投資信託の基準価額が上下する条件は?投資判断に使える指標や見方も

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投資信託の基準価額変動について、ふと疑問に感じたことがある方は案外多くいらっしゃるのではないでしょうか。基準価額は投資信託の成績を端的に表した数字で、主に純資産総額の増減によって日々変動します。

この記事では、純資産が変動する原因や、運用成績を表す指標など、基準価額に関する項目を解説しています。投資信託の運用成績をさまざまな角度から分析したい方は、基準価額の仕組みについてご確認ください。

目次

  1. 投資信託の基準価額とは?
    1-1.基準価額はファンドの価格を示す数値
    1-2.基準価額の計算式
    1-3.基準価額の確認方法
  2. 基準価額の変動要因
    2-1.純資産の増減による変動
    2-2.月次レポートにて分析
  3. 基準価額に関連する投資数値とグラフの活用
    3-1.純資産
    3-2.騰落率
    3-3.トータルリターン
    3-4.各数値のグラフの活用
  4. まとめ

1.投資信託の基準価額とは?

まず基準価額の基本的な概要について、一通り確認しておきましょう。

1-1.基準価額はファンドの価格を示す数値

基準価額は、株式における株価と同様にファンドにつけられた価値のことをいいます。ほとんどのファンドでは、1万口あたりの金額で表示されます。ファンドを買付、解約する時はその時点での基準価額をもとに精算が行われます。

基準価額は基準価格と言い間違えられることがありますが、基準価額はファンドにつけられた価格ではなく、価値と見ますので、基準価額が正しい呼称となります。基準価額は株式のように、需給関係で決まった価格ではなく、資産をもとに算出された数値です。

1-2.基準価額の計算式

基準価額の計算式は以下の通りです。

純資産総額÷総口数=基準価額

純資産総額を、投資している人が持っている口数の総数で割ると基準価額が算出されます。多くのファンドでは1万口あたりの基準価額を表示しますので、その場合、算出された基準価額に1万を掛けます。

前述のとおり、投資信託の基準価額は、株式や物品のように双方の売買によって決まる価格ではありません。運用による純資産の増加や、資金を集めることで算出されるため、基準価額という呼称になるのです。

株式など市場で行われる取引と、投資信託のファンドへの出資は根本的なスタンスに違いがあります。

1-3.基準価額の確認方法

基準価額は、証券会社のWEBサイトや、日経新聞などの紙媒体、証券会社が提供するテレホンサービスで確認することができます。基準価額の更新は夜の20時以降に各ファンド随時更新され、明確な更新時間の決まりはありません。インターネットを使わない投資家は、次の日の日経新聞や一般紙で基準価額を確認します。

取引の申し込みが締め切られた後に基準価額が公示されるのは、投資家の利益を守るためのもので、これをブラインド方式と呼びます。ブラインド方式をとる投資信託は株式のように機動的な取引には適していませんので、注意が必要です。

2.基準価額の変動要因

基準価額が変動する要因とファンドの分析方法について解説します。

2-1.純資産の増減による変動

基準価額は、純資産の総額を総口数で割る計算なので、口数に対して純資産が多くなると上昇します。基準価額の変動要因となる純資産の増減について、確認しておきましょう。

運用による損益

保有資産である株式の時価総額の増加、債券の利払い、リートの分配金などによって純資産額は増加します。逆に運用がうまくいかず、保有資産の時価総額が減り続けると純資産も目減りしていきます。

日経平均に連動するインデックスファンドは、日経平均の上昇や下落によって基準価額の変動が起こりますが、日本国債や社債、世界の国債などに投資するファンドは直接の影響を受けることがありません。構成資産が関係する指数や資産の変動によって、基準価額が変動することを押さえておきましょう。

資金の流入や流出

ファンドの運用による増減の他に、投資家による出資や解約でも、日々純資産が変動します。

証券会社の営業方針によって特定のファンドを集中的に売り込むことがありますが、この場合、運用以外の要素で純資産額が増えます。運用による純資産の増減ほど大きな動きは見せませんが、資本が増えると運用の幅も広がり、さらなる収益を狙うことができますので、投資家による出資は見逃せないポイントとなるのです。

分配金を支払った後

分配金は純資産から支払われるため、ファンドが分配金を出した直後は純資産の減少によって、基準価額も下落します。

分配金は預金や債券のように利息の発生によって元金とは別に支払われるものではなく、信託財産の中から切り崩して支払われます。したがって、分配金を支払ったあとは純資産が減少し、基準価額も下落するのです。

