高配当株への投資に興味を持っているものの、どのように選んだらいいのか分からず、悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
本稿では投資のプロである筆者が、高配当株の種類や、今後の成長が期待でき、長期運用に向いている高配当銘柄を解説します。NISA枠の活用などで、是非参考にしてみてください。
※株価は全て2023年11月15日の終値です。
※本記事は2023年11月27日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 高配当銘柄の種類
1-1.成熟産業
1-2.成長産業 - 今から狙える高配当銘柄
2-1.本田技研工業(7267)
2-2.INPEC(1605)
2-3.日本製鉄(5401) - まとめ
1.高配当銘柄の種類
高配当銘柄には、2つのタイプに分類できます。
- 成熟産業に属する企業で、今後の成長が期待されないため、株価が割安な水準に放置されている企業
- 企業が成長しているものの、なんらかの理由で株価が低水準で推移している企業
以下で、詳しく解説します。
1-1.成熟産業
成熟産業の例として、学習塾が挙げられます。日本では少子化が進んでいるため、市場が縮小傾向にあります。参入障壁が低く競争が激しいためです。
総務省によると2022年10月時点では15歳未満人口は前年に比べ28.2万人減少しました。
参照:総務省「人口推計」
高配当株の例としてナガセ(9733)を取り上げてみましょう。同社は、大学受験塾の「東進ハイスクール」や中学受験塾の「四谷大塚」を運営しています。
2023年3月期の売上は前年比6.0%増、純利益は16.3%増と好調でした。しかし、2022年12月に1,830円(分割調整後)だった株価は1,895円と、ほぼ同水準で推移しています。TOPIXは同期間で約25%上昇しています。
参照:ナガセ「決算説明会資料」
ナガセは、株価低迷により配当利回りは約3.5%と、高利回りです。
1-2.成長産業
成長産業の例としては、半導体産業が挙げられます。半導体の市場規模は、AIや電気自動車の普及とともに拡大基調にあります。半導体の世界市場は2030年には約1.13兆ドルと、2022年の6,406億ドルからの拡大が予想されています。
参照:Newscast「半導体の世界市場-2023年~2030年」
半導体関連の高利回り銘柄として、フェローテックホールディングス(6890)が挙げられます。フェローテックホールディングスの2023年3月期の売上高は前年比57.53%増の2,108億円、純利益は同11.41%増です。
参照:フェローテックホールディングス「第43期決算報告書」
2023年3月期の配当金額は105円、株価が2,758円なので、配当利回りは3.80%です。株価は安値圏で推移しています。
2.今から狙える高配当銘柄
2-1.本田技研工業(7267)
本田技研工業は、自動車メーカーとして国内第3位、世界第4位、オートバイで世界トップククラスの販売台数を誇っています。特に、オートバイはアセアン3国(インドネシア、ベトナム、タイ)で75%以上の市場シェアを占めています。インドにおいても、約25%の市場シェアを誇っています。
二輪事業の営業利益率(2023年第2四半期累計)は16.10%と、四輪事業の4.74%を大きく上回っています。同期の売上高は二輪車事業が1兆5,725億円、四輪車事業が6兆3,470億円と大きな差があるものの、営業利益では二輪車事業が2,533億円に対し、四輪車事業は3,012億円と売上高ほど大きな差はありません。
参照:HONDA「2023年度第2四半期決算説明会」
本田技研工業は、2001年からインドでの事業を展開しており、2024年に二輪電動製品の発売を予定しています。
インドでは二輪車のEV化が進んでおり、インド道路交通・高速道路省によると、2022年の二輪電動バイクは2021年の15.6万台から62.9万台と、約4倍に拡大しました。インドの二輪車市場は世界最大で、同社の市場シェアは拡大の余地があります。インド市場での販売拡大が業績の鍵となりそうです。
参照:ジェトロ「2022年のEV登録台数100万台超、二輪車は前年比4倍以上」
予想PER8.52倍、PBR0.63倍、株価1,602.5円、配当金58円、配当利回り3.62%です。
2-2.INPEC(1605)
INPEC(旧国際石油開発帝石株式会社)は、日本最大級の総合エネルギー開発企業として、石油・天然ガスなどを日本に供給しています。株式の21.19%を経済産業大臣が保有しています。
日本政府は、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け取り組んでいます。二酸化炭素を排出しない、クリーンエネルギーとして水素への期待が高まっています。同社は、川崎重工業と岩谷産業が共同出資する日本水素エネルギー株式会社(JSE)に資本算入し、2030年代の水素商業化に向け水素の液化・輸送技術の確立と、国際液化水素サプライチェーンの構築を目指しています。
なお、INPECは株主優待制度を実施しており、毎年12月31日時点、400株以上を1年以上継続保有すると株数・継続保有年数に応じ、QUOカード(1,000円~5,000円)を受け取ることができます。
予想PER7.98倍、PBR0.62倍、株価2,083円、配当金74円、配当利回り3.55%です。
2-3.日本製鉄(5401)
日本製鉄は、日本最大手の高炉メーカーです。粗鋼生産量において日本最大で、世界では第4位です。
参照:日本製鉄「統合報告書」
製鉄所では、鉄鉱石やコークス(石炭)を高炉に投入し、鉄を製造しています。コークスを燃やす際には二酸化炭素が大量に発生し、鉄鋼業界の二酸化炭素排出量は、国内製造業業界別排出量371万トン(2020年度)のうち、最大の35%を占めています。
参照:経済産業省「鉄鋼業の脱炭素化に向けた世界の取り組み(前編)~「グリーンスチール」とは何か?」
そのため、日本鉄鋼業は「COURSE50」というプロジェクトを立ち上げ、コークスの代わりに水素を利用して鉄を製造する「水素還元製鉄」の開発に取り組んでいます。2030年に高炉・転炉プロセスでのCOURSE50の実機化などで、対2013年比で30%の二酸化炭素削減の実現、2050年にはカーボンニュートラルを目指しています。
2023年8月には、高炉水素還元技術Super COURSE50の試験炉において、高炉本体から二酸化炭素排出量を22%削減する効果(世界最高水準)が確認されました。さらに、2023年内をめどに、30%以上の削減を目指した試験を予定しています。
参照:日本鉄鋼業「カーボンニュートラルビジョン2050」
予想PER7.27倍、PBR0.66倍、株価3,314円、配当金150円、配当利回り4.53%です。
3.まとめ
今回は、高配当銘柄を3銘柄を解説しました。INPECはクリーンエネルギー分野、日本製鉄は水素還元製鉄の開発で、ともに脱酸素化を目指しています。本田技研工業は、成長期待が高いインド市場で2024年に二輪電動製品の販売を予定しています。
これら3銘柄については、いずれも配当利回りが3.5%超えで、PBRは1倍を下回り、PERについても割安感があります。また今後の成長期待が高いため、長期運用に適している銘柄と言えるでしょう。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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