下落相場、保有株は売るべき?判断方法をベテラン投資家が解説

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長期投資をしていれば、どこかで株式市場全体が急落して保有株の株価も大きく下がることがあります。そうした時にどのように対応すればいいのかについて、20年以上の投資歴を持つ筆者が経験をもとに解説します。

※2022年5月31日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 下落相場で実力差が現れる
  2. 下落相場では狼狽売りをしない
  3. 事前にルールを決めておくのが大切
  4. 相場全体の下落は有望株を買うチャンス
  5. リスクを軽減させるために分散投資をする
  6. まとめ

1.下落相場で実力差が現れる

米国での利上げやウクライナ情勢の緊迫化によって、S&P500種株価指数など米国の株価指数は下落基調にあります。とくにハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は、2021年11月の高値16,212.23ポイントから5月12日の安値11,108.76ポイントまで下落。下落率は32%に達して「弱気相場」入りしています。

米国経済そのものが減速に転じていないため、この下落は必ずしも長期化しない可能性もありますが、下落局面での損失で不安を感じている人も多いでしょう。

そして、米国株の下落につられ、日本株も上値の重い展開が続いています。

「上げ100日下げ3日」という相場格言があります。これは、株式市場は上昇よりも下落の方が急激なものになりやすい傾向があるという意味です。そして、相場が下落する時には、株取引で失敗してしまう人が増えます。

株価が上昇する局面では株を買って持ち続けていればいいので、たまたま運が良くて株式投資がうまくいったというケースもよくあります。

しかし、株価下落局面では逆に、株を長く持てば持つほど株価は下落し、損失が膨らんでいくので、きちんとした戦術や取引ルールが必要です。株の下落局面でこそ、投資家の実力の差が大きく表れるのです。

2.下落相場では狼狽売りをしない

投資家がもっともやってはいけないことは、下落相場での狼狽(ろうばい)売りです。株価が下落すると、もっと損失が膨らむのではないかという恐怖心から売りをだしてしまう投資家が増えます。

しかし下落相場では、むしろ保有する現金を使って保有株式を増やすほうが、長期的に資産形成をねらう場合には妥当なのです。そして、ある程度上昇したら保有株の一部を現金化し、次の下落を待つようにします。

株価全体が10~20%程度下落することはよくあります。そうした時に資産を増やす人は株を買い、資産を減らす人は底値近辺で投げる傾向があるのです。

3.事前にルールを決めておくが大切

株価は下げる時の方がスピードは速くなります。しかし、あらかじめ保有株の売却ルールを決めておかないと、株価が急落したときに準備ができず、保有株を投げ売りしたり、株価が安いときにパニック的に売却したりする可能性が上がりがちです。

事前に株式を売却する時のルールを決めておき、きちんとルールを守ることが大切です。ルールを決めておけば、株価が急落する局面でも損失を最小限に抑えることができるようになります。

10~20年といったスパンで長期投資をしていれば、株式市場全体が急落する場面はたびたび起こります。2000年以降も2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、株価が暴落する局面が何回もありました。

個別株を保有している場合、株価が半分以下になってしまうこともあります。しかし、株価下落に耐えられずパニック的に売却してしまうと、その後の戻り局面に乗れず、損失を回復できなくなってしまうのです。

もちろん保有し続けた結果、株価が戻らず損失を抱えたままの状態(塩漬け株)になる可能性もあります。大切なのは、株価が下落している要因が株式市場全体の影響なのか、個別株の材料なのかを判断し、売買ルールをきちんと決めておくことなのです。

4.相場全体の下落は有望株を買うチャンス

株式市場全体が急落する場面で保有株を買い増しするのは、利益を増やすチャンスになります。ただし、企業の業績やチャートをきちんと確認し、買うポイントを決めておくことが大切です。単純に株価が下がったら買うというのを繰り返していると、大きな損失を抱える可能性があるからです。

長期下落相場になると、20%の下落では収まらず、30%、40%、50%と株価の下落が続き、買いが繰り返されることになります。その結果、資金力のない個人投資家は、何度買っても株価は下がり続け、含み損が膨らみ、やがて投資資金が底をついてしまいます。ですから、安易な逆張り買いには慎重になるべきなのです。

ただ、人も企業も、いい暮らしをしたい、もっと成長したいと思えば経済は拡大します。そして、企業業績は拡大し、株価も上昇するのです。このように考えると、理論的には株価は基本的に上がり続けると考えられます。この点を理解していれば、株価が急落しても驚くことなく、冷静に対処できるはずです。

いずれやってくる急落局面では、その都度、保有している現金で株を買い下がっていく。このように対処できれば、ピンチはチャンスになります。世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏も、株価が急落する場面で買い増しすることで有名です。

5.リスクを軽減させるために分散投資をする

リスクを軽減させるためには、1つの銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分散投資するようにしてください。

分散投資は、投資対象を分散させ、資産運用に伴う価格変動リスクを低減させることで、良好なリターンを得るための手段です。1つの株式にすべての資金を集中させると、その株の株価が下落した場合、ポートフォリオ全体に悪影響がおよびます。しかし、値動きの異なる複数の株式に資金を分散すれば、リスクを分散し、安定したリターンが期待できるのです。

また、株式だけでなく債券や金(ゴールド)などの資産を保有しておけば、株式市場が急落するときのヘッジになります。

複数の資産に分散投資しておくことで心理的な不安が軽減され、長期的な運用ができるようになります。短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、分散投資をしてリスクを抑えながら、長期的な利益を目指すようにしてください。

まとめ

株価が下落する局面でパニック売りをしないよう、あらかじめ売却ルールを決めておくことが大切です。ただ、個別株の材料ではなく株式市場全体の急落による株価の下落時は買いのチャンスになります。株価の動きに対応できるよう、きちんと売買ルールを決めておくようにしてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011