投資信託、為替ヘッジあり・なしはどちらが良い?主要ファンドの成績を比較

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ファンドの概要にある「為替ヘッジ」は何を意味するんだろう、と疑問に感じたことはないでしょうか。為替ヘッジとは、為替差損益、つまり通貨価格の変動による成績のブレを抑える手法のことを言います。

為替ヘッジありのファンドは、ある手法を用いて為替変動リスクを抑えています。ありとなし、双方にメリットがあり、一概にどちらが良いとは言い切れません。

本記事では、為替ヘッジについて実際のファンドを参考にしつつ、全容を説明します。投資信託のリスクについて知りたい人はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。

目次

  1. 為替ヘッジとは?為替リスクを抑える手法を紹介
    1-1.為替リスクとは
    1-2.為替ヘッジの具体的な手法
  2. 為替ヘッジありとなしではどちらがいいのか
    2-1.為替ヘッジのメリット
    2-2.為替ヘッジのデメリット
    2-3.投資金額と状況によって為替ヘッジの有無を決める
  3. ファンド運用における為替ヘッジありなしの違いを分析
    3-1.基準価額と純資産総額
    3-2.トータルリターンの推移
  4. まとめ

1.為替ヘッジとは?為替リスクを抑える手法を紹介

為替ヘッジのヘッジ(Hedge)は、回避するという意味をもつ英単語です。為替ヘッジには、為替リスクを抑える、小さくするなどの意味があります。以下、為替リスクと為替ヘッジの手法について、それぞれ説明します。

  1. 為替リスクとは
  2. 為替ヘッジの具体的な手法

1-1.為替リスクとは

為替リスクとは、海外の運用商品に投資する場合に、現地の通貨と円の交換レートが変動するリスクを指します。例えば米ドルのような現地通貨が円に対して上昇すると円安となり、為替差益を得ることができますが、反対に円に対して現地通貨が下落すると差損となります。

海外資産を1万ドル分買い付けた場合、ドル円レートが1円変動するたびに、評価額が1万円変動します。

例えば、1ドル110円の時に1万ドルの海外資産を買い付けた場合、買付金額は110万円です。数年後ドル円レートが90円となった場合、差損は20万円となり、評価額は90万円です。逆にドル円レートが140円になった場合、差益は30万円となり評価額は140万円となります。

差益や差損の振れ幅を為替リスクと言い、振れ幅が大きいほど為替リスクが高い、大きいなどと言います。

1-2.為替ヘッジの具体的な手法

為替ヘッジは一般的に為替予約取引によって行われます。為替予約取引とは、海外資産を買い付けた時に、売却時のドル円レートを予約しておく取引です。1ドル100円の予約取引を行うと、売却時に1ドル90円になっていても100円で取引できます。

為替ヘッジありのファンドは、海外の株や債券を買い付ける時のドル円レートで売りの為替予約取引を行い、差損を抑えようとします。

2.為替ヘッジありとなしではどちらがいいのか

資産運用上、為替ヘッジありとなしとではどちらがいいのでしょうか。為替ヘッジのメリットとデメリットを確認の上、説明します。

2-1.為替ヘッジのメリット

為替ヘッジのメリットは前述のとおり、円高による為替変動リスクの抑制です。1万ドルの米国資産を買い付けた場合、ドル円レートが1円動くと評価額が1万円変動します。

10万ドルの資産では、1円の変動だと評価額の変動は10万円です。買い付けた資産の金額が多くなればなるほど、為替リスクは大きくなります。大きな運用資金を海外資産へ投入する時に、為替ヘッジは効果的に働くでしょう。

2-2.為替ヘッジのデメリット

為替ヘッジによって円高による為替差損を相殺するということは、同様に円安時の為替差益も相殺してしまうということです。したがって、為替相場において円安がトレンドとなっている時は為替ヘッジの恩恵を受けられません。

また、内外短期金利の差が拡大している時は、為替ヘッジにかかるヘッジコストが割高になるデメリットもあります。投資先の通貨の短期金利が日本円よりも高い場合、為替ヘッジを行うたびにコストを負担しなければいけません。

なお、高騰するヘッジコストを回避するため、一時的に為替ヘッジを外して運用するファンドもあります。

2-3.投資金額と状況によって為替ヘッジの有無を決める

投資金額が多いほど、為替ヘッジの恩恵を受けやすくなりますので、海外資産へ多額の運用資金を投じる時は、為替ヘッジありを検討したほうが良いでしょう。

しかし、現状では日本と諸外国の金利差は拡大する一方です。ヘッジコストの高騰と円安トレンドを考慮すろと、為替ヘッジをしないほうが良い、という判断もできます。

為替ヘッジの有無は、投資金額とその時点の内外金利差や、為替相場のトレンドを元に決めると良いでしょう。

3.ファンド運用における為替ヘッジありなしの違いを分析

為替ヘッジありとなしでは、どの程度運用成績に違いが出るのでしょうか。以下、2つのファンドにて基準価額と純資産、トータルリターンの推移を確認しました。

※数値は2022年12月9日時点の情報です

  1. モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP
  2. サイバーセキュリティ株式オープン

3-1.基準価額と純資産総額

モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP

項目 基準価額 純資産総額
為替ヘッジあり 19,223円 743.54億円
為替ヘッジなし 33,349円 1,978.74億円

サイバーセキュリティ株式オープン

項目 基準価額 純資産総額
為替ヘッジあり 16,420円 695.21億円
為替ヘッジなし 21,511円 2,787.52億円

基準価額、純資産総額ともに、為替ヘッジなしのほうが上回っています。為替ヘッジなしが多くの資金を集めている理由は運用成績の差によるものです。

次項にて、トータルリターンの推移をまとめました。

3-2.トータルリターンの推移

モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP

項目 6ヶ月 1年 3年 5年
トータルリターン/為替ヘッジあり -3.1 -12.45 4.55 6.73
トータルリターン/為替ヘッジなし 3.6 5.26 12.87 11.48

サイバーセキュリティ株式オープン

項目 6ヶ月 1年 3年 5年
トータルリターン/為替ヘッジあり -30.29 -42.35 4.82 9.59
トータルリターン/為替ヘッジなし -24.78 -30.22 14.02 15.61

日本と米国の内外金利差の拡大と、直近の円安によって運用成績にかなりの差がでています。現在米国はインフレ抑制のために立て続けに利上げを行っているため、為替ヘッジにかかるコストはかさむ一方です。その上、円安の恩恵を受けていないため、運用成績に大きな差がついています。

まとめ

為替ヘッジは円高による為替変動リスクを最小限に抑えるための手法です。為替ヘッジは為替予約取引にて行われ、コストは内外短期金利差によって決まります。

為替予約取引では金利が低い国が高い国へ支払うため、昨今のように、日本と諸外国の金利差が拡大する局面では、コストが割高になります。

また、為替ヘッジは円安局面で為替差益を受け取ることができないため、直近の状況では、為替ヘッジありのファンドでは成果が出にくくなっています。

為替ヘッジありとなし、一概にどちらが良いとはいえませんが、内外金利差の拡大と円安局面では為替ヘッジなしのほうが利益を得やすくなります。為替ヘッジの有無を選ぶ時は、状況を考慮のうえ判断しましょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。