買ってはいけない株の見分け方は?投資のプロがポイントを解説

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インデックスは上昇しているのにも関わらず、一向に株価が上がらない銘柄を持ち続けている方が、意外と多いのではないでしょうか。値上がりしにくい銘柄は、割高な水準で投資した銘柄や成長率が低調な銘柄ではないでしょうか。

株価上昇の原動力は企業成長です。すでに、企業成長がピークを迎えた企業の株価や期待先行で買い上げられた株価は上昇期待が小さいと言えそうです。

今回は買ってはいけない企業や投資する水準を過去の事例を含めて、投資のプロが解説します。

※株価は全て2024年3月15日時点です。
※本記事は2024年3月15日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 買ってはいけない銘柄のポイント
    1-1.利益率が低下傾向にある銘柄
    1-2.企業成長率が低い銘柄
    1-3.割高すぎる銘柄
  2. 投資初心者が注意したい銘柄
    2-1.テスラ(TSLA)
    2-2.パナソニック(6752)
    2-3.CYBERDYNE(7779)
  3. まとめ

1.買ってはいけない銘柄のポイント

企業の株価水準や財務状況の変化などから、買ってはいけない銘柄を見分けることが大切です。買ってはいけない銘柄を見分けるポイントを具体的にみていきましょう。

1-1.利益率が低下傾向にある銘柄

利益率が低下傾向にある企業の株価は下落する可能性が高いと考えられます。例えば、独占的な市場に他企業が参入した場合、値下げ競争による利益率が低下するケースがあります。

1-2.企業成長率が低い銘柄

売上高や利益が成長傾向にある企業に投資し、停滞気味の企業には投資しないようにしましょう。損益計算書を基に、長期間の売上高や利益をグラフ化し、そこに株価を重ねてみると、買って良い銘柄か避けた方が良い銘柄かどうかの判断材料となります。

例えばバブル崩壊以降の日本経済はデフレに陥り、企業の売上げが低迷しました。デフレだから企業の業績が悪くても仕方ないという経営者も中にはいるかもしれません。しかし、全ての企業が停滞していたわけではありません。売上を伸ばした企業の株価はデフレ下においても上昇傾向にありました。

1-3.割高すぎる銘柄

株価水準が高過ぎる銘柄に投資すると、大きな損失を被る可能性があります。特に新技術の開発初期段階で急騰する企業の株価に投資する場合には注意しましょう。このような企業の多くは赤字企業が多く、期待が株価を押し上げている傾向があります。

市場の流れに乗って投資してしまうと、株価は二度と日の目を見ない可能性があります。注目度が高い市場でも、決算内容が悪い企業の株には投資しないようにしましょう。

2.投資初心者が注意したい銘柄

ここでは、財務データから、投資初心者は注意したい銘柄を解説します。なお、企業の製品が悪いということではありませんので、誤解しないようにしてください。

2-1.テスラ(TSLA)

電気自動車のリーダー的存在のテスラですが、財務諸表を分析すると利益率低下が鮮明になっています。電気自動車市場に他社が参入し、競争が激化し、同社は販売価格の引き下げに動きました。このように利益率が低下傾向にある銘柄には投資する場合は、注意が必要です。

同社の株価に大きな転換をもたらしたのは、2018年第3四半期決算で黒字転換したことです。当時20ドル前後だった株価は、2021年12月には400ドル台まで上昇しました。利益率の推移をみると、黒字転換した2018年第3四半期の売上総利益率が22.33%、営業利益率が6.11%、純利益率は4.56%でした。利益率がピークを迎えたのは2022年第1四半期、利益率はそれぞれ29.11%、19.21%、17.69%です。

参照:テスラ「Documents and Events

トヨタ自動車の同四半期(2022年1~3月期)の売上総利益率は16.72%、営業利益率が5.71%、純利益率が6.58%なので、テスラの利益率はトヨタを大きく上回っていました。しかし、独占状況だった電気自動車市場に参入企業が増えると、テスラの利益率の低下が鮮明となってきました。2022年第4四半期の売上総利益率は23.76%でしたが、2023年第4四半期には17.63%に、同期の営業利益率が16.04%から8.20%低下しました。一方で、同期のトヨタの売上総利益率は22.30%、営業利益率が13.96%なので、トヨタの利益率がテスラを上回っています。

