不況が来た際の家計はどう守る?今からできる資産運用や対策とは

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2022年に入り、主に日米の金利差拡大から急激な円安が進んでいます。円安によってインフレが生じ、コスト増から企業の業績も伸びません。金融引き締めを行っている米国もインフレが収まらず、景気が減速していく見通しです。

近い将来には世界全体が不況に見舞われるともいわれ、不安に感じる人もいるでしょう。この記事では不況時の家計の防衛策と資産運用の方法について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年10月26日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 不況から家計を守る方法
    1-1.家計支出を見直す
    1-2.緊急予備資金を準備しておく
    1-3.高金利の借入を返済する
    1-4.副業などで収入を増やす
    1-5.スキルアップを心がける
    1-6.住宅ローンの借り換えを検討する
  2. 不況のときの資産運用の考え方
    2-1.市場回復を見込んでコツコツ続ける
    2-2.インフレに強い資産への分散投資も
  3. 不況に強い資産運用
    3-1.iDeCo(個人型確定拠出年金)
    3-2.つみたてNISA
    3-3.株式投資
    3-4.債券投資
    3-5.不動産投資
    3-6.金投資
  4. まとめ

1.不況から家計を守る方法

最初に、不況で収入が減るなどの悪影響があった場合に取れる対策を紹介します。

1-1.家計支出を見直す

不況の影響で生活が苦しくなった場合、まずは家計支出を見直します。一例として以下のような費用を見直してみましょう。

自動車費

自動車は車両そのものの購入費用以外に、保有するだけでもお金がかかります。自動車税・自動車保険・車検代・ガソリン代などを合計すると年間数十万円に上るでしょう。

自動車の利用頻度が低いならば、手放すことも1つの方法です。自動車が1台なくなるだけでも家計の負担を大きく減らせます。

生命保険料

生命保険の必要保障額は個人の状況の変化に応じて見直し、過不足がないようにしましょう。たとえば、住宅を取得して住宅ローン契約の際に団体信用生命保険に加入すれば、住居費の分の死亡保障は必要なくなるかもしれません。保険を契約したら放置せず、必要に応じて見直しましょう。

1-2.緊急予備資金を準備しておく

不況で勤務先の業績が悪化し、失業や収入が減少するリスクに備え、緊急予備資金を生活費の半年分は確保しておきましょう。緊急予備資金はすぐに使える預貯金や財形貯蓄での準備が適しています。

1-3.高金利の借入を返済する

不況で収入が減ったときに高金利の借入があると、返済で生活が苦しくなります。カードローンなど高金利の借入はなるべく完済し、新規の借入も起こさないほうが無難です。長期で高金利の借入がある場合、借り換えで金利負担が減らせないか検討しましょう。

1-4.副業などで収入を増やす

不況で収入が減ってしまった場合、節約だけで家計を守るには限界もあります。その場合、できる範囲で収入を増やすことも視野に入れましょう。政府も副業を推奨し、2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しています。

その流れから副業を解禁する企業も増えています。勤務先に問題がなければ、本業に支障のない範囲での副業も検討の余地があるでしょう。できれば、スキルアップにつながる仕事が望ましいといえます。

1-5.スキルアップを心がける

現在の収入では十分でない場合、より待遇のよい仕事に就けるように資格取得などでスキルアアップを心がけましょう。不況であっても人手不足の業種はあり、スキルがあれば転職できる可能性も高まります。

不況時に安定した収入を得るためにも、日頃から仕事のスキルを向上させておくことはとても大切です。

1-6.住宅ローンの借り換えを検討する

住宅金融支援機構が2022年4月に行った「住宅ローン利用者の実態調査」によると、住宅ローンで変動金利を選んでいる人の割合は73.9%です。史上最低ともいえる低金利の状況で、固定金利より負担の少ない変動金利が選ばれていると考えられます。

しかし、変動金利は常に金利上昇リスクと背中合わせです。不況のときに金利が上昇して住宅ローンの返済額が増えると、家計が苦しくなります。

現在の金利水準で固定金利に借り換えられれば、将来金利が上昇してもずっと返済額が変わりません。返済期間が長い人は、住宅ローンの借り換えを検討しましょう。

2.不況のときの資産運用の考え方

不況のときの資産運用のやり方は通常時とどう違うのでしょうか。考え方を解説します。

2-1.市場回復を見込んでコツコツ続ける

市場が上向きのときには投資マインドも上向きになり、資産運用を始める人も増えます。しかし、本来資産運用は好不況にかかわらず長期的に続けるべきものです。すでに運用を始めている人は、投資内容を少し見直す程度で、継続して運用を行うのがよいでしょう。

