空売りのリスクと対策は?売買のタイミングや効果的な使い方も

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FRB(米国連邦準備理事会)の金融引き締めが本格化するなか、株式市場が下落基調にあるため、空売りに興味をもたれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

空売りは少額で大きな取引ができるため、短期間で大きな収益を上げられる可能性がありますが、株価が上昇すると大きな損が発生します。そこで、今回は空売りのリスクや対策などについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 空売りとは
  2. 信用取引の種類
    2-1.制度信用取引
    2-2.一般信用取引
  3. 空売りのリスク
    3-1.追証(おいしょう)
    3-2.逆日歩(ぎゃくひぶ)
  4. リスク対策
  5. 空売りのタイミング
  6. 空売りをする際のチェックポイント
    6-1.手数料
    6-2.信用倍率
    6-3.流動性
  7. 空売りの効率的な使い方
    7-1.下げ相場での利益狙い
    7-2.保有株のヘッジ
  8. まとめ

1 空売りとは

空売りとは、自身が保有していない株式を証券会社から借り、売却することです。株価が売り値より下がれば、買い戻すことで利益を上げることができます。なお、空売りをするためには、信用取引口座を開設する必要があります。

信用取引は、現金や株式を担保として証券会社に預けて株式を売買する方法です。預けた担保の評価額の約3.3倍の取引ができます。

2 信用取引の種類

信用取引には、制度信用取引と一般信用取引の2種類があり、売買をする場合にはいずれかを選択する必要があります。

2-1 制度信用取引

制度信用取引の対象銘柄は、上場銘柄のうち取引所が選んだ銘柄です。返済期限は6カ月、品貸料(株式を借りる際の調達費用)が取引所の規則で決められています。制度信用では、信用の売り残が信用の買い残を上回る状況が続くと、逆日歩(ぎゃくひぶ)というペナルティーが発生することがあります。

2-2 一般信用取引

一般信用取引は、投資家と証券会社の間で信用取引が完結します。対象銘柄は、各証券会社が指定した銘柄で、返済期限が原則3年と投資家にとって使いやすい内容と言えます。

なお、一般信用取引では、逆日歩が発生しないという特徴があります。

3 空売りのリスク

ここでは空売りのリスクについて解説します。

3-1 追証(おいしょう)

空売りをした場合、相場が売値より上昇した場合や担保を設定した銘柄の株価が下落した場合には、証券会社に追加の保証金(追証)を差し入れなければならないケースがあります。

追証が発生すると、期限までに追加保証金を入金するか、保有株式を担保に設定(代用有価証券)する必要があります。追証が払えない場合には、証券会社により強制的に反対売買が行われ、それでも資金が不足している場合には負債を負ってしまうことになります。

3-2 逆日歩(ぎゃくひぶ)

制度信用取引の場合、逆日歩が発生することもあります。逆日歩が発生すると、解消されるまで逆日歩料を支払う必要があるため、利益の圧迫要因となります。逆日歩は、1日につき1株当たり何銭(何円)と示されます。

4 リスク対策

空売りはリスクを伴うため、取引ルールを作って行うようにしましょう。特に、ロスカットルールで損失が発生した場合、さらなる損失の拡大を防ぐため、強制的に決済する水準を決めることが大切です。

損失が大きくなると、追証が発生することもあります。ロスカットの水準としては、株価が売値より20%以上上昇した場合や、チャートのテクニカルポイントなどが考えられます。自身でロスカットを実行することが難しい場合には、逆指値を利用するようにしましょう。

そのほか、リスク対策として、信用倍率(信用の買い残高と売り残高の比)を確認しましょう。買い残高と売り残高はいずれ解消されます。信用売りの残高は将来の買いに、信用買い残高は将来の売りにつながります。空売りをする場合には、買い残高が多い銘柄を選ぶようにしましょう。

5 空売りのタイミング

空売りのタイミングを計る方法として、チャート分析がよく用いられます。チャート分析は、売りや買いのポイントを簡単に算出できます。チャート分析には複数の方法がありますが、多くは株価の推移や出来高等を基準に分析します。

簡単な例としては、5日移動平均線(株価の5日間の終値平均)と25日移動平均線の組み合わせを用いた方法が挙げられます。このケースでは5日移動平均線が25日移動平均線を上回るタイミングを買いサイン(ゴールデンクロス)、下回った場合は売りサイン(デッドクロス)と呼びます。

なお、チャート分析の手法によって売り買いサインも様々あるため、一つの分析に頼らず複数の分析手法を用い、売り買いの判断をするようにしましょう。また、銘柄ごとに相性が良いチャートの分析方法を見つけるために、バックテスト(過去に遡り検証)すると良いでしょう。

企業の決算発表も空売りを仕掛ける機会だと言えそうです。企業が発表した業績と市場予想が異なる場合には、株価が乱高下することがあるからです。特に、決算の内容が市場予想よりも悪い場合には、株価が急落するケースが散見されます。

6 空売りをする際のチェックポイント

ここでは、空売りを仕掛ける場合のチェックポイントについて解説します。

6-1 手数料

株式取引手数料の低い証券会社を選びましょう。SBI証券やマネックス証券などのネット証券は、手数料が対面式証券会社などと比べ低く設定されています。

対面式証券会社の例を挙げると、株式を100株、1,000円で空売りした場合、手数料が2,860円となり、1株当たりでは28.6円のため、手数料を考慮すると売り値は971.4円に下がってしましいます。一方、ネット証券の例では、手数料が99円で売り値は999円と実用的な売り値になります。

6-2 信用倍率

銘柄を選ぶ際には、信用倍率をチェックするようにしましょう。空売りに適している銘柄は、信用倍率が高い銘柄です。信用の買い残が増加すると、株価の上値が重くなる傾向があります。

6-3 流動性

また、出来高の多い銘柄を選ぶようにしましょう。流動性が低い銘柄は逆日歩のリスクや、成行買い注文をした場合に株価を押し上げてしまうことがあるためです。

7 空売りの効率的な使い方

空売りは投機色が強いものの、上手く使うことで自身のポートフォリオのヘッジとしても利用できます。

7-1 下げ相場での利益狙い

空売りの利点として、下げ相場で利益を得られる可能性があることが挙げられます。株式市場が下落トレンドを描いている時には、買いから始めると損失を出してしまう可能性が高いためです。

7-2 保有株のヘッジ

現物株を保有している場合、相場が下げ基調にある際に、その銘柄を空売りするとヘッジができます。

例えば、株主優待や配当金を目的として保有している現物株は、権利確定日を過ぎると株価が配当金額分下落する傾向があります。権利落ち日前に空売りをし、確定後に買い戻すことで売却益を得られ、現物株の評価損を相殺することが可能です。

まとめ

株式市場が下落基調にある場合、空売りは有効な投資方法です。空売りは信用取引なので少額でレバレッジ(大きな取引)が可能です。しかし、株価が売り値より上昇した場合には損失額が発生し、最悪の場合、証券会社により強制的に反対売買が執行されます。

そのため、初心者の方は慣れるまでは、株価の値動きが小さな銘柄を選びレバレッジをかけないようにしましょう。また、ロスカットルールを作り、必ず守るようにしましょう。損失を出してしまった場合には、その要因を検証するようにしましょう。

常にリスクを念頭に置き、無理のない金額の範囲で取引するように心がけてください。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。