22年はインフレ率の上昇を抑制するためのアメリカによる急ピッチな利上げによって稀に見る大幅な円安・ドル高が進行したほか、年末に向けては円安解消の動きが生じるなど、ここ最近にはないほどの高騰・急落する相場となっています。
そんな中、経済動向を正確に把握し、かつリスクに備えることは今後の株式投資において最も重要なことの一つであると言えるでしょう。
そこで今回は、現状を踏まえた2023年の注目業種のほか、経済動向の予測と注意すべきリスクなどを詳しく解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年12月25日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 2023年に注目の業種
1-1.2022年の経済状況
1-2.2023年に株価の上昇が見込まれる業種 - 経済動向の予測と注意すべきリスク
2-1.経済成長ペースの回復
2-2.金融引き締めによる景気の減速 - まとめ
1.2023年に注目の業種
まずは2023年に注目される可能性がある業種について考察していきます。
1-1.2022年の経済状況
冒頭でも触れた通り、22年に入ってから円安が急激に進行し、22年1月時点で1ドル=115円だったドル円相場はその後の22年10月21日には一時1ドル=151円後半にまで達するなど、実に32年ぶりとなる円安水準を記録しました。
このような状況の中、自動車産業を中心とする多くの輸出企業が「円安メリット」を享受することとなり、業績に良い影響が生まれ、株価が上昇する結果となりました。
しかし、9月と10月に政府・日銀による二度の為替介入が実施されたこと、また12月20日には日銀が「金融政策決定会合」において大規模緩和を修正する方針を決定したことなどから、円安解消の動きが見られ始めています(参照:日本銀行「当面の金融政策運営について」)。
今回、日銀の黒田総裁は「市場機能の改善をはかる」ことを目的として、これまで0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%にまで拡大する旨を発表しました。
この発表を受けて、長期金利は一時0.46%となるなど、午前中の0.25%から大幅な上昇を見せ、15年7月以来となる高水準を付けました。
また、円相場についても、一時1ドル=132円台前半という、8月以来、実に4ヶ月ぶりとなる円高・ドル安水準を付けることとなりました。
なお、日銀の政策修正が公表される前の時点では137円台前半となっており、その値幅は6年半ぶりとなる5円超を記録しています。
このほか、これまで急ピッチで大幅な利上げを実施してきたアメリカの「FRB(連邦準備制度理事会)」が、インフレ率の鈍化などを受けて、12月14日の「米連邦公開市場委員会(FOMC)」において利上げ幅の縮小を発表しました(参照:BOARD OF GOVERNORS of the FEDERAL RESERVE SYSTEM “December 13-14, 2022 FOMC Meeting”)。
この発表では、前回まで継続していた0.75%の利上げ幅を0.5%に縮小することが明らかにされており、このような状況から23年は円高に振れるという見方が強まっています。
1-2.2023年に株価の上昇が見込まれる業種
前述の通り、23年は円高に振れる可能性が高いとされており、特に22年に業績が振るわなかった企業が「円高メリット」を享受することで収益増加を実現し、株価の上昇につながると見られています。
具体的には、下記に挙げるような業種に大きな関心が集まっています。
- 穀物類(トウモロコシ、大豆など)
- 輸入食品(ワイン、コーヒーなど)
- 輸入家具
- 輸入資源(木材、原油など)
- 紙・パルプ
- エネルギー(電力、ガスなど)
- アパレル
- OEM生産
- 航空関連
穀物類や輸入食品、紙・パルプなどは、原材料を輸入で賄っているという点から、また、アパレルやOEM生産に関しては、生産拠点を海外に置いているという点から円高メリットを受けやすいとされています。
さらには、円高が進行すると海外旅行にかかる費用が割安となるため、旅行会社や航空会社などのビジネスチャンスも拡大するとされています。
2.経済動向の予測と注意すべきリスク
次に経済動向の予測と注意すべきリスクについてまとめます。
2-1.経済成長ペースの回復
日本では経済活動の正常化を促進する政策などを背景として景気が戻りつつあり、日本政府による水際対策の緩和などからも、インバウンド消費が徐々に回復している状況です。
具体的には、個人消費についてはサービス関連のペントアップ需要を中心として回復が本格化すると見られているほか、設備投資については、大企業を中心として高水準の企業収益が継続していることに加えて、環境関連やデジタル化関連などに対する投資意欲も強くなっており、増加基調が続く見通しとされています。
その一方で、海外経済の悪化を原因とする輸出の下振れが23年の経済成長を鈍化させるという見方も広がっています。
具体的には、アメリカにおいて急速に進められている金融引き締めの影響が23年に本格化してくると予想されており、失業率の大幅な上昇が懸念されているほか、中国におけるロックダウンや不動産市場の大幅な調整なども警戒されています。
さらには、欧州経済に関しても、歴史的な高インフレや金融引き締めを背景としたユーロ圏の信用収縮など、景気が後退局面に入る可能性が大いにあることから、今後の世界経済は減速するのではと予想されています。
もし23年にこれらの状況が同時発生した場合、世界経済は深刻な不況に陥ると見られており、それによって日本経済も多大な影響を被ることとなり、実質GDPは最大で5%pt以上下落し、大幅なマイナス成長となることが推計されています。
このような状況から、23年における日本の経済成長は一旦ペースが抑制されると見られ、その後は海外景気の回復に伴って成長ペースを徐々に回復していくという、底堅い推移が続く見込みとなっています。
また、国内の物価に関しては、23年以降は円高を背景として原材料費の高騰をはじめとするコストプッシュ圧力が緩和していくと見られており、コア物価指数の伸び幅は鈍化する見込みです。
2-2.金融引き締めによる景気の減速
前述の通り、12月20日に日銀が大規模緩和を修正する方針を決定したことなどから、円安解消の動きが見られ始めています。また、今回の発表は事実上の利上げとされており、今後金融の引き締めがどこまで行われるのかに視線が集まっています。
その一方で、今回の利上げが景気の減速を引き起こすのではという懸念も広がっています。
実際、金利引き上げによる家計や企業経営への影響は避けられないものとなっており、23年1月以降はまず住宅ローンの固定金利が上昇し、住宅投資の重荷となる可能性が高いと考えられています。
また、中小企業に関しては、財務基盤が比較的弱いことから、少しの金利上昇でも債務負担が増加してしまうため、設備投資の減少につながる可能性も大きいとされています。
このほか、金利上昇によって企業活動が抑制される状況が続いた場合、働く人の所得の減少などを原因として消費活動にも悪影響が及ぼされるという懸念も強く、景気や物価に対しても大きな影響を与えると見られています。
まとめ
22年は歴史的な円安・ドル高を記録することとなりましたが、23年は円高方向に転換していくという見方が強く、「円高メリット」を受けやすい輸入業種や旅行・航空関連の銘柄などに関心が集まっています。
しかしその一方で、日銀による金融の引き締めがどこまで行われるのかにも注目が寄せられており、利上げによって生じる景気や物価に対しての影響が懸念されています。
そのため、今後の金融政策に引き続き注意しつつ、円高メリットも意識して銘柄選定を行うことをおすすめします。
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中島 翔
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