資産の値下がり時は資産形成の好機でもあります。将来のための「種まき」のときと考えるとよいでしょう。

2-2.インフレに強い資産への分散投資も

不況時に特に避けるべきなのは、特定の資産へ偏った運用です。例えば全財産で米ドルを買うような投資は、リスクが高まります。インフレに強い現物資産なども視野に入れた分散投資が望ましいといえます。

3.不況に強い資産運用

ここからは、不況に強い資産運用を紹介します。長期の市場予測などは難しく、何かに集中する運用はリスクが高まります。以下の資産運用を組み合わせ、不況に負けない資産形成を心がけましょう。

3-1.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は公的年金の上乗せとなる制度です。加入者自身で金融機関が用意した運用商品で運用し、その成果を60歳以降に受け取ります。iDeCoは掛金が全額所得控除になるため、税の負担が軽減される仕組みです。そのため、掛金を支払っても経済的負担が少なくすみ、不況に強い資産運用といえます。

また、iDeCoはスイッチングといって、保有している商品を売って別の商品を買うことが手数料無料で自由にできます。そのため、リスク商品のリバランスがしやすく、長期投資において非常にメリットのある制度です。定期的にリバランスを行うことで資産配分を一定に保ち、急激な市場の変動リスクに備えることができます。

ただしiDeCoは老後資金準備に特化した制度のため、60歳以降にならないと引き出しができません。そのため、掛金は無理のない余裕資金の範囲で設定することが大切です。

3-2.つみたてNISA

長期にわたってコツコツ積立てる資産運用は、好不況にかかわらず資産形成に有効です。つみたてNISAはNISA(少額投資非課税制度)の中で、長期の積立投資に特化しています。通常なら運用益に20.315%の税金がかかるところ、つみたてNISA枠ならかからない点が大きなメリットです。

つみたてNISAの投資対象は、金融庁が選定した長期・分散・積立に適した投資信託またはETFです。いずれも購入時手数料がかからず毎月分配型でないため、効率のよい資産形成が期待できます。

つみたてNISAはiDeCoと違い、積立以外の買付ができません(中途換金は自由)。そのため、リバランスのようなメンテナンスができない点はデメリットです。リバランスも考えた長期運用がしたい人は、バランスファンドの利用が選択肢の1つです。

3-3.株式投資

株式投資にはさまざまな投資手法があります。信用取引は一定の委託保証金を担保として差し入れることで、保証金の3.3倍の取引が可能です。信用取引では「売り」から取引ができるので、株式市場が低迷している場合も利益を得られます。

空売りは保証金以上の取引ができるなどのメリットがありますが、現物取引にはないリスクもあります。

理論上損失が無限

通常の買いから入る取引の場合、最大の損失は株価が0円になったケースです。それ以上の損失はありません。しかし、空売りした銘柄が値上がりした場合、値上がりには上限がない点に注意が必要です。

現物取引にはないコストがかかる

借りた株を売る空売りでは、株式を借りる費用として貸株料を負担しなければなりません。借りる株式が不足した場合には逆日歩(品貸料)も発生します。

3-4.債券投資

債券は一般的に低リスク資産のため、投資しても大きなリターンは期待できません。しかし、資産の一定割合を債券で持つと、大きな経済変動でリスクの高い資産が値下がりしたときに資産全体の目減りを防ぐことができます。

債券は市場金利が上昇すると値下がりしますが、値動きの振れ幅は株式より小さい傾向があります。

3-5.不動産投資

不況への備えとして、現物資産での資産運用も有効とされています。不動産投資のうち、アパートやマンションなどの居住用不動産の家賃は経済変動の影響を受けにくいという特長があります。アパートやマンションは入居者にとって生活基盤であり、不況でも住居の必要性は変わらないからです。

不動産を直接取得して賃貸に供する投資は少なくとも数百万円の資金が必要で、気軽には始められません。その場合、REIT(不動産投資信託)や不動産クラウドファンディングなどの小口化された運用商品を活用する方法もあります。

3-6.金投資

「有事の金」という言葉があるように、金は経済変動などに強い資産とされています。金は世界中どこでも公正な価格で取引される、世界共通の通貨の性質も持つ運用商品です。分散投資の対象として一定割合の金を持つのは、資産を守ることにつながります。

金投資には地金以外にETFや投資信託、純金積立などの方法があり、少額から始められます。

まとめ

為替介入を実施されたものの、円安傾向は依然として収まる見通しが立たない状況です。日本は日銀の黒田総裁の任期が終わる2023年4月まで金融緩和を継続すると見られ、少なくともそこまでは円安不況が続く可能性があります。

かつては20年以上デフレだった日本もインフレに転じ、資産運用の必要性を感じるようになった人も少なくないでしょう。無理に高いリスクを取るべきではありませんが、運用には資産の目減りを防ぐ目的もあります。分散投資を心がけ、資産を守っていきましょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント