです。一方、国内債券の指標であるNOMURA-BPI総合をベンチマークとしたETFでは、株式市場の好調の反面、停滞しています。一般的に株式が上昇する時に、債券価格は下がる動きをとることが多いため、このような数値となっています。
東証REIT指数に連動するETFでは、株式の好調と同等に収益を確保している点がポイント。REIT市場は、株式と同じく好調トレンドが維持されており、3年間でも年率10%台のトータルリターンを維持しています。
※情報は2021年12月4日時点のものです。
項目 | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) | 5.26% | 26.02% | 9.74% |
ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型 | 5.69% | 20.74% | 9.04% |
国内債券・NOMURA-BPI総合 | 0.06% | 0.00% | 0.56% |
東証REIT指数連動型上場投信 | 3.04% | 32.48% | 10.17% |
4.投資信託の仕組みとリスク
定期預金と比べて高いリターンを実現している投資信託ですが、投資を検討する前に運営の仕組みとリスクを理解しておきましょう。
4-1.3つの会社が運用に携わる
投資信託はファンドが直接お金を預かって運用する仕組みではありません。販売、運用、管理の3つに分かれて運用を行います。
- 証券会社や銀行などの販売会社
- 運用方針を決めて指図する運用会社
- 資産の管理と売買を実行する受託会社
3つの会社が携わることで責任を分散することができ、万が一どこかの会社が破綻しても財産が守られる仕組みです。
ファンドを保有している間にかかり続ける信託報酬は、3つの会社が決められた配分で取得し、販売手数料は販売会社の収益となります。手数料などの運用コストは、投資信託の運用上とても重要になりますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
4-2.投資信託がもつリスク
投資信託には以下4つのリスクがあります。
- 価格変動リスク
- 為替変動リスク
- 信用リスク
- 金利変動リスク
世の中の流れが大きく変わるような出来事に対するリスクには注意が必要です。最近では世界的に金融緩和の流れが続いていますが、転じて金融引締の時期がくると、金利変動リスクと為替ヘッジに関連するリスクが顕在化します。
短期の価格変動は、時間が立つともとの価格に戻ることもありますが、世の中の流れが変わるとしばらく戻らないこともありますので、マーケットのトレンドを読むことが重要になるのです。
5.定期預金と投資の棲み分け
低リスクな定期預金と、収益を狙う投資信託をうまく使い分けることで、長期にわたる資産形成の計画を建てることができます。
5-1.許容できるリスクを決める
投資による資産形成の計画を立てる時は、どの程度のリスクを許容できるのか、事前に決めておかなければいけません。
許容できるリスクの範囲は、世代によってことなります。一般的に投資に回せるお金が多くなるのは、高齢者世代とされています。学費の捻出や住宅ローンの支払いで投資に回せるお金が少ない時は、あえて定期預金などの現金の割合を増やすことも考えなければいけません。
無理せずに継続できる毎月の運用資金をベースに、状況に応じて資金をコントロールしてリスク管理を行いましょう。
5-2.セット型円定期は内容確認を
銀行では、円定期と投資信託を組み合わせた商品が販売されています。例えば100万円の資産の内、50万円を円定期、50万円で投資信託の買付、という内訳で預金するものです。円定期の金利は3ヶ月もので3%など、昨今の状況を考えるとかなりの高金利が設定されている点が特徴です。
販売手数料が0%のファンドが選択できると良いのですが、1%程度かかるファンドの場合、円定期の金利分よりも手数料のほうが高くなってしまい、結局損してしまいかねないケースに注意が必要です。
円定期の金利優遇商品は退職金プランとして商品化されているケースが多く、選択できるファンドが限定されている場合もあるので、ファンドの運用テーマやコストをよく確認するようにしましょう。
まとめ
守りの円定期と攻めの投資信託をうまく活用することが、長期運用を上手く進めるポイントです。
低金利状況下の円定期預金は、ほぼ利息を期待することはできませんが、ペイオフ制度による現金保証は大きなメリットの一つです。1,000万円までの資産がペイオフ保証の対象となりますので、多くの資産を保有している場合、いくつかの金融機関へ分散してペイオフ対策をしておきましょう。
投資信託は、長期運用によって緩やかなリターンを狙うことができますので、許容できるリスクを勘案しつつ適宜、バランスをとって運用を進めると良いでしょう。
sayran
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