参照:トヨタ「有価証券報告書・四半期報告書

株価のピークは、2021年11月の414ドルです。現在の株価は163.57ドル、PERが34.58倍です。自動車メーカー各社のPERはGMが5.5倍、フォード・モーターが11.06倍、トヨタは10.48倍です。

米国におけるテスラのEVシェアは2021年の72%から2022年には65%に低下しています。シェア維持のための価格引き下げが続くと、さらに利益率が減少します。EV市場はブルーオーシャンからレッドオーシャンに変化しつつあります。割高なテスラのPERが同業他社の水準まで低下する可能性があります。

参照:auto dealer「U.S. EV Sales Spiked in 2022

2-2.パナソニック(6752)

白物家電で、数々の機能的にもデザイン的にも優れた製品を生産しているパナソニックですが、株価低迷が続いています。株価低迷の理由としては売上成長率が低いことが挙げられます。かつて白物家電で人気を二分していたソニーは、事業形態が大きく変化し、ゲーム・エンターテインメントの企業となりました。

1994年12月時点のパナソニックの株価は約1,100円、ソニー(分割調整後)は約2,300円でしたが現在の株価はソニーが13,065円、パナソニックは1,397.5円です。騰落率はソニーが468%、パナソニックは27%です。日経平均株価の騰落率が96%なのでパナソニックの株価がいかに低調なのかが分かります。

パナソニックとソニーの財務諸表を比較すると、1994年度のパナソニックは売上高が約6.6兆円、純利益は約240億円、ソニーは売上高が約3.7兆円、純利益は約150億円でした。2022年度にはソニーの売上高は1994年比約3倍の約11.5兆円に、純利益が同約61倍の9,370億円に成長した一方、同期間のパナソニックの売上高が約8.3兆円で成長率は26%、純利益は94年比約11倍の2,655億円でした。

営業利益率(2023年度)は、パナソニックの3.4%に対しソニーが10.2%、純利益率はソニーが8.1%、パナソニックは3.1%という水準です。

参照:ソニーグループ「有価証券報告書
参照:パナソニックホールディングス「有価証券報告書

ソニーの売上は、ゲーム&ネットワークサービスとエンタテイメント・テクノロジー&サービスの2分野で売上高の約50%を占めています。一方、パナソニックのセグメントは、くらし事業、オートモーティブ、コネクト、インダストリー、エナジー、その他です。その中でも、くらし事業(家電など)が売上高の約40%を占めています。ソニーは家電メーカーから大きく変化する一方、パナソニックは家電に力に注いでいます。

家電ではドラム式洗濯機など評判が良いパナソニックですが、株式市場での評価は低く株価が伸び悩んでいます。

参照:ソニーグループ「2023年度上半期連結業績
参照:パナソニックホールディングス「セグメント別の状況

2-3.CYBERDYNE(7779)

CYBERDYNEは、医療・福祉向けサイボーグ型ロボット「HAL」を開発し販売しています。2014年3月にマザーズ市場に上場、公募価格が3,700円、初値は8,510円でした。純利益がマイナスなので初値のPERはマイナスでした。上場時、超高齢化社会における介護ロボット需要の増加期待から、株価に過熱感がありました。

参照:ブルームバーグ「CYBERDYNEが新規上場、初値2.3倍に-人支援ロボット

2014年と2015年に株式分割が実施されました。業績は赤字でしたが、医療用ロボットの需要期待から株価が急伸しています。分割後の史上最高値は、2016年の2,600円台です。その後は株価が長期低迷し、2024年3月15日時点の株価は206円と高値比ではマイナス97%です。

医療用HALは、米国、欧州、アジアで医療機器承認を取得しており、グローバルに事業展開をしていますが、まだ黒字転換に至っていません。

赤字企業の株式に、割高な水準であるにも関わらず投資してしまうと、損失を出してしまう可能性が高いと言えます。市場の流行に乗って投資はしないようにしましょう。同様な例としては、米国で燃料電池銘柄がハイテクバブル時に起きました。

3.まとめ

安価で機能的な良い製品を製造している企業の株価が必ずしも投資に適しているわけではありません。株価は企業の業績変化、成長期待に反応します。

投資を避けたほうが良い企業の特徴は、利益率が低下傾向にある企業、割高な水準で取引されている企業の株式です。株式投資をする際には、企業の損益計算書などから業績変化を図式化するようにしましょう。また、市場の雰囲気や流れに流されないようにしてください。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。