他のファンドへの支払い

他には、日々の信託報酬の支払いや、売買委託手数料、マザーファンドや、別のファンドへ投資する際の管理費用なども信託財産の中から支払われます。運用コストが高いファンドは、日々、信託財産から費用を多めに支払っているということになります。

ファンドの運用管理費が高いと長期運用において影響が大きくなりますので、どのような運用方針で管理費用がどの程度かかるのか、事前に確認しておきましょう。

2-2.月次レポートにて分析

基準価額の変動や純資産総額の増減は月次レポートにて確認、分析できます。

純資産の流入と流出

運用会社ごとに月次レポートのフォーマットは異なりますが、純資産の増減はどのファンドでもレポートされています。

SBI証券やマネックス証券などのネット証券では、月次レポートを確認するまでもなく、WEBサイト上でファンド分析がされているため、確認が簡単です。グラフや表で純資産の流出入が確認できますので、月次レポートと併せて分析に活用しましょう。

保有資産の売却と買い増し

保有資産の売却や買い増しは、月次レポートの構成銘柄や、組入資産の業種の割合から推測することができます。運用会社によっては、ファンドマネージャーからの運用報告が掲載されており、売却や買い増しの報告がされていることもあります。買い増しや売却はファンドの運用成績にかかわってくるため、よく確認しておきたいところです。

リバランス

バランス型ファンドは、年に数回、資産の構成比率を整えるために大きなリバランスを行うことがあります。売却、買い増しなど、リバランスの方法によっても純資産総額に影響を与えることがありますので、月次レポートの報告と併せて、純資産総額の動きを確認しておきましょう。

3.基準価額に関連する投資数値とグラフの活用

投資信託の運用成績を測る指標は基準価額だけではありません。投資信託の運用成績を確認する上で、重要な3つの指標を解説し、分析に役立つグラフの見方を紹介します。

3-1.純資産

基準価額の変動要因の解説で触れましたが、純資産総額はファンドの要ともいえる数値です。純資産額が多ければ多いほど、余裕をもった資産運用が可能です。純資産が減っていくと最終的には強制償還となり、ファンドの命脈が尽きて運用が終わってしまいます。

純資産は運用成績による増減の他に、投資家からの出資によっても増えますので、純資産総額の多さはファンドの人気の証と見ることもできます。

投資先のファンドを決める時は、純資産の流出入も確認しておきましょう。純資産の増減は、面グラフで基準価額と併せて表示されることが多くあります。基準価額と併せて見るとファンドの状況をよく把握できるでしょう。

3-2.騰落率

騰落率は、ある一定期間の基準価額の変動を表した数値で、パーセンテージで表示されます。ファンドを確認する上では、まず買付価格である基準価額を確認すると思いますが、騰落率を確認すると基準価額の変動率がわかります。

一通り騰落率を確認して、大きな変動があるファンドをピックアップし、純資産の流出入や増減と組み合わせてファンドの運用を分析すると、効率の良いスクリーニングが可能です。騰落率だけ見ると、ファンドの運用成績を正確に把握できませんので、注意が必要です。

3-3.トータルリターン

トータルリターンは、一定期間における分配金を含めたファンドの損益を表した数値でパーセンテージで表示されます。騰落率と違い、トータルリターンは分配金込で計算しています。特別分配金を出しているファンドでは、本来の損益がわかりにくくなる事を懸念し、投資家の視点にたって設定された投資指標です。

毎月分配金を出しているファンドの場合、トータルリターンの数値をしっかり確認しておく必要があります。

3-4.各数値のグラフの活用

マトリクスの表は数字の推移を読み取るには最適ですが、量を測ることには適していません。純資産総額など数値のボリュームを確認したい時は、面グラフで確認しましょう。

面グラフは、基準価額の推移と併せて表示されているため、ファンドの状況をひと目で確認することができます。基準価額と純資産の関係性も把握できるため、ファンドの運用を確認する時には、ぜひ目を通しておきたいグラフです。

理想的なグラフは、少しづつ純資産を積み上げているなだらかな右肩あがりのグラフです。月次レポートとあわせて、毎月分析しつつ、ファンドを見る目を養っていきましょう。

まとめ

基準価額が変動する要因は、純資産の増減が大きく影響しています。純資産の金額に対して総口数が少ない場合、基準価額が高くなるしくみです。したがって、運用による収益や投資家からの出資は基準価額の変動に大きな影響を与えます。

SBI証券などのネット証券では、WEBサイトでファンドの純資産増減について詳しく記載していますので、増減の要因を推測し、ファンドの運用を分析しましょう。分析を重ねるにつれてファンドの運用成績を見る目が養われるため、自分なりの運用スタイルを確立することができます。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。