塩野義製薬のESG・サステナビリティの取り組みは?配当推移も【2022年10月】

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塩野義製薬といえば、新型コロナ飲み薬の開発を進めている会社であり、現在進行中の治験において症状改善の効果が期待されるなど開発も順調に進んでいます。例えば、韓国では新型コロナウイルス経口薬の緊急使用を許可するなど実用段階にあり、新型コロナ治療に貢献する企業として知られています。

そこでこの記事では、塩野義製薬のESGおよびサステナビリティの取り組みについて、詳しく解説しています。ESG投資に関心のある方や、サステナビリティの内容で投資先を選びたい方は、参考にしてみてください。

※本記事は2022年10月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 塩野義製薬の特徴
  2. 塩野義製薬の株価動向
  3. 塩野義製薬のESG・サステナビリティの取り組み
    3-1.環境面での取り組み
    3-2.社会面での取り組み
    3-3.ガバナンス面での取り組み
    3-4.薬剤耐性問題への取り組み
    3-5.医療アクセス向上への取り組み
    3-6.ステークホルダーエンゲージメント
    3-7.感染症および疾患関連情報の提供
  4. 塩野義製薬の配当・株主優待
  5. まとめ

1 塩野義製薬の特徴

塩野義製薬は自社で創薬を行うことに強いこだわりを持っている会社です。自社創薬比率2〜3割の企業も少なくない中、2021年3月末時点における塩野義製薬の自社創薬比率は71%と高い水準が強みです。これは、効率的に医薬品を生み出せる分子創薬エンジンと呼ばれる塩野義製薬独自の仕組みがあるためであり、分子創薬エンジンとは、創薬開発における競争力の源泉で以下の3チームに支えられています。

  • メディシナルケミストリーチーム
  • 薬理チーム
  • 安全性&薬物動態チーム

メディシナルケミストリーチームによって創られた低分子化合物を、そのほかのチームで多面的に評価することで効率的に医薬品を生み出しており、実際、2014〜2020年の間、5つの自社創薬品を市場に提供しました。創薬開発は膨大な資金と時間がかかりますが、塩野義製薬が持つ独自の創薬プロセスによって、自社創薬を効率的に生み出すことを可能としています。

また、塩野義製薬は感染症の領域においてもノウハウを蓄積しています。過去60年以上にわたり感染症の研究や開発を続けてきたため、化合物ライブラリの保有数や感染症のような疾患について深い理解があり、長きにわたって構築されてきた感染症創薬製プラットフォームをベースに、製品を生み出しています。

さらに、感染症領域における治療薬の開発に加えて、予防から重症化抑制までのあらゆるプロセスについて感染症のトータルケアに取り組んでいます。塩野義製薬は研究開発ばかりではなく、感染症に関するあらゆるフェーズの解決に関わっています。

このほか、グローバル人材の開発にも力を入れています。塩野義製薬は、「人が競争力の源泉」という人材育成に対する理念を持っているため、以下の通り新しいことにチャレンジする人を育成するための企業風土を整えることで、世界で通用する人材を開発し、国際的な競争力を維持しています。

  • 自己投資支援制度
  • 海外留学
  • 社外出向
  • 人材研修プログラム
  • マネジャー強化
  • キャリアデザインサポート等

2 塩野義製薬の株価動向

塩野義製薬の株価動向について見ていきましょう。

直近1年間の株価は6,000円〜8,000円のレンジを横ばいで推移しており、2022年10月11日の終値は6,955円となっています。また、過去10年間の株価推移を見てみると、高値は2021年11月に付けた8,439円なのに対して、安値は2011年11月に付けた871円となっているため、株価は10年間で10倍近くまで値上がりしたことになります。

2011年11月に安値を付けて以降、株価は右肩上がりを続けており、長期的な上昇トレンドが継続中です。

3 塩野義製薬のESG・サステナビリティの取り組み

塩野義製薬が実施しているESGおよびサステナビリティの具体的な取り組み内容を確認していきましょう。

3-1 環境面での取り組み

ESGのうちEを表す環境については、環境への配慮を特定した上でシオノギグループEHSポリシーを策定し、環境問題の中でも特に優先すべき課題を抽出しています。例えば、環境マテリアリティにおいては、以下4つの重要課題を特定しています。

  • AMR(薬剤耐性)
  • 気候変動
  • 省資源と資源循環

上記の重要課題を反映して実行することで、持続可能な社会の実現を目指しています。各課題における行動目標としては年度ごとに数値で示しており、例えば、AMR(薬剤耐性)への取り組みとして2024年度までには関連サプライヤー初回監査を100%実施することに加え、2030年度までにフォローアップ完了を100%実施する予定です。

気候変動については、CO2排出の削減目標を掲げており、2024年度に10%削減のところを2030年度には46.2%の削減、2050年度にはゼロにすることを定めています。

また、省資源と資源循環については廃棄物発生量のうち25%削減目標、廃プラスチック再資源化率として2024年度に30%〜65%を目標としています。水に関しては、水資源投入量を1,340千㎥以下に抑えることを定めています。

3-2 社会面での取り組み

ESGのうちSを表す社会については、責任ある製品やサービスの提供に努めており、品質や安全性の確保や偽造医薬品対策、医薬品の安定供給に励んでいます。また、職場環境を魅力的にするために、人材育成やダイバーシティ、健康を維持するための様々な施策を実施中です。

