機関投資家を筆頭に、投資の際にESGやサステナビリティを重視する傾向が強まっています。投資家も投資先の選定にあたり、環境や社会の課題解決へ取り組んでいるかを重視する傾向です。
ナブテスコは精密減速機や油圧機器などを手掛ける機器メーカーで、ESG関連の取り組みにも積極的です。今回はナブテスコのESGに関する取り組み、株価推移や業績について解説します。
※2022年12月20日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ナブテスコの概要
- ナブテスコのESGに関する取り組み
2-1.CO2排出量の削減
2-2.埋め立て廃棄物削減活動 - ナブテスコの10年間の株価推移と業績
3-1.10年間の株価推移
3-2.業績 - ナブテスコの将来性
- ナブテスコの配当・優待情報
- まとめ
1.ナブテスコの概要
銘柄 | ナブテスコ |
証券コード | 6268 |
株価 | 3,315円 |
PER(会社予想) | 19.40倍 |
PBR(実績) | 1.58倍 |
配当利回り(会社予想) | 2.35% |
※2022年12月20日のデータ
ナブテスコの設立は2003年ですが、その前身であるナブコは1925年に設立されました。鉄道車両用ブレーキ装置の製造・販売から始まり、油圧機器、車両用ドアエンジンなどに領域を広げ、2003年に帝人製機と合併してナブテスコとなりました。従業員は連結で7,844人(2021年12月末時点)、連結子会社は国内14社と海外51社(2021年12月末時点)です。
ナブテスコは多種多様な機器を手掛けていますが、そのうち主要な製品は下記の8つです。
- 精密減速機
- 油圧機器(油圧ショベル用装甲ユニット)
- 鉄道車両用機器(ドア開閉装置、ブレーキシステム)
- 航空機器(フライト・コントロール・アクチュエーション・システム)
- 舶用機器(船用エンジン)
- 商用車用機器(エアドライヤー)
- 自動ドア
- 包装機(レトルト食品用充填包装機)
ナブテスコは高いシェアを保有する領域も多く、鉄道車両用ドアの開閉装置は国内で約60%、レトルト食品用充填包装機は国内で約85%です。各事業分野のスペシャリストとして、ニッチ領域に注力して市場をリードしてきた存在と言えます。
2.ナブテスコのESGに関する取り組み
ナブテスコはサステナビリティ・ESGに注力する企業でもあります。外部からも高い評価を受けており、下記のようなESG関連のインデックスに組み入れられています。
- Dow Jones Sustainability World Index (DJSI World)
- Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index (DJSI Asia Pacific)
- FTSE4Good Global Index
- FTSE Blossom Japan
- FTSE Blossom Japan Sector Relative Index
- MSCI ESG Leaders Indexes
- MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ
- MSCI女性活躍指数
同社の数々のESG関連の取り組みから、一部を紹介します。
2-1.CO2排出量の削減
気候変動問題への取り組みとして、グループでの温室効果ガス排出量の削減や省エネ活動を推進しています。「省エネ活動表彰制度」「省エネ製品認定制度」「環境貢献達成度」などの環境関連のインセンティブ制度を導入し、グループ全体での活動状況や効果をモニタリングしながら、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。
2021年度は高効率空調、照明機器、変圧器の更新等に設備に関する省エネ活動を実施。太陽光発電システムの導入も加わり、国内CO2排出量の大幅な削減を達成しました。CO2排出量は2021年度の目標は54,394(t-CO2)でしたが、実績は45,082(t-CO2)で、目標より15%以上少ない排出量となりました。
CO2排出量の年度別のトレンドを見ると、2019年度から大きく削減しています。2021年度の数値は、2017年度の70%以下であり、着実に削減が進んでいることが分かります。なお示されている排出量については、「LRQAリミテッド」からの第三者保証も受けています。
またナブテスコ本社が所在する千代田区は、さまざまな温暖化対策を推進し、「2050ゼロカーボンちよだ」を目指して取り組んでいます。平成23年度からは「千代田区温暖化配慮行動計画書制度」が導入されました。
区内の各事業所が取り組んでいる「環境活動」「環境教育」「地域貢献活動」などの温暖化配慮行動について、その実施状況や計画を毎年区へ報告し、優良な取組みを公表しているものです。 ナブテスコの2021年度の取り組みは表彰に値する優良なものと認められ、特別賞を受賞しました。
