金利が上昇すると株価はどうなる?日米事例をもとに背景を解説

金利と株価の動きには密接な関係があります。この記事では、金利が上昇すると株価はどうなるのか、日本株や米国株にどのような影響を与えるのかについて解説します。

目次

  1. 金利上昇と株価の関係
  2. 金利上昇はハイテク株に逆風
  3. 米国長期金利の上昇と株価
  4. 実質金利と名目金利
  5. インフレと金利
  6. 景気敏感株は金利上昇局面でも上がる可能性がある
  7. まとめ

1.金利上昇と株価の関係

金利と株価には関係があります。金利には短期金利と長期金利がありますが、長期金利で判断するのが一般的です。

通常、長期金利が上昇すると株価は下落し、長期金利が下落すると株価は上昇する傾向にあるのです。長期金利とは、取引期間が1年を超える債券などの金利のことで、10年債利回りを参考にするのが一般的です。

たとえば長期金利が3%から1%に下落した場合、投資家は債券を購入するよりも株式を買うほうが有利だと考えます。ですから債券から株式に資金が流れ、株価は上昇するのです。

一方、長期金利が3%から5%に上昇した場合、リスクの大きい株式投資を行うよりも債券を買うほうが安全に利益を狙えると投資家は考えます。ですから、長期金利が上昇した場合は株式から債券にお金が移動し、株価が下落する傾向にあるのです。

2.金利上昇はハイテク株に逆風

長期金利が上昇すると、IT・ハイテクなどのグロース(成長株)は売られやすくなります。グロース株はPER(株価収益率)が高く、PERの逆数である益回りが低い傾向にあるからです。PERと益回りの計算式は、以下の通りです。

PER=株価÷1株当たり純利益
益回り=1÷PER

益回りは低いほど、株価は割高と判断されます。そして、長期金利が上昇すると、相対的な益回りの低さが嫌気されるグロース株は売られる傾向にあるのです。

3.米国長期金利の上昇と株価

米国ではテーパリング(量的緩和の縮小)観測が強まり、長期金利が上昇しています。コロナ禍における過去に例がない規模の金融緩和では、マネーをリスクの高い株式市場にひきつける役割を果たしてきました(金利低下・株価上昇)。

2021年8月までの株高は、金融緩和による金利低下が下支えしてきたのです。金利が低いと利息が減る債券より株式の魅力が増すからです。しかし、金融政策が正常化に向かうなかで、とくに高PERのハイテク株が売られる展開になっているのです。

4.実質金利と名目金利

金利には「実質金利」と「名目金利」があります。実質金利とは、物価上昇率を考慮した金利のことです。一方、私たちがよく目にする金利は「名目金利」で、金融機関の店頭などで預金金利として表示されています。

実質金利と名目金利の式は、以下の通りです。

実質金利=名目金利―期待インフレ率

名目金利は10年国債利回り、期待インフレ率は予想物価上昇率(BEI:ブレークイーブン・インフレ率)を使います。

ブレークイーブン・インフレ率は、市場で予想されている期待インフレ率です。通常、国債(10年物)の利回りから物価連動国債(10年物)の利回りを引いた値を利用します。ブレークイーブン・インフレ率がプラスで推移していれば、市場は物価上昇を予想していると判断します。一方、マイナスで推移していれば、物価が低下していくと予想していることになるのです。

足元の米国の実質金利は、マイナスの状態が続いています。将来の物価上昇率の見通しが、名目金利を上回る状態が続いているからです。債券を持っていても物価上昇によるインフレの効果で実質的に損がでるので、株などのリスク資産にお金が流れやすくなっていたのです。

その結果、2018年末にS&P500株価指数の予想PERは14倍でしたが、2021年の9月には21倍まで高まっていました。9月以降は金利が上昇し、実質金利も上昇したことで、債券から株式へという資金の流れが逆転。PERが高いハイテク株中心に売られる展開になったのです。

5.インフレと金利

米長期金利は、10月にはいって1.6%台まで上昇してきています。さらに金利を上昇させる要因として、インフレの加速があります。インフレとは、物価(モノの値段)が上がることです。

通常、インフレが進むと金利の上昇要因になります。たとえば、好景気になると設備投資や消費が活発になります。そして消費が増えるということは、サービスやモノの買い手が多くなるということです。ですから、供給と需要の関係から物価は上昇(インフレ)します。

物価が上昇傾向になると、少しでも安い値段で買いたいという人が増えるので、お金が使われます。そして金融機関はお金の流出を防ぐために金利を高く提示し、その結果、金利が上がっていくのです。

6.景気敏感株は金利上昇局面でも上がる可能性がある

ハイテク・成長株は金利上昇局面で売られる傾向にありますが、景気敏感株の多くは上昇する傾向にあります。景気敏感株とは景気の変動によって業績が大きく変動する業種で、化学や鉄鋼、機械、化学などがあります。金利が上昇する局面では景気も回復していることが多いので、景気敏感株の業績向上が期待できます。その結果、株価が上がりやすくなる傾向にあるのです。

ただ、日本では超低金利が続いていて金利の変動がほとんどないので、日本の景気敏感株は日本の長期金利よりも米国の長期金利の上昇に反応することが多くなっています。日本の景気敏感株は輸出の比率も高いので、米国経済が好調であれば、より業績向上が期待できるからです。

また銀行株も、金利上昇はプラスに働きます。銀行の収益源である貸付金の金利は、長期金利が上昇すると同じように上がります。その結果、金利収入が増えて業績が向上し、銀行株の上昇につながるのです。

まとめ

金利が上昇すると株価が下落するというのは教科書通りのセオリーですが、必ずしもすべての銘柄に当てはまるわけではありません。PERが高いハイテク株などの成長株は売られる傾向にありますが、景気敏感株や銀行株は上がる傾向にあるからです。

ですから、保有している銘柄が金利上昇局面によってどのように動く業種に属しているのかをきちんと把握しておくようにしてください。

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山下耕太郎

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011