3-3 ガバナンス面での取り組み

ESGのうちGを表すガバナンスについては、ガバナンスの強化とコンプライアンスを守ることが重要であるとして、コーポレートガバナンス体制の整備とリスクマネジメント体制の構築、コンプライアンスを企業の基盤と位置づけ、事業活動において高い倫理性と透明性の向上に取り組んでいるとしています。

3-4 薬剤耐性問題への取り組み

薬剤耐性とは、抗生物質が効かない菌のことを指します。薬剤耐性は「グローバルな脅威」と呼ばれており、感染症患者の生命の危険を及ぼすとともに、社会に対して直接的かつ間接的に深刻な損失をもたらします。

薬剤耐性が深刻化すると、現在の感染症治療で用いられる抗菌薬だけで命を救うことが難しくなるため、塩野義製薬ではセフィデロコルと呼ばれる抗菌薬を開発し、国際貢献に取り組んでいます。また、抗菌薬の製造工場からの環境排出によっても、耐性菌を生み出す要員として挙げられることから、サプライチェーン全体の管理を徹底しています。

3-5 医療アクセス向上への取り組み

塩野義製薬では、医療アクセス向上の取り組みとして開発途上国をはじめとする世界中の人々の健康に貢献することを使命に考え、以下4点の課題を掲げています。

  • 革新的な治療法の開発
  • 医薬品の適正使用の推進
  • 医薬品が入手しやすい環境の整備
  • 発展途上国におけるヘルスケアシステムの強化

医薬品の価格および購入のしやすさを価格を含めて考慮することで、医薬品が必要な患者が入手しやすい環境整備や、医療サービスのアクセス向上に取り組んでいます。

3-6 ステークホルダーエンゲージメント

塩野義製薬では、ステークホルダーエンゲージメントを通じて、企業価値および社会的価値を創出することで持続可能な社会の実現を目指しています。ここでいうステークホルダーとは投資家と従業員、顧客と社会の4つを指し、最適なバランスになるよう努めています。

例えば、株主や投資家についてはフェアディスクロージャーの精神に沿って、公平な適時情報を開示することに加え、IR担当部署が連携して取り組みを推進しています。また、顧客に対しては、正確かつ迅速な情報提供を徹底することで、一人でも多くの患者の健康に貢献するとしています。そして、従業員に対しては、一人ひとりが特性を生かして働きがいを持って働ける環境の実現作りに努めています。

3-7 感染症および疾患関連情報の提供

塩野義製薬は新型コロナウイルス感染症に対する取り組みとして、治療薬の創製から診断薬の開発および供給、予防ワクチンの開発などに努めているほか、感染症や疾患関連情報について積極的な情報提供を行っています。また、こども感染症ナビや女性感染症ナビ、高齢者感染症ナビなど、患者の属性に合わせた情報提供を行うなど、役立つ情報を提供中です。

4 塩野義製薬の配当・株主優待

塩野義製薬は株主優待制度を設けていません。その代わりに配当金の支払いを株主還元の一環と位置づけています。以下の権利確定日までに株式を保有することで配当金を受け取れます。

配当金の種類 株主確定日 支払い予定日
中間配当金 9月30日 12月上旬
期末配当金 3月31日 6月下旬

塩野義製薬では、株主に成長を共に実感してもらうための配当政策を行うことを基本方針としています。会社が予想する配当利回りは1.70%とそこまで高くはないものの、配当金に関しては増配を続けています。

配当金による株主還元指標の目安としては、DOEで4.0%以上を掲げています。DOEとは、Dividend on Equity Ratioの略称で株主資本配当率を指し、年間配当総額÷株主資本×100%で計算されます。企業が株主資本に対してどの程度の配当を支払っているのかを示す指標であり、配当水準を示す指標となります。

なお、ここでの株主資本とは、資本金、資本準備金、利益剰余金を合わせたものを指します。配当性向のように当期純利益の変動幅の影響を受けることがないのが特徴です。

塩野義製薬では、配当性向のような一時的な売上の増減に左右されることなく、EPSやROEを勘案しながらも企業の成長に応じた配当金を受け取れます。なお、支払われる配当金の具体的な金額は、次の通りです。

項目 中間配当金 期末配当金 年間配当金
2022年3月期 55.00円 60.00円 115.00円
2021年3月期 53.00円 55.00円 108.00円
2020年3月期 50.00円 53.00円 103.00円
2019年3月期 44.00円 50.00円 94.00円
2018年3月期 38.00円 44.00円 82.00円
2017年3月期 34.00円 38.00円 72.00円
2016年3月期 28.00円 34.00円 62.00円
2015年3月期 24.00円 28.00円 52.00円
2014年3月期 22.00円 24.00円 46.00円
2013年3月期 20.00円 22.00円 42.00円

直近の2022年3月期においては、年間115円の配当金が受け取れます。1株あたりの配当金の推移は年々増額しているため、長期的に保有することで継続的なインカムゲインを期待できます。

まとめ

塩野義製薬は、新型コロナ治療に貢献する企業として知られるほか、環境・社会・ガバナンス、サステナビリティにおける重要課題に対しても積極的に取り組んでいます。国際的な問題である薬剤耐性についても早期から取り組むと共に、感染症領域に強い持つ知見を生かし、開発途上国をはじめとする世界中の人々に対して情報提供しています。

株主優待による株主還元策はありませんが、配当金の増配は毎年のように行われており、長期的に株式を保有するメリットのある企業です。ESGやサステナビリティに関心のある方は、塩野義製薬の取り組み内容についても検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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