株主優待目的の投資の注意点は?損しないための対策をプロが解説

株主権利確定が年間でもっとも多い3月に入りました。権利確定日に株式を保有していると、配当金や優待を受け取ることができます。投資家にとってうれしい株主優待制度ですが、廃止されてしまうこともあります。廃止されると株価は下落する傾向があるため、優待銘柄に投資する場合には廃止リスクが低い銘柄に投資する必要があります。

そこで、今回は株主優待目的投資の注意点や、損をしないための対策を解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年3月4日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 株主優待制度とは
  2. 株主平等の原則からみた株主優待制度
  3. 企業にとっての株主優待のメリット・目的
    3-1.安定株主を増やす
    3-2.自社のファンを増やす
  4. 株主優待の投資家へのメリット
  5. 優待目的投資の注意点
  6. 株主優待を廃止・変更した会社
    6-1.日本たばこ産業(JT)
    6-2.出前館
    6-3.ワタミ
  7. まとめ

1 株主優待制度とは

株主優待制度とは、単元株(市場で売買される売買単位)を保有している株主を対象とし、配当金以外に自社製品や商品券などを贈呈する制度のことです。飲食関連の企業では、関連店舗で使える商品券や、鉄道など輸送関連の企業では割引券やフリーパスなどを贈呈している会社もあります。

2 株主平等の原則からみた株主優待制度

会社法では、株式会社は株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなくてはならないと規定されています。しかし、株主の優待制度が持ち株数に比例することはなく、優待の上限が設けられている場合が一般的です。

株主平等の原則から、グローバル企業の多くは株主優待制度を実施していません。また株主優待を実施している企業でも近年では、株主平等の原則を理由に株主優待制度を廃止する会社が増えています。

3 企業にとっての株主優待のメリット・目的

株主優待を実施する企業には、様々な目的があります。優待の多くは、自社製品だったり、自社チェーンで使える商品券や割引券だったりします。ここでは、なぜ企業が優待制度を実施するのかをみていきましょう。

3-1 安定株主を増やす

株主優待を実施する企業の目的の一つに、安定株主数を増やすということが挙げられます。株主優待目的の投資家は、長期にわたり株式を保有する傾向があります。株主優待目的の投資家は、企業にとって安定株主になりやすいと言えるのです。

株式の上場を維持するためには一定の株主数が必要なため、安定株主を増やすことは企業の上場維持対策とも言えます。

3-2 自社のファンを増やす

企業としては、株主優待を実施することで、自社製品のファンになってもらい売上を伸ばすという目的もあります。

食品メーカーのカゴメは、株主との長期的なつながりが深い会社として知られています。株主優待として、自社商品の詰め合わせを贈るほか、工場見学や料理教室など株主向けのイベントを開催するなどして、個人株主を増やしています。株主には主婦層が多く、株主と一般消費者では、同社の商品購入金額に大きな開きがあるようです。つまり、株主と長期的な良好関係を作ることは、企業業績にプラス材料と言えます。

4 株主優待の投資家へのメリット

株主優待は、投資家にとってもメリットがあります。株主限定商品や新商品をもらえるほか、税制面でもメリットがあります。配当金は課税されますが、株主優待で受け取った商品・サービスには課税されない場合もあります。

配当金は、1,000円支払われた場合、税率20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉徴収が課せられ、受取金額は797円となります。一方で、額面1,000円のクオカードを優待として受け取った場合には、優待を受け取った時点では税を徴収されることはありません。これは、株主優待が雑所得として取り扱われるためで、雑所得が年間20万円以下の場合には、確定申告の必要がありません。

また、優待分だけ実質配当利回りが上昇するというメリットもあります。一般的な配当利回りは、配当金を株価で割り求めます。しかし株主優待を実施している会社の場合には、優待相当額が上乗せされるため、実質的には利回りが上昇します。そのため、配当利回りが同じ場合は、優待を実施している銘柄のほうが実際の利回りが高くなるのです。

5 優待目的投資の注意点

優待目的投資の注意点は、優待が廃止されるリスクが高い銘柄には投資しないことです。

優待制度が廃止されると、その銘柄の株価が下落する傾向にあります。つまり、投資家にとって株主優待の廃止は、株価下落と優待廃止のダブルパンチとなる可能性があります。優待が廃止される会社の共通点は業績悪化です。

6 株主優待を廃止・変更した会社

株主優待を廃止・内容変更した過去の事例をみてみましょう。

6-1 日本たばこ産業(JT)

2022年2月14日に日本たばこ産業(JT)が株主優待の廃止を発表しました。廃止の理由として、株主平等の原則の観点から検討したことを挙げています。

JTの株主優待は、保有期間1年以上を条件に、株数に応じて4段階に分かれていました。100株の株主には、2,500円相当のJTグループ会社の商品が贈呈されます。

JTは高配当株として個人投資家から人気が高く、株主数は60万人を超えています。この60万人が100株の株主と想定すると、株主優待は15億円のコストとなります。同社は、業績悪化にともない2021年12月期の年間配当金を前期比24円減の130円としたばかりです。

今回の優待廃止についても、表向きは株主平等の原則を理由としていますが、コスト削減も目的だった可能性が高いと思われます。

6-2 出前館

出前館は、2021年8月19日に株主優待制度を廃止すると発表しました。これを受け、翌日8月20日の株価は急落し、ストップ安を付ける場面もありました。株価はその後も低迷しています。出前館の業績は売上が伸びているものの、赤字幅が拡大しています。

株主優待廃止の理由として同社は、順調な注文件数の増加にともない認知度が上がったことと、株主平等の原則を挙げています。

6-3 ワタミ

ワタミは、2021年2月8日に株主優待制度の変更を発表しました。同社の株主優待は、ワタミグループ内で利用できる食事券です。今回の変更により、優待券枚数が増えたことと、有効期限が延長されたことは、株主にとってメリットですが、優待券に利用制限が設定されてしまったことはデメリットです。

変更前は、1回当たりの利用枚数制限はなく、ランチタイムの利用も可能でした。変更後は、利用枚数が一人1回1枚(500円)まで、ランチタイムの利用は不可となりました。そのほか、宅食事業についても利用制限が設定されました。

同社は、株主優待制度の変更理由として、新型コロナ感染拡大の影響による業績悪化を挙げています。

まとめ

株主優待制度は、株主の楽しみのひとつです。しかし、優待制度を実施しているからという理由だけで投資をしないようにしましょう。優待を目的に投資しても、業績不振などにより優待制度が廃止される可能性があることに注意が必要です。

投資する場合は、企業の財務内容を確認し、業績が悪化傾向にある企業を避けるようにしましょう。また、株主優待は企業にとってはコスト増につながるため、個人株主数が増加傾向にある企業にも注意する必要があります。

優待目的の投資でリスクを下げるには、カゴメのように企業と株主がウィンウィンの関係にある会社に投資するように意識すると良いでしょう。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。