2-2.埋め立て廃棄物の削減活動
ナブテスコグループでは、事業活動で発生する廃棄物の削減にも積極的に取り組んでいます。具体的には3R(Reduce, Reuse, Recycle)です。
使用可能な部品を再利用し、新たに生産する部品を減らすことで資源利用の効率化を図っています。また徹底した廃棄物管理を実施し、有害物質を含む廃棄物の排出は行われていません。
排出物は材料リサイクル、熱回収、無害化などに分類され、どれにも該当しないものが埋め立てされることになります。埋め立てられた量を見ると、2020年度と2021年度が0.0となっており、2年連続でゼロエミッション率0%を達成しています。2022年度以降もゼロエミッション率0%を目標とし、今後も3R活動を推進していく方針です。
2021年度には、岐阜県の工場内の航空機器向け表面処理工場跡地の利用方法検討の一環として、土壌の自主調査を実施しました。その結果、敷地内の土壌において土壌汚染対策法の指定基準を上回るフッ素および六価クロムが検出されました。汚染土壌の掘削除去、検査された土壌による埋め戻し等を完了し、岐阜県に措置完了届出書を提出しました。
3.ナブテスコの10年間の株価推移と業績
ここからはナブテスコの長期の株価推移と業績について見ていきましょう。
3-1.10年間の株価推移
同社の直近10年間の株価推移は、2,000円から5,000円の間で上昇・下落を繰り返しています。2017年12月までは5,000円まで上昇し、その後2020年にかけて2,000円台に下落。2021年4月までは再び5,000円台に上昇したものの、その後下落し、現在は3,000円台で推移しています。
大幅な上昇・下落はなく、全体的にやや方向性のない動きです。ただし若干ではありますが、底値が切り上がりつつある傾向も見受けられます。
3-2.業績
過去6年間の業績推移は下記のとおりです。
項目 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
---|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 244,968 | 282,422 | 294,626 | 289,808 | 279,358 | 299,802 |
営業利益 | 25,982 | 29,468 | 21,889 | 25,320 | 28,533 | 30,017 |
※単位:百万円
2021年度の売上高は2,998億円、営業利益は300億円で、いずれも過去最高となりました。売上高営業利益率は10%前後です。精密減速機は自動車産業における設備投資増加、油圧機器は中国需要や他地域での市場回復がプラス要因となりました。
2022年度第3四半期の決算説明資料によると、中国市場の需要が低迷したものの、精密減速機は産業用ロボット向けの需要が高く、為替影響もあって増収となりました。一方で営業利益は原材料費、派遣外注費、物流費などが高騰した影響により減益となりました。
2022年度の通期では、売上高は計画より微減、営業利益は計画より大幅減となる見通しとなっています。油圧機器の需要減少、コスト増加影響が重くのしかかっているようです。
4.ナブテスコの将来性
ナブテスコの将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。まずESGでは幅広い取り組みが行われ、具体的な取り組み内容や実績・進捗も公式ホームページで閲覧できます。CO2排出量の大幅な削減に成功しており、外部からも高く評価されています。
次に業績について、精密減速機の需要は底堅く、売上高は一定の規模を保持しています。2022年度通期もほぼ計画通りを見込んでいます。
一方で営業利益は油圧機器の需要減、コスト増などにより対計画より減少が見込まれています。油圧ショベルは中国市場における需要が重要ですが、上海ロックダウンなどの影響で需要が鈍い状況が継続しているようです。
油圧機器については今後、情勢によっては中国市場への依存割合を減らすことも視野に入れる必要があるでしょう。欧州販売会社をドイツに設立したので、今後欧州地域で伸ばしていけるかにも注目です。
5.ナブテスコの配当・優待情報
1株あたり年間配当 | 2021年度実績:77円 2022年度予定:78円 |
主な株主優待 | なし |
2022年度の年間配当は、2021年度とほぼ同水準を予定しています。株主優待制度は実施していません。
まとめ
ナブテスコのESG関連の取り組みや業績について解説しました。精密減速機器や油圧機器をメインとした機器メーカーで、省エネ活動や廃棄物削減などにも積極的に取り組んでいます。
業績に関して売上高は徐々に伸びていますが、営業利益は伸び悩みが見られます。今後いかに利益を高めていけるかが問われていると言えます。
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