株式投資で利益を得る方法には、配当や株主優待などのインカムゲインと、売買によるキャピタルゲインがあります。しかし、「貸株」によって利益を得られるということは、知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、貸株の概要やメリット、注意点などについて解説します。また、貸株を行うための手続きも紹介しますので、参考にしてください。
目次
- 貸株とは?
- 貸株のメリット
2-1.貸株金利を受け取れる
2-2.長期的に保有している株式を活用することができる
2-3.自由に売却できる - 貸株の注意点・デメリット
3-1.株式を貸している間は株主優待を受けられない
3-2.配当金ではなく「貸株配当金相当額」となり雑所得扱いになる
3-3.貸株をしている証券会社が倒産したら貸株は戻ってこない - 貸株をするために必要な手続き
- まとめ
1.貸株とは?
株式投資における貸株には2つの意味があります。
1つは信用取引で株を空売りしたいと考える投資家に対して、証券会社が貸し出す株式のことを貸株といいます。空売りを行なう場合、投資家は保有していない株式を証券会社から借りてきて、それを売ることでポジションを保有します。そのため、投資家が株式を借りている間は「貸株料」というレンタル料金を証券会社に支払うことになります。
もう1つは、すでに保有している株式を誰かに貸し出すことも貸株といいます。証券会社を通じて株式を誰かに貸し出し、その対価として「貸株金利」という利息を受け取ることができます。
また、先述した信用取引のために証券会社が貸し出す貸株には、投資家から借りてきた株式が使用されることもあります。
本記事では、保有している株式を誰かに貸し出す貸株について解説していきます。
2.貸株のメリット
次に、貸株を行うメリットについて解説します。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 貸株金利を受け取れる
- 長期的に保有している株式を活用することができる
- 自由に売却できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.貸株金利を受け取れる
貸株を行う大きなメリットが、貸株金利を受け取れるということです。例えば、貸株金利が年率1.0%の株式銘柄を300万円分貸し出すとした場合、年間に3万円の金利を受け取ることができます。
各銘柄の貸株金利は証券会社がそれぞれ定めており、金利が高いものには年利が5%を超える銘柄も存在します。保有している株式を貸し出すことで貸株金利を受け取れるというのは、株式投資におけるメリットの1つになりえます。
2-2.長期的に保有している株式を活用することができる
貸株を行うメリットとしては、長期保有している株式を活用できるという点も挙げられます。
一般的に長期保有している株式の場合、配当金や株主優待を受けることができるものの、売却によるまとまった利益の確保は数年後や数十年後の一度という形になり得ます。その間、その株式は「保有しているだけ」の状態が続くことになります。
貸株を行うことで、株主優待や配当以外にも利益を得ることができます。将来的な値上がりを期待しつつ、インカムゲインを増やすことも可能なのが貸株の魅力の1つとなっているのです。
2-3.自由に売却できる
また貸株を行ったとしても、自分の好きなタイミングで自由に売却できるというのもメリットの1つです。
貸している株は自由に売ることができないという印象を持つ方もいるかと思いますが、実際には売り注文を出すだけで貸株は解消され、銘柄を売却することが可能です。
流動性を妨げず、株式を貸し出すことも売却することも簡単にできるため、使い勝手の良い運用手段の一つだといえます。
3.貸株の注意点
次に、貸株を行う場合の注意点について紹介します。具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 株式を貸している間は株主優待を受けられない
- 配当金ではなく「貸株配当金相当額」となり雑所得扱いになる
- 貸株をしている証券会社が倒産したら貸株は戻ってこない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.株式を貸している間は株主優待を受けられない
証券会社に株式を貸している状態では、その貸株分の株主優待を受けることはできません。
多くの銘柄では、特定の時点において株式を保有している場合に株主優待を受けることができます。ただし、株式を貸している間に株主優待を受けられる権利が確定する日を過ぎてしまうと、株主優待は受けられなくなってしまいますので注意しましょう。
保有している銘柄の株主優待をどうしても受けたいという場合は、権利が確定する日までに貸株を一旦返却してもらうようにしましょう。
なお、ネット証券「SBI証券」の貸株サービスでは、株主優待の権利確定日に自動的に権利を獲得する「優待権利自動取得サービス」が利用できます。権利落ちになったら、再度自動で貸出手続きをしてもらえますので、貸株を行いながら株主優待も受け取りたいという方は検討されてみると良いでしょう。
3-2.配当金ではなく「貸株配当金相当額」となり雑所得扱いになる
また株式を保有している場合、投資家は配当金も受け取ることができます。ただし、貸株をしている銘柄では、配当金ではなく「貸株配当金相当額」が支給されることになります。
この場合に注意しておきたいのが、貸株配当金相当額は「配当所得ではなく雑所得(もしくは事業所得)になる」ということです。
配当所得の場合、申告分離課税によって他の所得とは分けて課税申告をすることができます。ですが、雑所得になる場合は総合課税となります。そのため、原則として確定申告によって所得を申告する必要がありますし、株式投資による過去の損失と相殺できる損益通算の対象にもなりません。
所得の多い方の場合、総合課税の雑所得になると配当所得以上の税率が課される場合もあります。また前年などに株式投資で損失を出していた場合においても、利益を圧縮できるメリットがなくなるため、こうした税制面については注意が必要です。
3-3.貸株をしている証券会社が倒産したら貸株は戻ってこない
他にも注意点として挙げられるのは、貸株を行っているときに証券会社が倒産してしまった場合、貸した株は戻ってこないということです。
現在、貸株サービスを提供しているのは大手証券会社がほとんどですので、いきなり倒産するというケースはほとんど起きないかもしれません。ただ、貸株を行うのであれば、このようなリスクも存在するということは知っておいた方がいいでしょう。
4.貸株をするために必要な手続き
証券会社によって貸株を行うための手続きには違いがあります。大きく分けると、以下のような種類があります。
- 貸株専用の口座開設が必要なケース
- 証券口座のみで貸株が行なえるケース
- 証券口座を開設後、貸株サービスの利用を申し込むケース
いずれの場合も、ネット上で手続きを完結させることができます。
貸株サービスが利用できるようになったら、貸し方などについていくつかの設定を行います。設定内容も証券会社によって異なりますが、基本的には以下のような設定を行います。
- 保有している株式を全部貸し出す
- 新たに購入した株式は自動的に貸し出す
- 特定の銘柄だけ貸し出す
- 複数の銘柄の一部だけを貸し出す など
また、証券会社によっては貸株を行うことによって得たいメリットについても選択することができます。
- 金利を優先する
- 株主優待を優先する
- 株主優待と予想有配を優先する
金利を優先する場合は、配当金や株主優待の権利が確定する日でも、貸株の自動返却を行わず、できるだけ多くの金利を受け取れるようになります。
株主優待を優先する場合は、株主優待の権利が確定する日に株式が自動返却されるため、株主優待の権利を取得できます。ただし、株主優待がない銘柄の場合は、権利確定日に貸株の自動返却は行われません。また、配当金ではなく配当金相当額が支払われることになります。
また、株主優待も配当金も欲しいケースでは、株主優待・予想有配を優先します。この場合、株主優待・配当金双方の権利が確定する日に株式が自動返却されます。
これらを設定すれば、実際に貸株を行えるようになります。
まとめ
今回は貸株の概要やメリット、注意点、必要な手続きなどについて紹介しました。
貸株をすれば、貸株金利による利益を得ることができます。税制面など注意点はありますが、長期保有銘柄を有効活用できるメリットは大きいといえます。貸株に関心のある方は、この記事を参考に検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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山本 将弘
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