2022年、中国市場の動向と日本株への影響は?主要トピックまとめ

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2021年9月、中国の不動産開発大手、中国恒大集団への破綻リスクが高まり、世界の株式市場は下落しました。日本でも機械や自動車関連など景気敏感株を中心に売りが広がり、個別銘柄では中国企業に投資しているソフトバンクグループが下げを拡大し、株式市場を押し下げました。

その後、中国恒大集団の問題は株式市場であまり意識されなくなりましたが、中国経済の動向は日本の株式市場に大きな影響を与えています。

この記事では、2022年の中国経済の注目点と、日本の株式市場に与える影響について解説します。

※2022年2月25日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 2022年の中国経済の4つの注目点
    1-1.3月の全国人民代表大会(全人代)での経済運営方針
    1-2.中国の不動産市場の動向
    1-3.コロナ政策の行方
    1-4.共産党大会の人事
  2. 人民元の行方
  3. まとめ

1.2022年の中国経済の4つの注目点

2022年の中国経済4つの注目点について解説します。

1-1.3月の全国人民代表大会(全人代)での経済運営方針

2022年は、まず3月の全国人民代表大会(全人代)に注目です。全人代は中国最高の国家権力機関で、日本の国会に相当します。全人代では一年間の政治・社会・経済など各分野における政策運営方針を審議します。

3月の全人代での経済運営方針では、5%以上ともいわれる成長率目標をどの水準に設定するのか、秋に党大会を控える2022年を景気重視スタンスで臨むのか、金融政策に対してどのような方針を示すかが注目されているのです。

2021年の中国の経済成長率は+8.1%と10年ぶりの水準になりましたが、IMF(国際通貨基金)では、新型コロナウイルスの感染再拡大による不可実性を理由に、今後の下振れリスクは増大していると分析しています(参照:日本経済新聞「「中国経済、下振れリスク増大」 IMFが年次審査」。

マーケットでは成長率目標が5%を下回り、財政赤字が国内総生産比(GDP)の3%を上回ると株価にはマイナスになるとみられています。一方、成長率目標が6%を上回ったり、不動産規制が緩和されたりした場合は、中国の売上高比率の高い企業にはプラス材料になります。

1-2.中国の不動産市場の動向

中国の不動産市場の動向にも注目です。中国恒大集団などの不動産企業が抱える債務問題や、不動産規制強化の影響で、中国国内の不動産販売は失速しています。中国人民銀行(中央銀行)は、2020年の夏に大手不動産会社に対し「3つのレッドライン」を設け、融資規制を導入しました。その結果、中国恒大集団が経営困難に陥ったのです。

景気悪化を食い止めるためには、政策金利の引き下げを続けるとともに不動産の規制を緩和するのが有効ですが、そうなると不動産バブルの膨張を許すことになるので、中国政府にとっては難しい判断となります。

1-3.コロナ政策の行方

中国は新型コロナウイルスの感染を完全に封じ込める「ゼロコロナ」政策を行っています。感染者数が少ない状況を維持できれば、北京冬季五輪終了後に、日本への観光需要が高まる可能性もあります。

しかし、新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら生存を続けており、終息の道筋は見えていません。欧米を中心に新型コロナウイルスの変異株「オミクロン型」が急速に広がっており、世界は再び新型コロナウイルスの脅威に直面しています。

中国が現在の「ゼロコロナ」から「ウィズコロナ」政策に転換すれば、「リベンジ消費」が本格化し、需要が高まる可能性があります。しかし、中国国内でも感染が広がった場合は、飲食や宿泊などのサービス需要が縮小し、個人消費など景気下押し圧力が強まるのです。

「ゼロコロナ政策」を続けてきた中国では、物流(モノの動き)はコロナショック前の2019年の水準を回復したものの、人流(ヒトの動き)は半分のレベルで低迷しています。新型コロナウイルスの感染拡大状況は、中国においても非常に注目されています。

1-4.共産党大会の人事

2022年の秋に予定されている共産党大会の人事にも注目です。党最高指導部を決める5年に1度の党大会では、習近平(シー・ジンピン)氏が国会主席として長期の基盤を築くことが現実的とする見方が強くなっています。

一方、李克強(リー・クォーチャン)首相や劉鶴(リュウ・ハァ)副首相の人事の行方が注目されています。習氏との3人体制がいいバランスになっていますが、後継者が誰になるかによって、バランスが崩れかねないからです。

米国でも2022年に中間選挙が予定されるなど、米中ともに重要イベントを控えていることから、外交問題が大きなリスクになる可能性もあるので警戒が必要です。

2.人民元の行方

2021年の人民元は、米ドル、ユーロ、日本円、豪ドルなどG10(主要10カ国)の通貨に対して全面高となりました。2021年の1年間に「人民元円」は14%近くも値上がりし、日本人が買ったら最も利益がでた通貨ペアの一つだったのです。

2021年の中国経済は大幅に減速し、1~3月期に前年比+18.3%だった実質国内総生産(GDP)成長率は、7~9月期に前年比4.9%まで低下しました。中国人民銀行(PBOC)は大手行に対する預金準備率を7月と12月に2回引き下げたほか、2021年末には1年8ヶ月ぶりに利下げを行っています。

金融緩和を進めた中国の通貨である人民元が、2021年は値上がりしたのです。近年では日本のFX市場でも人民元円を取引する投資家が増えており、2022年も人民元高が続くかどうかが注目されます。

まとめ

2022年の中国経済では、不動産バブルの行方や共産党大会の人事など注目材料が複数あります。中国の経済や株式市場の動向は日本株にも大きな影響を与えるので注意が必要です。目先は3月の全人代で、経済目標や不動産融資のスタンスがどうなるかが注目です。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011