米製薬大手メルク(ティッカーシンボル:MRK)が2月3日に発表した2021年10~12月決算は、売上高が前年同期比24%増の135億ドル(約1兆5,500億円、1ドル=115円換算)、純損益は前年同期の26億ドルの赤字から38億ドルの黒字に転換した(*1)。新型コロナウイルスの経口治療薬「モルヌピラビル」や主力のがん治療薬の販売が好調だった。モルヌピラビルの22年通期売上高が50~60億ドル(5,700~6,900億円)になるとの見通しも発表した。2月15日時点での株価は、決算発表後とほぼ同じ水準となっている。
売上高と1株当たり利益はともに市場予想を上回った(*2)。子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン「ガーダシル」に加え、悪性黒色腫(メラノーマ)や肺がん、ホジキンリンパ腫を対象にした「キイトルーダ」の販売が好調だった。
キイトルーダの売上高は前年同期比15%増の45億7700万ドル、ガーダシルは同53%増の15億2,800万ドルだった。ロバート・デイビス最高経営責任者(CEO)は、特に中国においてガーダシルの販売が大きく拡大したと述べた(*1)。
米リッジバック・バイオセラピューティクスと共同開発したモルヌピラビルの売上高は9億5200万ドル。21年12月、米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可を出して以降、140万回分を供給した。今後数日以内に世界25ヶ国以上に400万回分を供給する見通しだ。メルクとリッジバック・バイオセラピューティクスで利益を折半する。
デイビスCEOはCNBCに対し「モルヌピラビルが変異株のオミクロン株に有効であることを示せた。同治療薬を用いることで死亡リスクを90%減少させるという事実は、患者を助けるうえで大きな影響をもたらすだろう」と述べた(*2)。また決算発表後の電話会議にて、新種の変異株に対しても有効であると確信しているとの見解を示している(*3)。
モルヌピラビルに関しては、FDAが投与対象を18歳以上にするとともに、他の治療手段がない重症化リスクのある患者に限定して利用を認めている。メルクとリッジバック・バイオセラピューティクスの両社は1月28日、モルヌピラビルがオミクロン株(B.1.1.529系統)に対して有効性示すデータを公表した(*4)。メルク研究所を率いるディーン・リー氏は今後モルヌピラビルを他の治療法と組み合わせることを検討するとの考えを明らかにした(*3)。
またデイビスCEOはCNBCに対し、M&A(企業の合併・買収)が依然として重要な戦略であり、時間を要するものの、今後いくつかの買収機会があるだろうと述べた(*2)。21年9月末、メルクは約115億ドルを投じて米バイオ製薬のアクセレロン・ファーマを買収すると発表した。心血管疾患の治療薬で主力品を有するアクセレロンを取り込むことで、収益の多角化を図る狙いだ。
新型コロナウイルスの治療に関心が集まりやすい中、多方面への治療薬を製造しているメルクに注目だ。
【参照記事】*1 メルク「Merck Announces Fourth-Quarter and Full-Year 2021 Financial Results」
【参照記事】*2 cnbc「Merck expects to sell $5 billion to $6 billion of its new Covid treatment pill in 2022」
【参照記事】*3 メルク「Q4 2021 Merck & Co Inc Earnings Call on February 03, 2022」
【参照記事】*4 メルク「Merck and Ridgeback’s Molnupiravir, an Investigational Oral Antiviral COVID-19 Medicine, Demonstrated Activity Against Omicron Variant in In Vitro Studies」
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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